トルコ強権的大統領制(?)移行後のトルコリラの行方

昨日トルコの与党AKP(公正発展党)の党首を務めるダウトオール首相が今月22日に臨時の党大会を開催、党首選を実施し

トルコ強権的大統領制(?)移行後のトルコリラの行方

トルコ強権的大統領制(?)移行後のトルコリラの行方

昨日トルコの与党AKP(公正発展党)の党首を務めるダウトオール首相が今月22日に臨時の党大会を開催、党首選を実施し自身はそれに立候補しない旨を明言、事実上の辞意を表明しました。
ダウトオール首相は、2014年8月「超党派」の大統領に就任するために党首、首相を辞した現エルドアン大統領から首相を引き継いだ、いわば子飼いの側近の位置づけにある人物でした。
しかし最近では新憲法を成立させ民主議会制から事実上の大統領へ権限集中へとシフトさせようとするエルドアン大統領の動きに抗する動きを見せており、また、ダウトオール首相がシリア難民問題に関してEUとの交渉の成果で評価を得るなど独自の足がかりを築きはじめたことにエルドアン大統領が警戒を強めたとも伝えられており、「誰のおかげで現在の地位にあるのか」とあからさまな怒りを表明、地方幹部の任命権を剥奪するなどしていました。

FX羅針盤的には先月の中銀総裁の交代時(これも事実上の更迭との見方もありましたが)に完全にエルドアン大統領の傀儡を中銀総裁に据えることに反対する首相の意見との妥協案として中銀内部からの昇格の形で新総裁が決まった経緯が記憶に新しいところです。
両者は事態を打開すべく4日に会談を開きましたが不調に終わり、大統領の圧力に屈する形で今回の辞任劇へとつながったものです。
トルコリラは4日ダウトオール首相が「自身の職務上の権限をめぐってエルドアン大統領と会談を行い、場合によっては臨時の党大会を召集する」と発言したと伝えられたことから急落、対ドルで2.85レベルから一時は3.Oに接近する2.9763をつけましたが、翌日辞意を表明した後は2.93レベルまで戻して推移しています。

エルドアン大統領による「強権的大統領制」への移行は議会民主主義的には大きな後退となるのは間違いなく、現在のシリア情勢等の環境が複雑なこと、これまでエルドアン大統領があまり一貫性のない場当たり的な対応をしてきたこと等から、国際的には孤立を深めていく可能性が強いものと思われます。
しかし一方で、昨年からのエルドアン大統領および側近筋の経済への主張は、国際社会が年初来の経済混乱のなかにあるうちに、相対的にファンダメンタルズの良好なトルコは機会を捉えて一気に貿易をはじめとする経済上の優位を確保すべきだという点で一貫しています。

長期的に見てこれらの思惑が正しく機能するかは別問題ですが、少なくとも短期的には大統領権限の強化によってトルコが景気刺激に動くであろう事は容易に想像されるため、必ずしもトルコ経済に対してネガティブとは言い切れないものと思われます。
そしてトルコリラへの影響はといえば、権限を強化された大統領が景気刺激策の一環として更なる金利引き下げを独立性の弱まる中銀に対して要求することは明らかといえ、かつこれに中銀が反発する可能性は今回のことでますます弱まるのではないかと思われます。そのため。短期的には金利低下によりリラ弱含み、中長期的には経済成長に伴いリラ高と考えられます。

リラの対ドルのここ二十年での安値は昨年9月の3.0752、このレベルまでは下がらずに反転し年初来のトルコリラじり高傾向に復した後、緩やかに2.50レベルを目指すものと思われます。
もっとも、エルドアン大統領に権限が集中することは政治的には様々なリスクを内包することになるため、予測のつかない部分は多く、それに伴い市場のボラティリティも今後一層高まることになると見てよいでしょう。

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る