ドル円見通し FOMCで急伸から一転して急落、リスク回避型へ旋回(11/1)

31日夕刻にブルームバーグ通信が米中協議の先行き不安を報道したことでリスク回避による円高となり、108.50円割れから急落商状となった。

ドル円見通し FOMCで急伸から一転して急落、リスク回避型へ旋回(11/1)

【概況】

10月31日未明のFOMCでは政策金利が0.25%引き下げられて3会合連続の利下げとなったが、利下げ幅は小幅にとどまり、当面の利下げ打ち止めが示唆されたことで発表直後には109.28円まで上昇して10月3日深夜以降および8月26日底以降の戻り高値を切り上げたが、早計な利上げには転じないとされたことで低金利状況がしばらく続くとして急騰は一時的なものにとどまり材料消化で反落した。
31日午前の日銀金融政策決定会合は現状維持とされたため、利下げした米連銀との対比で円高感が強まり、日銀総裁会見も円安のきっかけとならずに108.50円台まで押し込まれていた。
31日夕刻にブルームバーグ通信が米中協議の先行き不安を報道したことでリスク回避による円高となり、108.50円割れから急落商状となった。さらに31日夜の米経済指標もさえない内容だったために円高ドル安が続いて1日未明には108円を割り込んだ。

10月31日の日足は前日比0.80円の円高ドル安となる陰線であり、8月1日から急落した時の大陰線程ではないものの9月18日からの下落開始時を上回る下げぶりだ。また8月26日安値と10月3日安値を結ぶ上昇トレンドの支持線ギリギリのところまで下げており、8月26日底からの二段戻しが一巡し、下落期入りの可能性も警戒される姿となった。

【米中協議先行きに暗雲】

物価上昇への反発で大規模な反政府デモと騒乱が発生しているチリで11月16−17日に予定されていたアジア太平洋経済協力会議(APEC)が中止となった。同会議に合わせて予定される見込みであった米中首脳会談とそこでの米中通商協議第1段階の合意署名への流れが、リスケジュールを強いられることとなり先行き不透明感が増し始めていた。そして、31日夕刻に米ブルームバーグ通信が中国政府当局者は米中通商協議について長期の合意に達することに疑問を呈している、と報じたことで先行き不透明感がさらに増した。同社報道では中国の当局者との私的な会話において「中国はこの非常に厄介な問題に対して譲歩することはないだろう」と中国側当局者が述べたとされる。ロイターも同社報道を報じ、これらの報道をきっかけにドル円は急激な円高となりダウ先物も下落した。

トランプ米大統領は報道後に米中貿易協議第1段階の合意文書への署名については「新たな開催地が近く公表されるだろう」、「中国と米国は署名を行うための新たな場所を選んでいるところだ」とツイートした。またアラスカやハワイ、マカオ等が候補地に挙がっているとの報道もあった。しかしブルームバーグ報道からのリスク回避的な流れは変わらず、NYダウは140ドル安と下落、米10年債利回りも前日比0.08%低下の1.69%へ下げた。
11月1日夜には米雇用統計やISM製造業景況指数の発表も控えているので、それらが弱い内容だと追加利下げ催促も加わって円高がさらに進む可能性もあるが、予想を上回る良好な数字が続く場合や米中問題でブルームバーグ報道を否定するような楽観報道が出てくれば31日夜の下落は過剰反応だったとして巻き返しの円安ドル高となる可能性もある。しかし、31日の日足陰線に続いて週末も連続陰線で円高ドル安が進む場合は下落継続感が強まりやすいと思う。

