トルコリラ円見通し 中東情勢一服だが、FOMC後の円高に押される(11/1)

米GDPやFOMCを円安リラ高で通過して31日未明には19.089円まで高値を切り上げてきた。

トルコリラ円見通し 中東情勢一服だが、FOMC後の円高に押される(11/1)

【概況】

トルコ中銀の予想以上の利下げ等で25日午後へ下落した後は、中東・シリア情勢の緊張一服による買い戻しで10月29日夜高値19.05円まで戻した。米FOMCへ向けた金融市場全般の流れを意識してポジション調整的な下落となり30日夕刻には18.84円まで下げたが、その後は持ち直して30日深夜には29日深夜高値を超え、米GDPやFOMCを円安リラ高で通過して31日未明には19.08円まで高値を切り上げてきた。
FOMCでは3会合連続の利下げが決定されたが、当面の利下げを打ち止めとして様子見に入る姿勢となったためにドル円は急伸してから反落に転じ、ドル/トルコリラでのドル安も31日早朝には一服した。

米連銀は3会合連続で小幅利下げを決定し、当面は利下げを打ち止め様子見に入る姿勢を示した。またパウエル米連銀議長は早期に利上げ政策へ転じる姿勢ではないことを強調したため、利下げから利上げへの転換という不安には至らず、利下げ状態が当面維持されるとしてメジャー通貨の加重平均であるドル指数は下落、豪ドルが上昇するなどドル安感が強まってトルコリラも対ドルで上昇していた。
しかし、夕刻にブルームバーグ通信が米中協議の先行き不安を報道したことでリスク回避感が再燃してドル円は急落、31日夜の米経済指標も総じてさえなかったために景気悪化懸念でのリスク回避感も強まって新興国及び資源輸出国通貨の上昇にもブレーキがかかった。トルコリラ円は急激な円高に押されて失速し、1日未明には18.83円まで下げて30日午後安値18.84円をわずかに割り込んでいる。

【中東・シリア情勢一服だが今度は米中通商協議への不透明感再燃】

チリで予定されていたAPECが反政府デモの拡大により中止となり、その場での開催が期待されていた米中首脳会談がリスケジュールとなったために市場は先行きへの不透明感を意識し始めた。そこに米ブルームバーグ通信が、中国政府当局者は米中通商協議について長期の合意に達することに疑問を呈していると報じたことで不安感が増し、クロス円全般がリスク回避型の円高に陥っている。
豪ドル円はFOMC後の上昇を31日午前まで続けたが夕刻から急落、南アランド円も31日夜へ下落、メキシコペソ円も大幅下落となった。クロス円は総じて8月末からの上昇及び10月初旬からの上昇に一服感が出ている。

中東・シリア情勢は一服している。10月27日夜、トランプ米大統領がIS指導者のバグダディ氏を殺害したと表明したこと、トルコ軍も米軍による作戦と事前調整したとされたことでシリア情勢への緊張感が後退している。バグダディ氏が殺害されたことはIS勢力による国家建設的な策謀に対しては大きな打撃であり、IS勢力の消耗を象徴するものだが、かえって弔いによるゲリラ的なテロを誘発しかねないとの懸念もある。しかし、10月以降の一連の動きは金融市場にとってはひとまずシリアにおける喫緊の軍事衝突的リスク感を後退させている。

ただし、米下院がオスマン帝国時代のトルコが20世紀初頭に行ったと言われるアルメニア人虐殺を認定する決議を405対11の圧倒的多数で可決し、トルコに制裁を加える法案も29日に可決したことにトルコが反発している状況もある。制裁にはエルドアン大統領や一部要人への制裁に加え、国営銀行のハルクバンクや他の金融機関も対象となっているが、この制裁等が有効となるには上院での可決と大統領署名が必要であり、トランプ大統領自身が決定したトルコ制裁を解除した直後のため成立の可能性は薄いと思われる。ただ、火種まだくすぶっているともいえる。

