ユーロ やや上値が重く1.11台前半をトライか
今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロドルは、米国による中国の為替操作国認定、トランプ大統領によるドル高牽、FRBへの利下げ圧力など、対中制裁と国内景気(あるいは人気)を意識した発言にも大きな動きには繋がらず、週初のドル売りの動きでユーロドルも100pipsほど持ち上げられてからは全く方向感の無い展開が続きました。火曜以降にレンジは1.11台後半から1.12台半ばでほぼもみあいに終始した状態でした。
全般的にリスクオフのドル売り材料が多い中で、ユーロ買いにも動きにくく、そこにイタリアの政局が流動的となってきたことが重なって高値圏でのもみあいになったと考えられます。これはサルビーニ副首相(同盟党首)が5つ星との連立を解消し総選挙を求めた発言ですが、その後同氏が内閣不信任案審議を要求するいっぽうで、コンテ首相は同盟側の動きをけん制しています。しかし、サルビーニ副首相は週末にも総選挙の必要性を訴え、10月総選挙の可能性が濃厚となってきました。
こうした背景には、最近のイタリアでの同党の支持率上昇があります。イタリアの世論調査によると昨年3月の選挙時には5つ星が33%、同盟が18%だったのに対して、直近の調査では5つ星が17%、同盟が37%と完全に逆転しています。欧州内のポピュリズム政党は選挙から時間がたつと支持率低下というパターンが多いのですが、どの国も勢いだけでその後の結果が伴わないことに対して国民がNOを突き付けているという動きです。
現在は金融当局も政治も夏休みですが、9月に入るとFOMCをはじめECB理事会や英中銀MPCもありますし、10月にはこのまま行くと合意無き離脱の可能性が高まっている英国のブレグジット問題、更にイタリア総選挙(予定)と欧州では大きな動きが出てきそうなイベントが続きます。いまは夏休みシーズンで動きが鈍くなりがちですが、どの国の材料も結局は‘金融市場にとってはリスクオフ材料となりやすいため、そうなるとユーロドルはどちらに動くのか、さすがに現行水準のままということは無いでしょうから、準備をしておくというところでしょうか。
今週は米国も欧州も細かな経済指標がある程度で、方向感が出るような材料が見当たりません。引き続きトランプ大統領の発言を気にしながらも、ユーロは10月に向けての材料を集める準備段階がしばらく続くという感じでしょうか。テクニカルな観点からユーロドルの日足チャートを見てみましょう。
ユーロドル日足
今週はラインを6月高値からの短期的なトレンドラインに引き直してみました。おそらく、これまでのドル売り材料でユーロが底堅かった動きに対して、ユーロ売りの材料が先週は気になり始めた段階にあると考えています。6月高値と8月高値を結んだレジスタンスを引き、それに平行な下降チャンネルを引いてみました。
短期的には8月の安値高値を抜ける動きは変えがたい為、8月安値と8月高値の対する調整の押しを考えます。すると半値押しが1.1138、61.8%押しが1.1112となります。今週は1.11台前半から1.12台前半を中心としてやや上値が重たいもみあいをイメージしておきたいところです。今週のユーロドルは、ゾロ目の1.1111レベルをサポートに1.1220レベルをレジスタンスと、やや上値の重たい週を見ておくこととします。
今週のコラム
今週はユーロスイスの月足です。
ユーロスイスの長期チャートを見るとユーロの弱さがよくわかるのですが、欧州の主要通貨ではポンドとユーロが売り、スイスが買いという構図が続いています。ユーロスイスはスイスフランショックのあった2015年安値(ここでは0.97台ですが実際には0.90割れも見ている)と2018年高値の半値押しの水準に既に到達しています。仮に0.90割れの安値を使うと半値押しが1.04台となりますので、同水準をターゲットとしていると考えてもよいでしょう。
少なくとも2018年高値からの長期下降チャンネル(ピンクの平行線)の中での動きを継続しやすく、その場合でも1.05水準を年後半に見に行く流れとなっています。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。
8月12日(月)
東京、シンガポール市場休場
8月13日(火)
15:00 ドイツ7月PPI・CPI
17:30 英国7月失業率
18:00 ドイツ8月ZEW景況感指数
18:00 ユーロ圏8月ZEW景況感指数
8月14(水)
15:00 ドイツ4〜6月期GDP改定値
15:45 フランス7月CPI
17:30 英国7月CPI
18:00 ユーロ圏6月鉱工業生産
18:00 ユーロ圏4〜6月期GDP改定値
8月15日(木)
17:30 英国7月小売売上高
8月16日(金)
18:00 ユーロ圏6月貿易収支
前週のユーロレンジ
上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
8月5日(月)
ユーロドルは、東京市場ではドル円とともにドル売りユーロ買いが先行、その後海外市場に移ってからは動きを止めたドル円とは対象的に、ドル売りの対象がユーロドルへとシフトした印象でした。ユーロは対ドル、対円ともに買いが目立ち、ユーロドルは1.12台乗せ、ユーロ円も119円近くまで買い戻されての引けとなりました。
8月6日(火)
ユーロドルは、米国が中国を為替操作国と認定したことからドル円の下げた動きに沿って、ドル売り・ユーロ買いが先行、その後はじり安の展開をたどりました。NY前場には1.1167レベルまで下押ししましたが、引けにかけては1.12台を回復と方向感ははっきりとしない値動きとなっていました。
8月7日(水)
ユーロドルは、世界的な低金利を反映しドイツ国債の利回り低下から欧州市場序盤はユーロ売りが先行しました。しかし、その後は全般的なドル売りの動きからユーロドルは買い戻されたものの、引けにかけてはドル買い戻しの動きからユーロ売りが入っての引けとなりました。
8月8日(木)
ユーロドルは、NY市場までは目立った動きは見られませんでしたが、トランプ大統領のドル高牽制発言でドル売りユーロ買いとなりました。その後はイタリア連立与党間の対立から総選挙実施を視野に入れた発言が出たことをきっかけにユーロ売りの動きとなりましたが、値幅は限定的で方向感は出ないままの一日となりました。
8月9日(金)
ユーロドルはドル円同様に終日じり高(ドル安)の動きとなりましたが、トランプ大統領によるFRBへの利下げ圧力や対中交渉延期の発言にも反応は乏しく、前日のレンジの中でもみあいに終止した印象のままの週末となりました。
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