ユーロ週報「ドルとユーロ円で相殺も基本は下げ」(3月第3週)

先週のユーロは、週間レンジは440pipsと結構動いてはいるのですが、ドル円が7円以上動いてここ20年で3番目の値幅となったことに比べれば比較的静かな展開となりました。

ユーロ週報「ドルとユーロ円で相殺も基本は下げ」(3月第3週)

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロは、週間レンジは440pipsと結構動いてはいるのですが、ドル円が7円以上動いてここ20年で3番目の値幅となったことに比べれば比較的静かな展開となりました。

これは大きくはドルの動きとしてドル円が週を通して買われた動きに沿ってユーロドルでもドル買い・ユーロ売りとなる一方で、ユーロ円もドル円同様に買われる動きとなり、ECB理事会の際に一時的に下げたこと以外はやはり週を通して買い戻しの地合いとなったため、ユーロドルの売りとしては相殺される部分あったことによります。

どの市場も新型コロナウイルスの感染拡大に振り回されていますが、いまや震源地が欧州へと移ってきたことを考えると安心してユーロを買い戻していられるような状況とは思えません。現時点での感染者数を見ると、中国の80,844人に続いてイタリアが24,747人と驚くべき勢いで増加中、そしてその後はイラン、韓国ときてスペインがほぼ韓国に近い7,753人へと増加しています。フランス、ドイツもそれに続いていることから現状では欧州が危機にさらされている状況です。

イタリアの場合は高齢者比率が高く医療施設も減少したことで致死率も中国の倍近くにまで上っていると言われますが、実は感染者が2倍近くいたということにでもなれば、感染者拡大による国境封鎖以前に他国にも人が移動していることも考えられ、人の移動が自由なEUが逆に仇となってしまったと言えそうです。こうした状況を受け、ECBは追加緩和を行いましたが、米国のように緩和余地が少なかったECBとしては精一杯だったのではと思いますし、これは本日午後に追加緩和を決めると思われる日銀も同様です。

そうなるとEUとしては各国で財政出動を行う方向しか無いのですが、先のECB理事会でも柔軟に財政規律ルールの運用を認めるとしているため、今年は厳しい財政規律を一時的に外す流れになることとなるでしょう。そうなると、コロナウイルスが落ち着いた後は、今度は財政赤字問題に目が行きそうですから、欧州にとっての2020年の残りはなかなか厳しい状況となりそうです。

金融政策的にはユーロ売りとはなりませんでしたが、逆に株安、債券安となったことがユーロ安にもなったECB理事会後のミニトリプル安状況からしても、当面のユーロは上値が重くなってくると考えてよさそうです。また財政規律柔軟運用も含め一段の景気対策について今夜のユーロ圏財務相会合で話されるでしょうから、普段はあまり注目されない会合ですが念の為注意しておきたいところです。

今週もドルの動きとユーロ円の動きとでユーロドルの動きは緩和されると思いますが、一番動くことがあるとすれば、各国の緊急対策が一巡しても米国株式市場を中心としたリスクオフの波が収まらない時です。その場合は、リスクオフのユーロ売りがより欧州への影響を強め、ドル売り・ユーロ買いの動きが一気に反転する可能性もあります。そのあたりの可能性も含めてテクニカルにどうなのか見てみましょう。

今週の週間見通しと予想レンジ

当面の安値も高値も見たと考えていますので拡大してあります。

起点は2月安値1.0778、そこから3月高値1.1495まで上げたあとの安値が先週安値の1.1055ですが、これは安値と高値の61.8%押しにあたる1.1052とほぼ一致します。テクニカルには下げ止まってもおかしくはありません。仮に下げ止まったとするならば、3月高値とこの安値との半値戻しが1.1275となり、現時点での戻りの限界点として意識されやすい水準です。

しかし、先週安値は最近の変動幅から考えるとあまりに近いですし、ユーロを取り囲む状況的に下げる方向へのバイアスがかかりやすいですから、下値の目途としては大台の1.1000を見ておいた方がよいでしょう。今週は大台1.1000レベルをサポートに1.1275レベルをレジスタンスとするレンジを見ておきます。

今週のコラム

各国が緩和に動いていますが、英国も例外ではなく英中銀は11日に0.5%の利下げを行い政策金利を過去最低の0.25%としました。11日時点でポンドは下げ始めていましたが、先週後半には大きく下げ最近のレンジの下限を大きく割り込んでいます。週足チャートをご覧ください。

今週のコラム

先週は大陰線となっていますが、ただでさえブレグジットの移行期間を年末に迎える中で、今回のコロナウイルス問題で英国にとっては大打撃です。テクニカルにも昨年安値とその後の78.6%(61.8%の平方根)押しを下回り100%押しとなる大台1.20割れを視野に入れた動きとなってきそうです。ユーロも売り材料が多いのですが、ポンドは更に弱そうなチャートと言えます。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

3月16日(月)
**:** 緊急G7電話会議
**:** ユーロ圏財務相会合


3月17日(火)
18:30 英国2月失業率
19:00 ドイツ3月ZEW景況感
19:00 ユーロ圏3月ZEW景況感
19:00 ユーロ圏1月建設支出


3月18日(水)
19:00 ユーロ圏2月CPI
19:00 ユーロ圏1月貿易収支

3月19日(木)
17:30 スイス中銀政策金利発表


3月20日(金)
16:00 ドイツ2月PPI
18:00 ユーロ圏1月経常収支

前週のユーロレンジ

前週のユーロレンジ

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時からNY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

3月9日(月)
ユーロドルはサウジアラビア原油増産を受け株価もドルも急落する動きの中で東京前場に1.1495レベルの高値をつけました。その後この高値を超えることは無かったものの1.14台で上下する荒っぽい値動きを続けました。何度か1.14台後半には上昇するものの1.15の大台にはユーロ売りオーダーもある様子でやや上値の重たい印象での引けとなりました。


3月10日(火)
ユーロドルは、基本的にはドル円とドルの動きを揃えリスクオフの巻き返しによるドル高の動きからユーロドルも調整を挟みながら下げる展開となりました。またユーロ円がドル円と同様の動きとなったこともありユーロの動きとしては打ち消す方向となり、ドル円に比べると値幅は半分以下と比較的穏やかな一日で終わりました。

3月11日(水)
ユーロドルは、欧州市場入りまではドル円とドルでの歩調を揃える動きとなっていましたが、英中銀利下げ後に一度は買い戻されたポンドが再び売りに転じる動きに引っ張られて1.12台半ばへとユーロの売りが目立っての引けとなりました。


3月12日(木)
ユーロドルは、欧州市場まではドル円同様にドル売り(ユーロ買い)の後にドル買い戻し(ユーロ売り)の動きとなりました。ECB理事会を控えて欧州市場は振れやすく神経質な展開となっていましたが、ECB理事会ではQEを年末まで1200億ユーロ拡大するとしたものの金利は現状維持としました。この金利現状維持に反応し欧州の国債と株式市場は大きく売られる展開となり、為替市場ではユーロ売りと欧州トリプル安の展開となりました。一時1.1055レベルの安値を付けた後はNYの引けにかけて1.12台を回復し、やや押して引けました。

3月13日(金)
ユーロドルは欧州市場序盤までは狭いレンジの中で方向感が出ず横方向への動きとなっていました。しかし、ドル円が1日で4円もの上昇を示す中で、ユーロ円も大幅上昇とはなったものの、ドル買いの動きに追随しNY昼頃には前日安値に並ぶ1.1055レベルをつけ、引けにかけては若干戻しての引けとなりました。

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