【概況】
10月24日のトルコ中銀による予想以上の利下げで10月25日夕安値18.73円まで下げたものの材料消化とし、中東・シリア情勢の緊張一服による買い戻しから10月29日夜高値19.05円まで高値を更新した。31日未明の米FOMC前にいったん調整を入れたが、30日の米GDPや31日のFOMCをドル安リラ高、円安で通過して31日未明には19.08円を付けて10月10日以降の高値を更新した。
トルコ中銀の金融政策やシリア情勢一服のなかでトルコリラも金融市場全般の流れの中での反応へ同調する状況だ。FOMCでは3会合連続の利下げが決定されたが当面の利下げを打ち止めとして様子見に入る姿勢となったためにドル円は急伸してから反落に転じ、ドル/トルコリラでのドル安も31日早朝には一服したため、トルコリラ円も31日未明高値から11月1日夕刻安値18.79円まで下落した。
1日の米雇用統計が良好だったため景気減速不安は後退したとして金融市場全般はリスクオン優勢となり、NYダウは1日に30.13ドル高で史上最高値を更新し、4日も114.75ドル高と続伸した。
リスクオン心理優勢のなかでドル/トルコリラが11月4日夜まで下落=ドル安リラ高で推移したことと、ドル円が11月1日午前安値から反騰に入り4日夜には108.50円を超えてFOMCからの下落幅の半値以上の戻しに入ったことでトルコリラ円は押し上げられて4日夜には19.05円まで上昇したが31日未明高値には一歩届かず、深夜からはドル/トルコリラでドル高リラ安となったためやや失速している。
【中東・シリア情勢一服、金融市場全般動向を見ながら】
シリア情勢は一服している。10月27日夜の米国によるIS指導者のバグダディ氏殺害表明とトルコ軍の協力、トルコとロシアの首脳会談、米国主導でのトルコの停戦合意と経済制裁解除により、為替市場にとってはひとまずシリアにおける軍事緊張への意識も後退している。
しかし、米下院がオスマン帝国時代のトルコが20世紀初頭に行ったと言われるアルメニア人虐殺を認定する決議を405対11の圧倒的多数で可決したりトルコに制裁を加える法案を10月29日に可決したことに対するトルコ側の反発もある。米下院による制裁決議が有効になるには上院による承認や大統領の署名が必要であり実現性は低いが、トルコのロシア製ミサイル導入の動きも続いていることもあり、火種はまだくすぶっているものとして安心しきれないところはあるだろう。
【19円台乗せを維持しきれずにダブルトップ型】
トルコリラ円は10月10日と14日の両安値をダブル底として上昇基調を継続し、18日未明、22日朝、25日午後と安値を切り上げてきたが、11月1日夕刻への下落で30日夕安値を割り込んだため、31日まで続いてきた高値切り上げ後の底上げパターンが崩れた。11月4日への反発では31日未明高値に一歩届かずに失速しているため、両高値が60分足レベルでのダブルトップ形成となる可能性がある。
11月1日夕安値を割り込まずに上記のダブルトップ型をブレイクすれば10月10日からの上昇基調継続となり、10月1日高値19.15円試し、さらに高値更新からもう一段高へ進む可能性があるが、9月中旬以降は9月13日高値19.10円、9月18日高値19.09円、10月1日高値19.15円と19円台を付けながらも維持しきれずに失速しているため、今回も既に10月31日と11月4日の19円台到達でも伸びきれずに終わる可能性がある。
仮に10月1日高値を上抜けば日足チャート上の上値抵抗線は7月31日高値19.65円まで切り上がる可能性も出てくるが、そのためには中東情勢が平穏なままでクロス円での全般的な円安がさらに加速するようなリスクオン全開となる展開が必要と思われる。
【日足における4か月周期のサイクル】
日足レベルでは概ね4か月前後の底打ちサイクルが認められる。2018年5月23日底以降では、3か月後の8月13日安値、5か月弱の2019年1月3日安値、4か月目の5月9日安値、4か月弱の8月26日安値で底をつけてきた。
8月26日安値から10月10日安値へ底上げしているため、まだこのサイクルにおける上昇余地があるが、7月31日高値から10月1日へ高値が切り下がっていることから、上昇継続のためには10月1日高値を超える必要があり、その場合は11月中後半への上昇余地が出てくると思われる。
