ドル円見通し ダウ持ち直しで下げ渋っていたがリスク回避感で上値は重い(20/1/30)

米連銀のFOMC声明発表と議長会見直後には109.25円をつけたものの29日朝高値を上抜けずに上値の重さが目立つ展開となった。30日早朝には109円を割り込み見始めている。

ドル円見通し ダウ持ち直しで下げ渋っていたがリスク回避感で上値は重い(20/1/30)

ドル円見通し ダウ持ち直しで下げ渋っていたがリスク回避感で上値は重い(20/1/30)

【概況】

ドル円は新型コロナウイルスの感染拡大報道により1月27日朝には108.73円まで一段安したが、NYダウが27日に前日比453.93ドル安で5日間続落となった後に持ち直しに入ったためにドル円も感染拡大への反応がやや過剰だったとして下げ渋りに入った。28日夜に108.74円まで再び下げたもののギリギリのところで底割れを回避して29日朝には109.26円まで戻り高値を切り上げた。
1月29日の日中はややジリ安で推移したものの109円を割り込むところは買い戻され、米連銀のFOMC声明発表と議長会見直後には109.25円をつけたものの29日朝高値を上抜けずに上値の重さが目立つ展開となった。30日早朝には109円を割り込み見始めている。

中国湖北省武漢発の新型コロナウイルスによる中国国内の死者は29日時点で133人、感染者は6000人を超えて2002年から2003年に感染爆発したSARS感染レベルを上回った。WHO=世界保健機関は1月30日に2回目の緊急委員会を開催すると発表し、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態にあたるかどうかを改めて対応を協議すると表明した。1月21日からの一連の感染拡大報道に対して市場はリスク回避で動いてきたが、27日からはやや過剰反応ではないかとされてそれまで売られてきたものが買い戻される動きが見えたが、先行き不安は益々拡大しておりドル円も下げ渋り程度にとどまった。感染拡大による経済活動の停滞、中国の景気減速、春節の大型連休明けの上海株式市場動向等、不安は解消されていない印象だ。

【FOMCは現状維持】

米連邦準備制度理事会(FRB)は連邦公開市場委員会(FOMC)において政策金利を据え置いた。フォワードガイダンスに変更はなかったが、パウエル議長は定例記者会見で、新型肺炎の拡大により「中国と世界経済にいくらか影響が出る可能性がある」とし、米景気への下押しリスクと判断するのは時期尚早としたものの「状況を極めて注意深く見ている」と述べて警戒感をにじませた。
現時点で金融政策を変更する情勢変化は見られなくても、今後の感染拡大による景気減速や先行き不安による世界的な連鎖株安が発生する場合には米連銀も利下げ再開に動く可能性はあるのではないかと思う。
米金融大手のモルガン・スタンレーは今回の感染拡大が1-3月期の世界経済成長率が0.15〜0.30%低下する可能性があるとの見通しを示した。感染拡大のピークが先延ばしとなればさらに成長率が低下するとも指摘している。

米国の長期国債は安全資産として買われており、米10年債利回りは29日に前日比0.07%低下して1.59%となり2019年10月以来の低水準となっている。感染拡大報道が始まってからほぼ一本調子で利回りは低下しており、米連銀の利下げ再開を暗示する動きとも受け止められる。
米10年債利回りの低下は日米金利差面でドル円を圧迫し、安全資産として欧米の長期債券買いが続く中ではリスク回避的な円高基調もまた継続しやすい状況にあると思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、1月27日朝安値の後は下げ渋りを丸1日続けたために、28日朝時点では27日朝安値を直近のサイクルボトムと、底割れ回避の内は29日にかけての上昇余地ありとした。
29日朝高値の後は新たな高値更新へ進めずにいるため、29日朝高値を直近のサイクルトップとする。ボトム形成期は30日朝から2月3日午前にかけての間と想定し、29日朝高値を上抜けない内は27日朝安値を割り込む一段安を警戒するが、29日朝高値を上抜く場合は高値更新による強気サイクル入りとして31日の日中から2月4日にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では30日未明の上昇で先行スパンを上抜きかけたもののその後の反落で転落しつつあり、遅行スパンも悪化し始めている。このため、29日朝高値を上抜けない内は遅行スパン悪化中の安値試し優先とするが、29日朝高値超えからはもう一段高へと戻りを試しにかかるとみて遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は29日朝高値と30日未明高値がほぼフラットなのに対して指数のピークが切り下がる弱気逆行が見られるので、65ポイント以上へ切り返せない内はもう一段安ありとみて20ポイント台への低下を伴う下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、1月27日朝安値108.73円を下値支持線、29日朝高値109.26円を上値抵抗線とする。
(2)109円を上回るか、一時的に割り込んでも早々に切り返す内は上昇余地ありとし、109.26円超えからは109.50円手前を試すとみるが、109.50円手前では戻り売りにつかまりやすいとみてその後の109.20円割れからは下げ再開注意とする。
(3)109円割れの状況が続き始める場合は下げ再開を警戒として27日朝安値試しを想定し、底割れからは108円台序盤(108.25円から108.00円)への下落を想定する。108.25円前後はいったん買い戻しも入りやすいところとみるが、27日朝安値を割り込んだ後も109円以下での推移なら週明けも安値を試しやすいとみる。

