トルコリラ円見通し ドル高リラ安の一方で急激な円安、トルコ国内の感染爆発も始まる(20/3/23)

3月20日高値111.50円まで急激なV字反騰となった。ドル円での円安がクロス円全般にも波及してトルコリラ円を下支えした。

トルコリラ円見通し ドル高リラ安の一方で急激な円安、トルコ国内の感染爆発も始まる(20/3/23)

【概況】

トルコリラ円は2月25日に1月6日安値を割り込んで年初来安値を更新し、新型コロナウイルスの感染拡大による世界連鎖株安のなかでドル高リラ安と急激な円高が重なって3月9日には16.26円まで大幅下落した。しかしその後はドル高リラ安及びイスタンブール株指数の大幅下落は継続しているものの、3月9日からの急激な円安により新たな安値更新を回避して16ドル台後半を中心とした持ち合いとなっている。

ドル円は2月20日高値112.21円から3月9日安値101.23円まで暴落的な下落となり、この間の下げ幅は10.98円に拡大し、2018年3月26日安値104.63円と2019年1月3日安値104.82円及び2019年8月26日安値104.45円という104円台での下値支持線を割り込み、英国国民投票でのブレクジット賛成ショックでつけた2016年6月24日安値99.04円以来の安値となったが、3月9日以降は金融市場全般の動揺が一段と進む中で手元流動性確保のためのドル買いが加速したためにドル全面高となり、3月20日高値111.50円まで急激なV字反騰となった。ドル円での円安がクロス円全般にも波及してトルコリラ円を下支えした。

一方でドル/トルコリラにおけるドル高リラ安は継続している。3月9日から16日まで6連騰のドル高リラ安となり、3月17日にトルコ中銀による利下げの前倒しから6.4980リラまで高値を更新してから上げ一服したが、3月18日から20日まで3連騰で上昇して6.5665ドルまで高値を切り上げたが、3月23日早朝もさらに高値を更新している。
為替市場はドル全面高であり、メジャー通貨、資源輸出国通貨、新興国通貨は総じて下落している。感染拡大がパンデミックとなり、世界全体が大不況に陥り始めている状況の中で、最大の決済通貨であるドル需要が高まり、主要中銀は利下げ・量的金融緩和・流動性角度の資金供給等に追われており、ドル高が進んでいる。また投機ポジションの圧縮・撤退により新興国通貨・資源輸出国通貨の下落も厳しくなっている。

ドル/トルコリラは2018年8月のトルコ通貨危機における高値からの上昇一服で同年11月安値まで下げてから、その後はトルコ中銀の連続利下げや米国との対立、シリア情勢等を背景に上昇基調を再開してきたが、2019年10月からは6か月連続で月足は陽線(ドル高リラ安)となり2019年5月高値を超えて2018年8月天井に迫りつつある。ブラジルレアルが対ドルでの史上最安値を更新していることや豪ドルがリーマンショック時の安値を割り込んでいることを踏まえれば、今後も新興国通貨安の中でドル高リラ安が継続してゆきやすい状況も続く。現状は円安によりトルコリラ円の下落にブレーキがかかっているが、ドル高リラ安基調が一段と強まれば3月16日安値を割り込むところから下げが加速しやすくなると警戒される

イスタンブール100株価指数は3月20日は下げ一服だったが、3月16日から19日まで4日間続落であり、3月6日から12日まで5日間大幅下落してからの下落基調はまだ継続中と思われる。週間の下落率は先々週が12.77%安、先週は10.26%安であり、2週間で20%を超えている。米国市場のとの時差により日中のダウ先物や欧州株がやや持ち直す局面で上昇しやすいが、NYダウが大幅下落に終わった翌日には下げやすい。

【トルコも感染爆発へ】

新型コロナウイルスの感染拡大において、トルコでは3月11日に国内初の感染者が確認されるまで感染はゼロだった。手洗い率も高く感染予防力が高い国民性が注目されていたが、海外からの入国者帰国者による感染発生から拡大期に入ると、3月18日時点での感染者が前日から93人増えて191人死者2名となっていたが、3月23日朝時点では感染者1236人(前日比289人増)死者30人(同9人増)と爆発的な拡大となりつつある。
トルコ政府は3月18日に総額1000億リラ(約1兆6000億円)規模の経済対策を発表し、国内線の航空運賃にかかる付加価値税を従来の18%から1%へ減額、小売業者等への社会保障費や税の納付期限を延長した。また年金増額による生活支援策も表明した。
エルドアン大統領は国民に対して外出を控えるよう要請し学校の閉鎖や飲食店や娯楽施設などで営業停止を始めていたが、3月21日には重症化リスクが高い65歳以上や持病のある人の外出を禁止すると発表した。

トルコは年間5000万人の外国人訪問のある観光大国だが、国境の封鎖や入国禁止を拡大しているため、観光依存の産業への打撃も大きくなると思われる。
国境封鎖では、一時はギリシャ国境を開放してシリア難民を欧州へ流入させようとしていたが、ギリシャからの感染流入阻止を優先してギリシャ国境も封鎖したため難民はトルコ領内に留まることとなる。大量の難民の衛生環境が悪ければそこで感染拡大が発生しかねない側面もある。
イタリアでは全土の経済活動がほぼ停止したが、世界的な物流停滞はトルコの輸出産業への打撃もこれから深刻化してゆくと思われる。

【下げ渋り持ち合いからの一段安警戒、当面のポイント】

【下げ渋り持ち合いからの一段安警戒、当面のポイント】

(1)トルコリラ円は3月9日安値16.26円からは下げ渋りだが、3月11日早朝高値17.26円の後は戻り高値が切り下がりとなっており、9日安値から11日高値までのレンジ内での持ち合いが続いている。3月20日朝高値16.99円の後も21日未明高値は同値にとどまって上値が重く、持ち合い相場の中でのやや右肩下がりの戻り高値を結ぶ抵抗線に抵触して23日午前は失速気味となっている。このため持ち合い中の安値圏を試しやすくなっている印象だ。

(2)持ち合いを下放れして行くには先週よりも強烈なドル高リラ安と、V字反騰してきたドル円の上昇が減速するかブレーキが大きくかかる必要があるが、16.60円を割り込む場合は16.40円前後への下落、さらに下落感が強まる場合は3月9日安値16.26円を試す可能性がある。仮に3月9日安値を割り込む場合は15円台序盤へ向かう可能性が高まるのではないかと考える。


(3)持ち合いの上限である3月11日高値17.26円を上抜くにはドル高リラ安の一服、ドル円の急伸継続等の条件が揃う必要があるが、その場合は17.50円前後まで戻しにかかる可能性がある。ただし中勢としては1月6日安値を割り込んで4か月前後の底打ちサイクルにおける底割れによる下落期のため、5月序盤にかけての下落基調は継続するとみて3月11日高値より上の水準は段階的な戻り売り場になりやすいのではないかと思われる。

【当面の主な経済指標等の予定】

3月23日
 16:00 3月消費者信頼感指数 (2月 57.3)
 17:00 2月観光客数 前年比 (1月 16.1%)
3月25日
 16:00 3月景況感指数 (2月 106.9)
 16:00 3月設備稼働率 (2月 76.0%)
3月26日
 20:00 トルコ中銀MPC議事録
3月27日
 16:00 3月経済信頼感指数 (2月 97.5) 

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