今週の週間見通し
先週のドル円もよく動きました。先々週のレンジは7円32銭と過去20年間で歴代3位の変動幅となりましたが、先週も6円35銭動いていて、こちらもトップ10圏外とはいえ十分な値幅です。ましてや、前週に101円台前半をつけていたところから考えると10円以上もの円安に振れたわけで、理由はわかっていても呆れるほどの荒れ相場となりました。
新型コロナウイルスの感染拡大が欧州を中心に広がり、主要国は拡大阻止のため一段の人の移動を制限する段階に入り、各国の金融緩和や景気刺激策をもってしても1〜3月期の雇用、景気等は大きく落ち込むと見られています。そうした景気悪化懸念が株安となり、すべてのリスク資産からキャッシュへと現金化、さらには信用収縮が広がりドル資金市場では深刻なドル不足が発生しました。
先週初のFRBによるゼロ金利への緩和、各国中銀が協調して資金供給枠の増加に動いていますが、資金市場におけるドル調達は逼迫し、最後の手段として為替市場でスポットのドルを手当てする事態に至りました。特に欧州がパンデミックとなっていることから、ユーロ売りドル買いに拍車がかかり、今朝はドルインデックスが103.96まで上昇し2002年12月以来のドル高水準となっています。平時であれば米国からドル高牽制発言が出てくる状況ですが、いまは非常事態ですからドルの水準がどうこういう発言は感染者拡大が落ち着くまで出てくることは無いでしょう。
さて、今週ですが米国内の移動制限による雇用の急減速が始まっているため、木曜に発表される失業保険申請数が気になるところです。前回は28.1万人、徐々に増えていますが4週平均で23.2万人とまだ通常の申請数です。しかし、今週はコンセンサスが78.8万人で予想の幅も29.9万人から250万人まであります。そして来週ではありますが、雇用統計もレンジは広いもののコンセンサスは大きく落ち込んでいてNFPは−40万が予想されていますし(前回+27.3万)、当面は改善が予想できません。
今後出てくる数字は雇用に限らずどれも悪いということがある程度織り込まれていると考えられますが、それでも想定以上に弱い数字が出てきた場合には、株式市場は売りで反応するでしょう。問題はその時の為替市場ですが、悪い数字が出てくるのは米国だけでなく、欧州も日本もということになり、東京オリンピックの延期の可能性が高まってきた日本にとっては年後半の盛り返しも期待できないという状況です。
実際にその時にならないとわからないものの、米国の経済指標であれば想像以上に悪い数字ではいったんドル売りに反応するも、比較的早い時間で元に戻し現在のドル高地合いに戻りやすいというのが目先の反応になるのではないかと考えています。いずれにしても、大きく動いている相場の中で短期的な振れがでやすい週になってきましたし、来週は四半期末にもなりますので、オーダーやポジションの資金管理には普段以上に注意していきたいところです。
ファンダメンタルな点に関しては上記の通りで、振れはあってもドルは底堅いであろうという見方です。テクニカルにはどうでしょうか。週足チャートをご覧ください。
ドル円(月足)チャート
先週時点では高値も安値も見たという判断をしていましたが、まさかの高値に近づく動きとなってきましたので、年初来高値112.19よりもドル高水準でターゲットとなりやすい水準をあげていきます。
2019年高値 112.40
2018年高値 114.55
上記2つは誰もが気にする水準だと思われます。これだけ振れが激しい相場ですから112.40はちょっとした動きでつける可能性がありますが、さすがに114.55までは既に10円以上上がってきていることを考えると今週は難しいかという水準だと見ています。
またサポートについては日足チャートを見ていただくと、108円水準を上抜けてからドル高に弾みがついているため、下がっても108円台前半は買いが出そうな水準と言えます。今週はこれらの水準をコアレンジの上下と考え108.00レベルをサポートに、112.50 レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2020年FOMCメンバー(ニューヨーク、フィラデルフィア、クリーブランド、ミネアポリス、ダラス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。
3月23日(月)
24:00 ユーロ圏3月消費者信頼感速報値