【当面の主な予定】

1/30(木)
休 場 中国(旧正月)
17:55 (独) 1月 失業者数 前月比 (12月 0.8万人、予想 0.5万人)
17:55 (独) 1月 失業率 (12月 5.0%、予想 5.0%)
19:00 (欧) 1月 経済信頼感 (12月 101.5、予想 101.8)
19:00 (欧) 1月 消費者信頼感確定値 (速報 -8.1)
19:00 (欧) 12月 失業率 (11月 7.5%、予想 7.5%)
21:00 (メ) 10-12月期GDP速報値 前期比 (前期 0.0%、予想 -0.2%)
21:00 (メ) 10-12月期GDP速報値 前年同期比 (前期 -0.3%、予想 -0.5%)

21:00 (英) イングランド銀行(BOE) 政策金利 (現行 0.75%、予想 0.75%)
21:30 (英) カーニー英中銀(BOE)総裁、会見
22:00 (独) 1月 消費者物価指数速報値 前月比 (12月 0.5%、予想 -0.6%)
22:00 (独) 1月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (12月 1.5%、予想 1.7%)
22:30 (米) 10-12月期GDP速報値 前期比年率 (前期 2.1%、予想 2.1%)
22:30 (米) 10-12月期個人消費速報値 前期比 (前期 3.2%、予想 2.0%)
22:30 (米) 10-12月期コアPCE速報値 前期比 (前期 2.1%、予想 1.7%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.1万件、予想 21.5万人)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 173.1万人、予想 173.3万人)

1/31(金)
英国がEU離脱
08:30 (日) 12月 失業率 (11月 2.2%、予想 2.3%)
08:30 (日) 12月 有効求人倍率 (11月 1.57、予想 1.57)
08:30 (日) 1月 東京都区部消費者物価指数・生鮮食料品除 前年同月比(12月 0.8%、予想 0.8%)
08:50 (日) 12月 小売業販売額 前年同月比 (11月 -2.1%、予想 -1.7%)
08:50 (日) 12月 鉱工業生産速報値 前月比 (11月 -1.0%、予想 0.7%)
08:50 (日) 12月 鉱工業生産速報値 前年同月比 (11月 -8.2%、予想 -3.8%)
09:01 (英) 1月 GFK消費者信頼感 (12月 -11、予想 -9)
09:30 (豪) 10-12月期 生産者物価指数 前期比 (前期 0.4%)
09:30 (豪) 10-12月期 生産者物価指数 前年同期比 (前期 1.6%)
10:00 (中) 1月 国家統計局製造業PMI (12月 50.2、予想 50.0)

14:00 (日) 12月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (11月 -12.7%、予想 -11.8%)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP速報値 前期比 (前期 0.2%、予想 0.2%)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP速報値 前年同期比 (前期 1.2%、予想 1.1%)
19:00 (欧) 1月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (12月 1.3%、予想 1.4%)
19:00 (欧) 1月 消費者物価コア指数速報値 前年同月比 (12月 1.3%、予想 1.2%)

22:30 (米) 10-12月期 雇用コスト指数 前期比 (前期 0.7%、予想 0.7%)
22:30 (米) 12月 個人所得 前月比 (11月 0.5%、予想 0.3%)
22:30 (米) 12月 個人消費 前月比 (11月 0.4%、予想 0.3%)
22:30 (米) 12月 PCEデフレーター 前年同月比 (11月 1.5%、予想 1.6%)
22:30 (米) 12月 PCEコア・デフレーター 前月比 (11月 0.1%、予想 0.1%)
22:30 (米) 12月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (11月 1.6%、予想 1.6%)
23:45 (米) 1月 シカゴ購買部協会景況指数 (12月 48.9、予想 48.9)

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