『来週はトルコの物価指標に注目、インフレ鈍化ならリラ売り再開の恐れも』
今週のレビュー(10/28−11/1)
今週のトルコリラ円相場は、@過激派組織ISIS(イラク・シリア・イスラム国)の最高指導者バグダディ氏が米軍によって殺害されたとの報道や、A米国による制裁解除を受けた米・トルコ関係の改善期待、Bエルドアン大統領による「ロシアよりクルド人勢力が完全に撤退したとの報告を受けた」との発言、Cトルコリラと逆相関性の強い原油価格の軟調推移、Dグローバルなリスク選好ムード(株高・新興国通貨高・円安)が支援材料となり、週央にかけて、約1ヶ月ぶり高値19.11円まで上昇しました。
しかし、Eトルコが「ロシア製戦闘機の購入を検討している」との報道や、F米下院による「トルコへの経済制裁案」可決、G米中対立リスクの再燃(中国より「米国との長期的貿易合意の実現可能性に疑念」との見解が報じられたこと)、H上記Gを受けた世界的なリスク回避ムードが重石となると、週後半にかけて急落し、11/1には、週間安値18.81円まで下げ幅を広げました。引けにかけて持ち直すも上値は重く、本稿執筆時点(日本時間5時00分現在)では、18.94円近辺で推移しております。
来週の見通し(11/4−11/8)
今週のトルコリラ円相場は、週央にかけて1ヶ月ぶり高値19.11円まで上昇しましたが、直近高値19.17円(10/1高値)を抜け切れず失速すると、その後「反落」に転じました。但し、一目均衡表転換線や、一目均衡表雲上限は辛うじて死守されており、また、強い買いシグナルを表す三役好転も継続中であることから、テクニカル的に見れば、上昇トレンドの途中で見られる「押し目」局面と捉えることも出来ます。
とは言え、ファンダメンルズ的に見ると、@トルコ経済を巡る先行き不透明感や、A外貨準備急減を受けたリラ安防衛能力への不信感(リラ買い為替介入の持続性への懸念)、Bトルコ中銀の追加利下げ観測(7月会合及び、9月会合時は「利下げ→リラ買い」の反応でしたが、先日発表された10月会合時は「利下げ→リラ売り」の反応となりました)、Cエルドアン大統領の求心力低下、D経済的な結び付きの強いドイツ経済の先行き不透明感、Dロシアからの武器購入を巡る対米国・対NATO同盟国との関係悪化懸念など、不安材料は山積みです。特に上記Bについては、10/31に発表されたトルコ中銀・インフレ報告にて、2019年末のCPI見通しが12%へ下方修正されましたので(前回7月時点:13.9%)、次回会合(12/12)での追加利下げ観測が早くも台頭しつつある状況です。
以上の通り、トルコリラ円相場は、テクニカル的に見ると、上昇トレンドの継続が意識されますが、ファンダメンタルズ的に見ると、上値余地は乏しい(下落リスクが大きい)と判断できます。こうした中、来週は11/4に発表されるトルコ・10月消費者物価指数及び、トルコ・10月生産者物価指数に注目が集まります。インフレ鈍化が示されれば、トルコ中銀による追加利下げ観測の高まりを通じて、トルコリラ売りがもう一段加速するシナリオも想定されます。当方では引き続き、トルコリラ円の下落をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ TRYJPY 18.40ー19.20
トルコ円日足
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