今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロドルは、週を通してじりじりと水準を切り下げ、金曜には一時1.0963レベルと2017年5月以来の安値をつけ、週末クローズも1.10の大台を割り込んでの引けとなりました。週初こそドル円が104円台半ばまで売り込まれた動きから、ユーロ高でのスタートを切りましたが、その後はドル円同様にドルが底堅くユーロは連日高値安値ともに切り下げる典型的な下降チャンネルの中での動きとなっていました。
ベースにあるのは、前週の突然の英国議会閉鎖発表によりブレグジットに一段の不透明さを増したこと、そして9月のECB理事会において緩和への回帰決定思惑の2つが大きかったと言えます。それに加えてイタリアの新連立与党への動きや、週末のドイツ地方選といった欧州の政治的な動きもユーロの上値を抑えることとなりました。そして月末金曜には実需のユーロ売りが下降チャンネルを下抜ける動きとなり、1.10の大台割れでの引けにつながりました。
先週末から今週初にかけては、金曜のユーロ安の動きで久しぶりにトランプ大統領がユーロ安に言及し、FRBへの苦言とともにユーロ安をけん制する発言を行っています。現時点では市場参加者はあまり気にしていないようですが、今後一段のユーロ安を見る局面では改めてドルが強いことに対してけん制発言を行う可能性はありそうです。
また週末のドイツ地方選は2つの州で実施され、即日開票されましたが、極右政党AfDがどちらの州でも与党に迫る第2党につけ、メルケル首相率いるCDUと連立与党SPDが、それぞれ失速し、ドイツでも政治的な問題が出てきそうな結果となりました。SPDは連立に参加していることが失速につながっているという従来の見方を変えていませんし、来月も地方選がありますので、その結果次第では連立存続の危機がやってくる可能性も否定できません。
9月に入り、いよいよ一連の主要国金融政策決定会合が続きますが、ECB理事会が12日と来週に迫りました。先週のオランダ中銀総裁の発言のようにタカ派メンバーもいるでしょうが、全体としては緩和に戻る流れが主流です。来週に向けてユーロの上値は一段と重たくなってくると考えられます。
テクニカルにも見てみましょう。
今週は2017年5月以来の安値をつけていますので、まず週足からです。
(ユーロドル 週足)
長期的には、既に1年に亘ってユーロドルはピンクのラインで示した下降ウェッジの中での動きを続けてきました。まだ誤差の範囲ですが、金曜の下げでウェッジ下側のラインをトライしての引けとなりました。次のターゲットとしては2017年安値と2018年高値の78.6%(61.8%の平方根)押しである1.0816レベルをターゲットとしていると考えられます。
次に日足チャートです。
中期的には6月高値からの下降チャンネルの中での動きと考えられ、現状は6月高値を起点とした逆N波動から求める78.6%(61.8%の平方根)エクスパンションである1.0947を、そしてその後は100%エクスパンションの1.0864をターゲットとしています。後者のターゲットも週足のターゲットも1.08台であることを考えると、ECB理事会前か後か1.08台を見に行く流れを考えておくとよさそうです。
今週は、先週木曜の安値圏であった1.1040レベルをレジスタンスに、日足の最初のターゲットに近い1.0940レベルをサポートとする流れを見ておきます。
今週のコラム
ユーロ円も下げてきて2017年4月以来の安値となってきました。先週は日足チャートにおいて4月高値からの逆N波動による127.2%(161.8%の平方根)エクスパンションとなる115.67を視野に入れてきたことを書きました。同水準はより長期の週足チャートからも同様のターゲットが出てきますので、今週はユーロ円の週足チャートをご覧ください。
2016年安値と2018年安値の78.6%(61.8%の平方根)押しが115.56と、ほぼ日足のターゲットと同水準です。早晩115円台半ばは試しに行く可能性が高いということが、テクニカルなターゲットから見えてきます。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。
9月2日(月)
**:** NY市場休場
16:50 フランス8月製造業PMI改定値
16:55 ドイツ8月製造業PMI改定値
17:00 ユーロ圏8月製造業PMI改定値
17:30 英国8月製造業PMI
9月3日(火)
08:01 英国8月小売売上高
17:30 英国8月建設業PMI
18:00 ユーロ圏7月PPI
9月4日(水)
16:50 フランス8月サービス業PMI改定値
16:55 ドイツ8月サービス業PMI改定値
17:00 ユーロ圏8月サービス業PMI改定値
17:30 英国8月サービス業PMI
18:00 ユーロ圏7月小売売上高
20:00 フィンランド中銀総裁講演
22;15 英中銀総裁講演
27:00 ベージュブック
9月5日(木)
15:00 ドイツ7月製造業新規受注
16:00 デギンドスECB副総裁講演
9月6日(金)
15:00 ドイツ7月鉱工業生産
15:45 フランス7月貿易収支
18:00 ユーロ圏4〜6月期GDP確報値
21:30 米国8月雇用統計
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
8月26日(月)
週明けのユーロドルは前週末のトランプ大統領発言を受けてドル円が振れる動きの中で、基本的にドル円のドル買い戻しの動きに追随。終日ユーロ売りが目立つこととなりましたが、ユーロ円もリスクオフの巻き返しが進んだため、下げ幅自体は限定的なものとなり引けました。
8月27日(火)
ユーロドルはあまり目立った動きは見られませんでした。NY市場まではドル円同様にドルの上値が重たい流れからユーロドルも底堅い動きとなっていました。しかし、デギンドスECB副総裁が低金利長期化の見解を示したことでユーロ売りに転じ、値幅こそ伴わなかったもののユーロ売り地合いでNYを引けました。
8月28日(水)
ユーロドルは動きが乏しい一日となり終日のレンジはわずか25pipsに留まりました。イタリアで5つ星と野党の民主党で再度コンテ首相擁立の方向が見えてきましたが、ユーロの動きには全くつながりませんでした。
8月29日(木)
ユーロドルはNY市場までは上値の重たい流れとなっていましたが、オランダ中銀総裁がQE再開は不要と発言し一時的に買いが強まりました。しかし、すぐに元の水準へと押し、その後はドル円同様にドル買いの動きとともに、直前のユーロ買いの反動から1.1042レベルまで下値を広げ、やや戻して引けました。
8月30日(金)
ユーロドルは月末も年初来安値を緩やかに更新する動きが続いていましたが、ロンドンフィキシングで大口のユーロ売りが出て、ストップロスも巻き込みながら1.0963レベルの安値をつけました、トランプ大統領がユーロ安を見て牽制発言をしたこともあり、引けにかけては1.10の大台近くまで戻しての月末クローズとなりました。
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