【米経済指標は冴えず】

米商務省が発表した9月の個人消費支出物価指数は前年同月比1.3%上昇で前月の1.4%上昇から伸びが鈍化し、米連銀が目標としている2.0%を11カ月連続で下回った。食料品とエネルギーを除いたコア指数も前月比横ばいで、前年同月比は1.7%上昇にとどまって8月の1.8%上昇から鈍化、9か月連続で2.0%に届かなかった。個人所得は前月比0.3%増、個人消費は0.2%増だった。
米MNIインディケーターズが発表した10月のシカゴPMIは43.2で市場予想の48.0を下回り、9月の47.1から低下して2015年12月以来4年ぶりの低水準となった。
米経済指標の悪化が目立ち、物価や雇用の伸びが鈍化している傾向があるが、1日夜の米雇用統計では非農業部門就業者数が10万人を切る事前予想であり、ISM製造業景況指数も9月の47.8から49.0へ改善する予想だが強弱目安の50を割り込むと見込まれている。

7月末のFOMCでも利下げ決定直後に米中協議への悲観報道から急落した経緯があるが、今回もFOMCが株安円高のきっかけの一つとなっている。ドル円は4月24日天井後にGWから崩れ、その3か月後の8月1日高値から急落したが、8月1日から3か月目の10月31日からまた下落し始めているのかもしれない。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、10月31日未明のFOMCからいったん高値を更新してから反落したため、31日朝時点では31日未明高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして11月4日から6日にかけての間への下落を想定した。31日夜に大幅続落し、1日早朝も下げ渋りにとどまっているのでまだ一段安余地ありとみる。強気転換には108.25円超え、さらに108.50円を超える反騰が必要と思われる。

60分足の一目均衡表では31日未明高値からの反落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落したため、31日朝時点では遅行スパン悪化中は安値試し優先とした。その後も両スパンそろっての悪化が続いているのでまだ一段安余地ありとみる。遅行スパン好転からは戻りを試しにかかるとみるが、その場合は先行スパンが戻り高値を抑えやすいとみる。

60分足の相対力指数は1日未明への急落で20ポイントを割り込んだためかなりの売られ過ぎと思われるが、30ポイント以下での推移か、一時的に30ポイントを超えても維持できないうちはさらに一段安余地ありとみる。強気転換には40ポイント以上へ戻す必要があると思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、11月1日未明安値107.93円を下値支持線、108.25円を上値抵抗線とする。
(2)108.25円を下回るか、わずかに超えても維持できないうちは一段安余地ありとして107.50円前後試しを想定する。米経済指標等から夜間に続落の場合は107円試しまで下値目途を引き下げる。107円以下は反発注意だが、108円以下での推移なら週明けも安値試しを続けやすいとみる。
(3)108.25円超えから続伸の場合は108.50円試しとする。108.50円では戻り売りも出やすいとみるが、米経済指標等での強気材料を伴って切り返す場合は108.75円前後へ揺れ返しの上昇となる可能性もあるとみる。また108.25円以上での推移なら週明けも戻り高値を試す可能性ありとみる。

【当面の主な予定】

11/1(金)
09:30 (豪) 7-9月期 生産者物価指数 前期比 (前期 0.4%)
09:30 (豪) 7-9月期 生産者物価指数 前年同期比 (前期 2.0%)
10:45 (中) 10月 財新製造業購PMI (9月 51.4、予想 51.0)
16:00 (ト) 10月 製造業PMI (9月 50.0)
18:30 (英) 10月 製造業PMI (9月 48.3、予想 48.3)

21:30 (米) 10月 非農業部門就業者数 前月比 (9月 13.6万人、予想 8.5万人)
21:30 (米) 10月 失業率 (9月 3.5%、予想 3.6%)
21:30 (米) 10月 平均時給 前月比 (9月 0.0%、予想 0.3%)
21:30 (米) 10月 平均時給 前年同月比 (9月 2.9%、予想 3.0%)
22:45 (米) 10月 製造業PMI改定値 (速報 51.5、予想 51.5)
23:00 (米) 10月 ISM製造業景況指数 (9月 47.8、予想 49.0)
23:00 (米) 9月 建設支出 前月比 (8月 0.1%、予想 0.2%)
26:00 (米) クラリダ米FRB副議長、講演

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