ドル円見通し 1月17日以降の安値を更新したが、WHO緊急事態宣言から戻す(20/1/31)

WHOが緊急事態宣言を発した後は目先の材料一巡でダウが反騰に転じたため、ドル円も109円に迫るところまで反発している。

ドル円見通し 1月17日以降の安値を更新したが、WHO緊急事態宣言から戻す(20/1/31)

【概況】

新型コロナウイルスの感染拡大報道を背景に1月21日に110円を割り込んで下落基調に入り、1月27日早朝には108.73円まで下落、1月17日高値からの下げ幅は1.55円の円高ドル安となった。1月28日夜に108.74円まで下げたものの新たな底割れを回避して戻したが、29日午前高値109.26円と30日未明高値109.25円で上げ渋り、30日は感染拡大がさらに深刻化したとして27日朝安値へ迫る下げとなり、31日3時台には108.57円まで下げて27日朝安値を割り込む一段安となった。
米GDPがさえなかったこととWHOの緊急委員会開催を意識した下落だったが、WHOが緊急事態宣言を発した後は目先の材料一巡でダウが反騰に転じたため、ドル円も109円に迫るところまで反発している。

【米GDP冴えず、追加利下げ催促感強まる】

米商務省が1月30日夜に発表した2019年10-12月期の実質GDP速報値は、年率換算で前期比2.1%増となり7-9月期と変わらずだった。2019年通年では前年比2.3%増に鈍化してトランプ政権が掲げる3%超に届かず、2016年の1.6%以来の低い伸びとなった。10-12月期の個人消費は1.8%増で前期の3.2%増から鈍化した。貿易では輸出が1.4%増だったが輸入は8.7%減で2009年以来の落ち込みだった。
GDPの約7割を占める個人消費が鈍化したことにより今後の経済成長への懸念も出始めると思われる。米中通商協議は第1段階合意に達したものの、制裁関税はまだ残っており、第2段階交渉の難航も予想されているため、当面は高関税状態が続き、早急な輸入回復には至らないのではないかと思われる。

新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の低下も懸念されるため、11月の大統領選挙での再選を目指すトランプ大統領にとっては株高を維持してゆく上での大きな懸念を抱えたことになるため、米連銀への追加利下げ圧力もさらに増してゆくと思われる。株高基調が維持するうちは米連銀も状況を見守る現状維持を貫くだろうが、感染拡大問題が深刻化して世界的な株安連鎖が発生する場合には利下げ再開を強いられるのではないかと思われる。

【WHOの緊急事態宣言】

世界保健機関(WHO)は1月30日にスイスで緊急委員会を開催し、新型コロナウイルスについて「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に当たるとして緊急事態宣言を発した。WHOのテドロス事務局長は「中国への不信任ではない。医療制度の弱い国に広がったらどうなるか、この危険性を最も懸念している」と述べている。WHOの緊急事態宣言は2019年7月のコンゴにおけるエボラ出血熱以来6件目となる。
WHOに関しては1月23日に緊急事態宣言を見送っていたことが、中国への配慮ではないかと批判された経緯もある。今回の緊急事態宣言も、人から人への感染拡大が世界的に広がっていることから宣言せざるを得なくなったと思われるが、感染対策力の弱い新興国などへの警鐘としており、事態を矮小化しようという姿勢もうかがわせる。今回も中国への渡航制限や貿易制限を勧告しないとしている。

新型コロナウイルスによる肺炎については、感染対策体制の確りしている先進国では過剰な心配をする必要はないという楽観論と、2002年から2003年に発生したSARS騒動を超えてさらに深刻化することへの懸念も強い。すでにSARS感染規模を超えており重症度についての見識もまだ定まっていないこと、人口数千万人規模での中国大都市の移動規制や中国からの海外旅行規制が中国経済、さらに世界経済の活動鈍化、景気後退の引き金にもなりかねないと警戒される。
WHOの緊急事態宣言は日本時間31日午前4時過ぎだったが、発表直前まで下落していたNYダウは安値から300ドルを超える上昇となり前日比124.99ドル高で終了、ナスダックも23.77ポイント高となった。ダウ反騰に合わせてドル円も戻したが、株式市場程には楽観的ではないためか109円手前で足踏みとなっている。

