【概況】
トルコリラ円は1月17日高値18.82円から下落基調となり、中国武漢発の新型コロナウイルスの感染拡大報道により1月27日朝には18.26円まで一段安となったが、その後はNYダウが持ち直してドル円も下げ渋りとなったために新たな安値更新を回避して18.30円を挟んだ持ち合いで推移していた。しかしドル円と同様にリスク回避感により上値も重く、1月27日夕刻に18.37円をつけた後は29日朝高値も同値に止まって新たな高値更新へ進めずに29日深夜にかけてはジリ安で推移し、米FOMC声明発表後のドル安局面で若干戻す場面もあったが長続きせず、30日朝には18.24円まで下落して27日朝安値を割り込んでいる。
【感染拡大によるリスク回避でリラ安トルコ株安続く】
金融市場全般が新型コロナウイルスの感染拡大問題でリスク回避行動をとり、1月27日朝からはややリスク回避感が緩んでそれまで売られていたものが買い戻されるか下げ渋りとなっていたが、感染拡大は継続しており先行き不透明感が強まる中では上値も重かった。特に新興国・資源輸出国ではリスク回避感が強まると投機ポジションの圧縮により通貨安株安へ進みやすいが、トルコリラも対ドルで下落し、イスタンブール100株価指数も下落基調に入っている。
イスタンブール100指数は1月29日も下落しており1月22日からの続落も6日目となった。
ドル/トルコリラは1月29日に5.9721リラへ上昇(ドル高リラ安)となり1月8日高値5.9871リラへ迫っている。
トルコ株安と対ドルでのリラ安がトルコリラ円への売り圧力を増しているため、ドル円がまだ1月27日朝安値を割り込んでいないにもかかわらず先だって底割れしたという状況と思われる。
中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる中国国内の死者は29日時点で133人、感染者は6000人を超えて2002年から2003年に感染爆発となったSARSによる感染レベルを上回った。WHO=世界保健機関は2回目となる緊急委員会を30日に開催すると発表し、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態にあたるかどうかを改めて対応を協議する。
トルコではまだ感染者が発生していないが、トルコ外務省は1月29日にトルコ国民に対して「やむを得ない場合を除いて中国への渡航を控えるよう」声明を出している。
【米国との対立問題も】
トランプ米大統領は1月28日に独自の中東和平案を発表したが、そのなかではイスラエルの首都エルサレムについては「分割できない首都」とした。これに対してトルコ外務省は「エルサレム」と呼ばれているクドゥスはトルコのレッドラインであるとし、「この案は二国家解決を白紙に戻してパレスチナ領を占領することを目的とする併合計画だ。パレスチナ国民および領土は金銭では買えない」と強く批判した。パレスチナ問題はトルコにとっても極めてセンシティブな問題であり、米国との対立感を助長する問題として今後の成り行きを注視してゆきたい。
1月29日にはエルドアン大統領が米国によるF35戦闘機を巡る問題について「米国はF35戦闘機をトルコへ供給するか、同機の支払いを返金するか、どちらかを行う必要がある」と牽制した。
ロシアのエネルギー企業ガスプロムは1月29日、トルコストリーム天然ガスパイプラインを通して最初の天然ガス10億立方メートル相当を輸送したと発表した。ガスプロムの声明では、1月の始めに稼働開始したトルコストリームを通して最初の天然ガス10億立方メートルのうち、54パーセントがトルコに、46パーセントがブルガリア・トルコ国境に輸送された。トルコストリームはトルコとロシアの協力関係を示す一方、イスラエルによる地中海でのガス田開発との対立を招いている。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、1月27日朝安値からの下げ渋りが丸1日続いたため、1月28日午前時点では1月22日午前安値から3日目となる27日朝安値を直近のサイクルボトムとし、底割れ回避の内は29日夜にかけての間への上昇余地ありとしたが、27日朝安値を割り込むところからは新たな弱気サイクル入りとした。
1月27日夕高値の後は新たな高値更新へ進めずに30日朝には27日朝安値を割り込んだため、27日夕高値と29日朝安値をダブルトップとして底割れにより弱気サイクル入りしたと思われる。ボトム形成期は1月30日朝から2月3日朝にかけての間と想定し、27日夕高値を上抜き返せない内は安値試しを続けやすいとみる。
60分足の一目均衡表では29日深夜への下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落した。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。反発に入る場合は先行スパンの下限が抵抗となりやすいとみるが、先行スパンを突破するところからは上昇再開の可能性ありとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は30日朝への一段安で30ポイント台へ転落している。50ポイント台を回復できない内は一段安警戒として20ポイント台序盤への低下を伴う下落継続と考える。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、18.20円を下値支持線、18.30円から18.32円までを上値抵抗線とする。
(2)18.30円以下での推移中は一段安警戒として18.20円試しを想定する。18.20円前後では買い戻しも入りやすいとみるが、18.20円割れから続落の場合は18.10円以下への下落を想定する。また18.30円以下での推移中は週明けも安値試しを続けやすいとみる。
(3)18.32円を超える場合は強気転換注意として27日朝高値試しとするが、27日朝高値手前では戻り売りにつかまりやすいとみる。
【当面の主な経済指標等の予定】
1月30日
16:30 トルコ中銀インフレレポート
1月31日
16:00 12月貿易収支 (11月 -22.3億ドル)
2月 3日
16:00 1月消費者物価 前年比 (12月 11.84%)
16:00 1月消費者物価 前月比 (12月 0.74%)
16:00 1月生産者物価 前年比 (12月 7.36%)
16:00 1月生産者物価 前月比 (12月 0.69%)
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