【概況】
トルコリラ円は4月2日早朝安値15.89円から16円台序盤での持ち合いを続けてきたが、4月9日夜高値16.41円からの反落で16円を割り込み、15日未明にはドル円の107円割れと対ドルでトルコリラ続落により15.68円まで続落した。
ドル円は下げ一服となったものの対ドルでのトルコリラ安が続いたために4月16日早朝に15.46円まで続落して2018年8月のトルコ通貨危機でつけた安値15.52円を割り込んだ。4月17日夜にはドル高リラ安が緩んだところで15.77円まで一時的に反発したがその後はドル高リラ安がぶり返し、ドル円も軟調なままとなったために15.40円台へ失速して先週を終えた。
【ドル高リラ安基調続く】
ドル円は4月15日午前への下落で4月2日未明安値106.91円と同値まで下げたが底割れをひとまず回避した。しかし16日と17日に108円台に到達したものの維持できずにいる。4月2日未明と15日午前の両安値でダブル底を形成して上昇に入ればトルコリラ円にはプラス要因となるが、戻りが鈍いうちはダブル底を割り込んで円高が加速しかねないところにある。仮にダブル底を割り込む場合はトルコリラ円にとっては大きな売り圧力となることが警戒される。
トルコリラは対ドルで4月10日から16日までは5日連続の日足陰線で下落となり、4月16日も6.9605リラの安値を付けた。17日にはいったんドル高が緩んで6.8253リラまで戻したものの6.9317リラまで反落してこの間の安値圏で終了しており、ドル高リラ安基調は依然として継続している印象だ。既にトルコリラ円では2018年8月のトルコ通貨危機でつけた安値を割り込んでいるが、対ドルでも同通貨危機時の安値7.2349リラに徐々に迫っている。
コロナショックの世界的な波及により3月から4月序盤にかけては南アランド、ブラジルレアル等が対ドルでの史上最安値を更新するなど新興国通貨安が加速した。金融市場全般が動揺する中で手元流動性確保のための投機ポジション圧縮、新興国投資マネーの逆流からドル全面高となったわけだが、トルコリラも新興国通貨安の流れに巻き込まれて下落してきた。ブラジルレアルも南アランドも先週は新たな安値更新を回避してやや落ち着いてはいるものの、コロナショックの新興国への波及はまだこれから深刻化してゆくと思われること、仮に欧米が落ち着いても早々に新興国向け投資が回復すると期待するのは時期尚早であり、欧米の感染爆発に対するピーク感が強まればかえって新興国での感染拡大深刻化と不況感が注目されかねないと思われる。
【トルコは中東で最大の感染国に】
4月20日朝時点における新型コロナウイルスによる世界の感染者数は240万人を超え、死者は16.5万人を超えた。米国では感染者75.9万人、死者4万0665人(前日比21,651人増)となった。
トルコの感染者数は20日朝時点で8万6306人で前日比3977人増、死者は2017人(同127人増)となったが、これまで中東の最大感染国であったイランの感染者8万2211人を超えたため、トルコが中東での最大感染国となった。イランの死者5118人と比較すれば死者数は相当に少なく、まだ医療崩壊的な状況の報道も見られないが感染爆発による経済活動の停滞が徐々にトルコ経済を追い詰めてゆくことも懸念される。
3月31日から新規感染者が日々2千人を超え、4月4日からは増加数が3千人を超え、4月8日からは4千人を超えるペースが続いてきたが19日は4000人を若干割り込んでいる。
4月19日にエルドアン大統領はトランプ米大統領と電話会談したようだ。コロナ対策等を協議したと思われる。トルコは2週連続で週末の外出禁止令を発令している。
反アサド政権側NGOのシリア人権監視団によると、軍事ドローンによる反政府勢力への爆撃がイドリブ県で発生し、複数の死傷者が出たようだ。またシリア軍によるアレッポ県及びイドリブ県への砲撃も確認された。内戦下にあるシリア北西部では2月にシリア軍が軍事攻勢をとりトルコ軍との衝突が激化したが、3月5日からはロシアとトルコが停戦で合意し、その後の41日間は爆撃等は見られなかった。
【当面のポイント、4か月サイクルでの下落期続く】
トルコリラ円は今年2月後半の下落で今年1月6日安値、昨年5月9日安値を割り込んで昨年5月以降の18円台を中心とした持ち合いから転落した。3月9日安値16.26円からいったん戻したものの3月25日高値17.44円からの下落で一段安に入り、4月16日には15.43円まで安値を切り下げた。
2018年8月のトルコ通貨危機以降、日足チャートにおける主要な安値は2019年1月3日、同年5月8日、同年8月26日、2020年1月6日であり、ほぼ4か月周期で安値を付けるサイクルで推移してきた。
1月6日安値を割り込んだことにより現状は4か月サイクルの安値形成期にあり、1月6日安値を基準として考えれば安値形成期は5月序盤からやや長引けば5月中盤にかけての時期と想定される。4月16日安値の後も16円以下での推移にとどまっているのでまだ底打ち感には乏しく、既に2018年8月安値も割り込んでいることや新興国通貨安情勢を踏まえれば、4月後半にかけてはさらに安値を試してゆきやすい状況にあると思われる。
(1)当面、4月16日夜安値15.43円を下値支持線、4月17日夜高値15.77円を上値抵抗線とみておく。
(2)4月17日夜高値を超えないうちは一段安警戒とし、4月16日安値を割り込む場合は17日への戻り幅の倍返しとなる15.09円及び15円の大台を目指す下落期入りと考える。
(3)4月17日高値前後では売られやすいところとみるが、仮に高値更新からさらに続伸入りする場合は15.80円まで上値目途を切り上げるが、そこは戻り売りにつかまりやすいとみる。
【当面の主な経済指標等の予定】
4月22日
16:00 4月消費者信頼感指数 (3月 58.2)
20:00 トルコ中銀政策金利 (現行9.75%、予想 8.5%)
4月24日
16:00 4月景況感指数 (3月 99.7)
16:00 4月設備稼働率 (3月 75.3%)
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