3月24日(火)
17:15 フランス3月製造業・サービス業PMI速報値
17:30 ドイツ3月製造業・サービス業PMI速報値
18:00 ユーロ圏3月製造業・サービス業PMI速報値
18:30 英国3月製造業・サービス業PMI速報値
22:45 米国3月製造業・サービス業PMI速報値
23:00 米国3月リッチモンド連銀製造業景況指数
23:00 米国2月新築住宅販売
**:** G7外相会議(テレビ)
3月25日(水)
06:45 NZ2月貿易収支
08:50 日銀会合主な意見公表
18:30 英国2月PPI
21:30 米国2月耐久財受注
22:00 米国1月住宅価格指数
23:30 週間原油在庫統計
3月26日(木)
16:00 ドイツ4月GFK消費者信頼感
16:45 フランス3月企業景況感
18:30 英国2月小売売上高
21:00 英中銀MPC
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 米国10〜12月期GDP確報値
28:00 メキシコ中銀政策金利発表
3月27日(金)
08:50 本邦3月東京区部CPI
16:45 フランス3月消費者信頼感
21:30 米国2月個人所得・消費支出
23:00 米国3月ミシガン大消費者信頼感確報値
3月29日(日)
**:** 欧州市場が夏時間に移行
前週の主要レート(週間レンジ)
上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時からNY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
3月16日(月)
週明け早朝にFRBが緊急利下げを行い金利差縮小からドル売りが先行する中、ダウ先物がストップ安と一時105.72レベルへと水準を切り下げました。その後日銀の緊急会合への期待もあり昼前には107.57レベルまで回復していましたがそこまで。日銀会合の結果はETF購入枠を倍増させるという内容であったものの日経平均は全く上がらず、そうした動きを見てあらためてドル売りとなりました。NY市場を前に105.15レベルの安値を付けましたが、ダウが大幅安となる中でもそれ以上のドル売りとはならず、またリスク資産のキャッシュ化の動きの中でドルが買われる動きとなったことから引けにかけてはじり高となり、106円台前半を回復して引けました。
3月17日(火)
東京市場では底堅い株価とともにドル円も買いが先行し107.19レベルへと上昇、その後1円ほどの押しを挟んだものの終日ドル買い地合いが続きました。NY後場には107.86レベルをつけ高値圏での引けとなりました。為替市場におけるドル買いは、資金市場でドル需給が逼迫する中、仕方なく為替スポット市場でドル買いに動いているという面が出ている結果でした。
3月18日(水)
東京市場では弱い株価とともにドル売りの動きとなり106.75レベルへと水準を下げました。しかし欧州市場に入り英国も含め欧州売りの動きが強まり、為替市場ではユーロ売りの動きがきっかけとなってドル高に反転しました。その後はNY市場の後場までドル買いとなっていましたが、これは資金調達の代わりに為替市場でドルを買っている動きの影響が大きいものでした。引けにかけては108円水準へと押して引けました。
3月19日(木)
ドル円はドル買いの流れが強まる中でストップも巻き込みながら109円台半ばへと上昇、東京後場には108円台半ばまで押す場面も見られましたが、欧州市場に移ってからはユーロ売りがリードしてのドル買いとなりました。その後もドル買いの流れは収まらず、NY市場では111円台に近づいて引けました。
3月20日(金)
東京が休みとなった金曜は相変わらず荒っぽい値動きが続き、東京朝方には111.36レベルの高値をつけましたが、その後は急反転し週末前のポジション調整や短期筋のストップを巻き込みながら2円ほど売られる展開となりました。しかし海外市場に移ってからは一転してドル買いへと転じ、NY昼頃には高値を111.50レベルへと伸ばし、引けにかけては110円台後半へと押しました。
ディスクレーマー
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オーダー/ポジション状況
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