しかし、感染拡大の景気への影響はこれからさらに深刻化する可能性がある。米疾病対策センター(CDC)は30日に米国内で初めて人から人への感染を確認したと発表し、米国での感染確認は6人目となった。また米国務省は30日に北京の米大使館や成都、広州、瀋陽、上海にある米公館について、緊急対応要員を除く職員と職員家族の国外退避を認めることを公表した。中国の感染者数は8000人を超え、日本や韓国などの感染者数も増加、インドでも初めての感染者が報告されるなど世界的な広がりを見せている。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、1月27日朝安値の後は下げ渋りを丸1日続けたために、28日朝時点では27日朝安値を直近のサイクルボトムと、底割れ回避の内は29日にかけての上昇余地ありとしたが、29日朝高値の後は新たな高値更新へ進めずにいたために30日朝時点では29日朝高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとした。またボトム形成期は30日朝から2月3日午前にかけての間と想定した。
31日未明への下落で27日朝安値を割り込んだがその後は戻している。前回ボトムから4日を経過しているので、31日未明安値を直近のサイクルボトムと仮定し、底割れ回避のうちは31日から5日午前にかけての間への上昇余地ありとするが、底割れからは新たな弱気サイクル入りとして2月5日未明から7日未明にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では31日未明安値からの反発ではまだ遅行スパンの好転には至らず、先行スパンを上抜けずにいる。遅行スパン好転からはもう一段高へ進む可能性ありとして高値試し優先とするが、31日未明安値割れからは一段安入りとなるので遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は31日未明に30ポイントまで下げてから50ポイント超へ戻しているので、40ポイント以上での推移中は上昇余地ありとするが、60ポイント台では売り圧力が強まる可能性があると注意し、40ポイント割れからは下げ再開を疑う。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、108.75円、次いで1月31日未明安値108.57円を下値支持線、109.00円、次いで29日朝高値109.26円を上値抵抗線とする。
(2)108.75円以上での推移中は上昇余地ありとし、109円超えからは29日朝高値試しとし、高値更新からは109.50円前後への上昇を想定する。109.50円手前では戻り売りにつかまりやすいとみて、その後の109.20円割れからは下げ再開注意とする。
(3)108.75円割れからは下げ再開注意とし、31日未明安値割れからは新たな弱気サイクル入りとして108円試しへ向かうとみる。108円前後では買い戻しも入りやすいとみるが、感染拡大報道等による株安再燃と同調して円高が進む場合は108円割れから週明けへさらに続落という可能性も警戒する。

【当面の主な予定】

1/31(金)
英国がEU離脱
09:30 (豪) 10-12月期 生産者物価指数 前期比 (前期 0.4%)
09:30 (豪) 10-12月期 生産者物価指数 前年同期比 (前期 1.6%)
10:00 (中) 1月 国家統計局製造業PMI (12月 50.2、予想 50.0)
14:00 (日) 12月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (11月 -12.7%、予想 -11.8%)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP速報値 前期比 (前期 0.2%、予想 0.2%)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP速報値 前年同期比 (前期 1.2%、予想 1.1%)
19:00 (欧) 1月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (12月 1.3%、予想 1.4%)
19:00 (欧) 1月 消費者物価コア指数速報値 前年同月比 (12月 1.3%、予想 1.2%)

22:30 (米) 10-12月期 雇用コスト指数 前期比 (前期 0.7%、予想 0.7%)
22:30 (米) 12月 個人所得 前月比 (11月 0.5%、予想 0.3%)
22:30 (米) 12月 個人消費 前月比 (11月 0.4%、予想 0.3%)
22:30 (米) 12月 PCEデフレーター 前年同月比 (11月 1.5%、予想 1.6%)
22:30 (米) 12月 PCEコア・デフレーター 前月比 (11月 0.1%、予想 0.1%)
22:30 (米) 12月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (11月 1.6%、予想 1.6%)
23:45 (米) 1月 シカゴ購買部協会景況指数 (12月 48.9、予想 48.9)

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る