【概況】
トルコリラ円は1月17日高値18.82円から下落基調となり、新型コロナウイルス感染拡大報道による金融市場全般のリスク回避の動きによりドル円の下落と対ドルでのリラ安により1月27日朝には18.26円まで一段安となった。その後はNYダウが持ち直してドル円も下げ渋ったためにトルコリラ円も18.30円を挟んだ持ち合いで推移していたが、1月29日朝高値では27日夕刻の高値18.37円と同値に止まって新たな高値更新へ進めず、30日はドル円の下落、対ドルでのリラ安、イスタンブール100株価指数の続落が重なって27日朝安値を割り込む一段安となった。
1月31日未明には18.11円まで下落して1月8日に反騰入りする前の水準となったが、1月8日及び1月6日安値割れを回避し、WHOによる緊急事態宣言の後にダウが買い戻され、ドル円も戻す中で18.20円台まで切り返している。
【ドル/トルコリラは1月8日高値に迫る】
ドル/トルコリラは1月30日高値で5.9870リラを付けて1月8日高値5.9881リラに迫ったが、31日未明には小反落しており高値更新には至らなかった。1月8日高値を超える場合は1月16日からの上昇がダブルトップ破りによる一段高入りとなり、2019年5月以来の高値水準に入るため、ドル高リラ安がかなり加速してゆく起点となると思われる。現状はその手前での足踏みだが、新型コロナウイルスの感染拡大問題が深刻化し、金融市場全般のリスク回避感が一段と強まるような情勢へ進めばダブルトップ破りによるドル高リラ安進行が顕著になりかねないと注意しておきたい。
イスタンブール100株価指数は1月22日から29日まで6日連続の下落だったが、30日はこの間の安値を大幅に更新したものの突っ込み警戒感から買い戻されたために終値では前日比プラスへ持ち直して7日ぶりにわずかな上昇となった。しかし昨年10月からの上昇トレンドにヒビが入った状況にあるため、NYダウが本格的に騰勢を回復できないうちはもう一段安へ進みかねないと注意したい。
【WHOの緊急事態宣言、新興国への拡大懸念】
新型コロナウイルスによる感染被害はさらに拡大している。中国本土ではすでに8000人を超える感染者が出ており2002年から2003年にかけてのSARS感染爆発を超えている。新興国の感染被害は1月30日時点では台湾、ベトナム、オーストラリア、スリランカ、UAE、タイ、シンガポール、ネパール、マレーシア、韓国、マカオ、カンボジア、フィリピンへ拡大しているが、SARSにおいてはウランバートル、マニラ、シンガポール、台湾、ハノイ、香港等に限られており、今回は大幅に感染範囲が拡大しているといえる。またSARSは中国全土にまでは拡大しなかったが今回はチベットを含めて全土に拡大している。先進国では感染への対応力があっても新興国では対応力が欠ける可能性も懸念される。
【米国との対立問題にも注意】
トランプ米大統領は1月28日に独自の中東和平案を発表したが、イスラエルの首都エルサレムについては「分割できない首都」とした。これに対してトルコの反発が強まっている。1月30日にエルドアン大統領はトランプ大統領の和平案について「エルサレム(一般にはエルサレムと呼ばれているがトルコではクドゥスという)はムスリムの聖地である。クドゥスをイスラエルに与える案は断じて容認しがたい。これはパレスチナ人の権利を無視しイスラエルの占領を正当化する案である。発表された案は、平和や解決に奉仕しない」と批判を強めている。
トルコはNATO加盟国であるが米国主体に開発されているF35戦闘機のトルコへの供給がなされずに米国との対立が強まっている。イスラエルによる地中海でのガス田開発に対しても、トルコはロシアと共同によるトルコストリーム天然ガスパイプラインを使い欧州へのガス輸出を開始しており、イスラエルの開発を不当と攻撃している。シリア領域での反米・反イスラエル勢力を巡っても米国・ロシア・シリア・イランなどの権益が入り混じって対立は継続している。
米国とイランの軍事衝突は全面戦争化を回避したが。火薬庫としての中東情勢の緊張感はなお継続中だ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、1月27日朝安値からの下げ渋りが丸1日続いたため、1月28日午前時点では1月22日午前安値から3日目となる27日朝安値を直近のサイクルボトムとし、底割れ回避の内は29日夜にかけての間への上昇余地ありとしたが、27日朝安値を割り込むところからは新たな弱気サイクル入りとした。
1月27日夕高値の後は新たな高値更新へ進めずに30日朝に27日朝安値を割り込んだため、30日午前時点では27日夕高値と29日朝安値をダブルトップとして底割れによる弱気サイクル入りとした。またボトム形成期は1月30日朝から2月3日朝にかけての間と想定した。
31日未明へ一段安してから0.10円以上を戻していることと、27日朝安値から4日を経過したため、31日未明安値を割り込む場合は新たな弱気サイクル入りとするのを妥当とみて31日未明安値を直近のサイクルボトムとする。トップ形成期は30日から2月3日にかけての間と想定するが、27日夕と29日朝の両高値でダブルトップ型だったために2月5日朝にかけての間へ延長される可能性もあると注意する。ただし、18.15円割れからは下げ再開注意とし、31日未明安値割れからは新たな弱気サイクル入りとして2月5日未明から7日未明にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では31日未明安値からの反発では遅行スパンが好転しきれず、先行スパンからの転落状態も続いている。18.20円以上での推移が続けば遅行スパンも好転してくるので、好転からは高値試し優先とするが、先行スパンのある18.20円台中盤までは戻り売りにつかまりやすいと注意する。31日未明安値割れからは一段安入りとなるので遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は30日夕刻から31日未明への一段安で指数のボトムが切り上がる強気逆行が見られるので、40ポイント以上での推移中は高値試しを続けやすいとみるが、60ポイント台は戻り売りにつかまりやすいと注意し、40ポイント割れからは下げ再開を疑う。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、1月31日未明安値18.11円を下値支持線、18.25円を上値抵抗線とする。
(2)18.15円以上での推移中は上昇余地ありとして18.25円前後への上昇を想定する。18.25円から18.30円にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみるが、18.15円以上での推移なら週明けも高値を試す余地があるとみる。
(3)18.15円割れからは下げ再開注意とし、31日未明安値割れからは新たな弱気サイクル入りにより来週前半への下落を想定する。当初の下値目途を18円試しとし、18円割れは買い戻しも入りやすいと注意するが、31日未明安値を割り込んだ後も18.15円以下での推移なら週明けは安値試しを続けやすいとみる。またリスク回避感が強まって18円割れの場合は週明けには17.90円台前半へ下値目途を引き下げる。
【当面の主な経済指標等の予定】
1月31日
16:00 12月貿易収支 (11月 -22.3億ドル)
2月 3日
16:00 1月消費者物価 前年比 (12月 11.84%)
16:00 1月消費者物価 前月比 (12月 0.74%)
16:00 1月生産者物価 前年比 (12月 7.36%)
16:00 1月生産者物価 前月比 (12月 0.69%)
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