【10月10日以降の底上げ・高値切り上げパターン崩れる】

トルコリラ円は10月10日と14日の両安値をダブル底として上昇基調を継続し、18日未明、22日朝、25日午後と安値を切り上げてきたが、11月1日未明の下落で30日夕安値を割り込んだために底上げパターンが崩れ始めている。10月25日午後安値を割り込まずに19円以上へ切り上げれば底上げパターンも維持して上昇再開へ向かう可能性もあるが、25日午後安値も割り込むようだと上昇基調からの転落として10月10日安値をもう一度試しにかかる可能性も出てくると注意したい。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、10月28日深夜高値をサイクルトップとして下落していたが、30日午後安値からの反騰で31日未明には28日深夜高値を超えたためにいったん強気サイクル入りした。しかしその後の反落で30日午後安値を割り込んでいるため既に新たな弱気サイクルに入っていると思われる。今回のボトム形成期は11月4日から6日にかけての間と想定されるので、19円台を回復できないうちは一段安余地ありとみる。19円超えからは強気転換注意とし、31日未明高値超えからは新たな強気サイクル入りとして5日未明から7日朝にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では30日夜の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンから転落しているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。遅行スパン好転からは強気転換注意とするが、先行スパンが抵抗線となりやすいとみる。ただし先行スパンも突破する場合は上昇再開の可能性を優先して遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は31日深夜への下落で30ポイントを割り込んでからやや戻している。50ポイントを超えないか一時的に超えても維持できないうちは一段安余地ありとするが、50ポイント超えから続伸するようだと上昇再開感が強まると思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、11月1日未明安値18.83円を下値支持線、18.95円前後を上値抵抗線とする。
(2)18.95円を下回るか、一時的に超えても維持できないうちは一段安余地ありとし、1日未明安値割れからは18.60円台への下落を想定する。その際に10月25日安値18.73円を割り込む場合は下落が長期化する可能性ありと注意する。また18.90円以下での推移なら週明けも安値試しを続けやすいとみる。
(3)18.95円超えからは上昇再開の可能性ありとみて31日未明高値19.08円試しとする。高値更新へ進めない場合は31日未明高値を中心として28日深夜高値を左肩とした60分足レベルの三尊天井の右肩形成に終わる可能性があるが、リスクオン材料を伴って高値更新の場合は10月1日高値19.15円試し、さらに19.20円試しへ上値目途を引き上げる。

【最近のトルコ・シリア情勢推移】

10月07日 
 米国がシリア駐留部隊の撤収を表明
10月10日
 トルコがシリアのクルド組織を空爆
10月14日
 米国がトルコ国防省や閣僚3人等に対して米国内の資産凍結と米国人との取引禁止等の経済制裁対象に指定
10月17日
 エルドアン大統領が5日間の停戦を表明
10月18日
 トルコとクルド組織で停戦違反の衝突、エルドアン大統領とトランプ大統領電話会談
10月22日
 エルドアン大統領、ロシアのプーチン大統領と会談
 ロシア軍とシリア国境警備隊が合同でクルド人勢力等をトルコ国境付近から撤退させることで合意
10月23日
 トランプ大統領、トルコがクルド組織への軍事作戦を停止し恒久的な停戦を受け入れたと表明
 米国によるトルコ制裁を解除
10月27日
 トランプ大統領、IS指導者バグダディ氏殺害を報告。トルコ軍も作戦前に情報交換(トルコ国防省)
10月29日
 トルコとロシア、クルド人勢力の指定地域からの撤収を確認
 米下院によるトルコ制裁決議可決

【直近の主な経済指標等の結果】

10月23日 16:00 10月消費者信頼感指数 57.0 (9月 55.8)
10月24日 20:00 トルコ中銀(TCMB)政策金利 14.0% (従来 16.5%、予想 15.5%)
10月25日 16:00 10月製造業信頼感指数 100.9 (9月 98.8)
     16:00 10月設備稼働率 76.4% (9月 76.3%)
10月30日
 16:00 10月経済信頼感指数 89.6(9月 86.0)
10月31日
 16:00 9月貿易収支 -20.6億ドル(8月 -25億ドル)
 20:00 トルコ中銀 MPC議事要旨、インフレレポート
※トルコ中銀は2019年末のインフレ率見通しを従来の13.9%から12.0%へ引き下げ、2020年末は8.2%へ低下すると予想した。食品物価上昇が予想より鈍化し、トルコリラが安定していることを根拠とした。

【当面の主な経済指標等の予定】

11月01日
 16:00 10月イスタンブール製造業PMI (9月 50.0)
11月04日
 16:00 10月消費者物価 前年比 (9月 9.26%)
 16:00 10月消費者物価 前月比 (9月 0.99%)
 16:00 10月生産者物価 前年比 (9月 2.45%)
 16:00 10月生産者物価 前月比 (9月 0.13%)

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