ただし、昨年11月29日高値以降、凡そ2か月周期で月末か月初に高値をつけていること、2019年1月3日底を起点としたサイクルは11月29日高値から2か月目の1月28日でピークをつけて下落期入りしたことを踏まえると、10月1日高値を超えずに18.50円を割り込んでくる場合はすでに10月1日高値でサイクルトップをつけて下落期に入っている可能性が高まると思われる。
サイクルの下落期入りの判定には10月10日安値を割り込む必要があるが、その場合は次の底形成期となる12月末にかけての間への下落が想定され、下値目処としては8月26日のフラッシュクラッシュ時の安値及び昨年8月暴落時の安値が試されると思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
トルコリラ円60分足
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、10月31日未明高値で前回のサイクルトップをつけたが、その後の反落で30日夕安値を割り込んでいったん弱気サイクル入りした。1日夕刻安値からの反騰で31日未明高値に迫るところまで戻したため11月1日夕安値を直近のサイクルボトムとして再び強気サイクル入りしたが、4日夜から反落しているためにすでに31日未明と4日夜高値でダブルトップを付けてしまった可能性がある。18.85円を上回るうちは19円超えから上昇再開として5日の日中から7日未明にかけての間へ上昇余地ありとするが、18.85円割れからは弱気サイクル入りの可能性を優先して1日夕安値試しとし、底割れからは新たな弱気サイクル入りとして6日午後から8日夕にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では4日夜への上昇でいったん先行スパンを上抜いたがその後の反落で先行スパンから再び転落しやすい位置に来ている。先行スパンからの転落回避中は上昇余地ありとするが、18.85円割れからは両スパンそろって悪化となるため下落しやすくなると注意する。
60分足の相対力指数は30ポイント台まで下落した後に50ポイント台へ戻しているので60ポイント超えからは上昇再開感が出てくると思われるが、再び40ポイント割れするところからは一段安警戒とみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、18.85円を下値支持線、19.00円を上値抵抗線とする。
(2)18.85円を上回るうちは上昇余地ありとし、19円超えからは4日夜高値19.05円試しとする。高値更新の場合は19.10円前後まで上値目途を引き上げるが、19円台を維持しきれない状況を打開するような強気材料が出てこないうちは19円台回復後の反落警戒とする。
(3)18.85円割れからは下げ再開警戒として1日夕安値18.79円試しとし、底割れからは18.70円前後への下落を想定する。またその際は6日以降へ安値試しを続けやすいとみる。
【直近の主な経済指標等の結果】
10月24日
20:00 トルコ中銀(TCMB)政策金利 14.0% (従来 16.5%、予想 15.5%)
10月25日
16:00 10月製造業信頼感指数 100.9 (9月 98.8)
16:00 10月設備稼働率 76.4% (9月 76.3%)
10月30日
16:00 10月経済信頼感指数 89.6(9月 86.0)
10月31日
16:00 9月貿易収支 -20.6億ドル(8月 -25億ドル)
20:00 トルコ中銀 MPC議事要旨、インフレレポート
11月01日
16:00 10月イスタンブール製造業PMI 49.0(9月 50.0)
11月04日
16:00 10月消費者物価 前年比 8.55%(9月 9.26%)
16:00 10月消費者物価 前月比 2.00%(9月 0.99%)
16:00 10月生産者物価 前年比 1.70%(9月 2.45%)
16:00 10月生産者物価 前月比 0.17%(9月 0.13%)
【当面の主な経済指標等の予定】
11月12日
16:00 9月経常収支 (8月 26億ドル)
19:30 10月自動車生産 前年比
11月14日
16:00 9月鉱工業生産 前年比 (8月 -3.6%)
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