今週の週間見通しと予想レンジ
ユーロドルは下降チャンネルの中での動きを継続してはいましたが、時間経過とともに値幅が小さくなり、先週は1.11台後半を中心として週間レンジが100pipsに満たない一週間となりました。
欧州の景気の弱さ、欧州議会選挙は終わったものの既存の政党は議席を減らし各国のポピュリズム政党が勢いを増していること、英国とEUの間では先が見えないブレグジット協議、さらにはイタリアとEUの間では財政規律問題とユーロにとっての悪材料ばかりで、ユーロ買いの材料を見つけることが困難な状況が続いています。
敢えてあげるならば、安定した高水準のユーロ売りポジション、米欧通商協議でユーロ安に言及される可能性といったあたりですが、前者は上記の通り買い材料が無い中で、誰も売りポジションを落としてくるとは思えません。また後者は、欧州が抱えるユーロ売り材料の懸念が無くならなければ、相殺することとなります。しかし、先週金曜のように今後の一段のリスクオフの動きがドル全面安の動きとして出てくる場合、ユーロ買いとなるでしょう。そうなると当然のように欧州株も下げる動きが出てくるでしょうから、単純にリスクオフの円買いと同列で考えることが出来ません。特にリスクオフでの円買いがユーロ円でも目立つケースではユーロ売りの動きとなることも多く、その時の動きがどちらなのかを見極めながらも、テクニカルには大きなユーロ安トレンドの中にあるということを考えるべきでしょう。
今週はトランプ大統領の訪欧(3〜6日)以外にも主要国のPMI改定値、ユーロ圏のCPI速報値、そして6日には最大の注目材料であるECB理事会とドラギ総裁会見があります。前回から景気見通しに変化があるかを見極めつつ9月からのTLTRO(長期資金供給オペ)以外の景気刺激策等が示されるのかどうかを見守ることとなります。しかし、ユーロを取り囲む状況を考えるとECB理事会も結果次第ですがユーロ売りにより反応しやすいと言えるでしょう。
次にテクニカルです。日足チャートをご覧ください。
ユーロドル(日足)
この日足チャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
代わり映えのしないチャートですが、安定の下降トレンドです。長期的には年初からの下降チャンネル(ピンクの太線)、中期的には4月高値からのレジスタンスラインとそれに平行に4月安値から引いたラインとで構成される小さな下降チャンネル(青の太線)、とここまでは先週と全く同じですが、値幅を狭めてきたことで短期的には5月の下降チャンネルのサポート(青の細線)を追加できそうです。
つまり、現状は青の太線のレジスタンスと、青の細線とで形成される下降チャンネルの中でのユーロ安トレンドにあるという見方です。現在、このチャンネルの中間地点より若干上にある程度ですし、安定した下降トレンドが続く以上上がったところを売るのは当然として、下がって新値をトライする局面もまたいったんは買いということになります。
材料的にもテクニカルにも5月安値を下抜ける動きは今週にも出てくる可能性があると見ていますが、長期的に1.10を目指す流れではあるものの短期的には下降チャンネルの下限にあたる1.10台後半では買いも出てくる動きが予想されます。いっぽうで下降チャンネルのレジスタンスラインは1.12台前半から1.12を割り込む水準にあります。今週は1.1080レベルをサポートに1.1210レベルをレジスタンスとするレンジを見ておきます。
今週のコラム
今週はユーロ円のテクニカルです。まずは日足チャートをご覧ください。
金曜にドル円が大きく下げたことからユーロ円も120円台に入り込んでの安値引けとなりました。ユーロドルの方向性が諸条件で相殺されることに対して、ユーロ円では素直にユーロの売り材料とリスクオフの円買いとで4月高値から着実に下げ続けています。
現在4月高値からの下降チャンネルの中での動きにありますが、既に年初来安値と高値の78.6%(61.8%の平方根)押しにあたる120.87を月曜朝に達成しました。78.6%押しは戻しの可能性がある最後の砦といった意味合いをもつターゲットですが、ユーロと円とを取り囲む材料を見る限り中期的には年初来安値119.07を更新する可能性が高いと考えざるを得ません。
仮にユーロが1.10をつける時にユーロ円が119円にあるとすると、ドル円は108.18となりますが、どの水準もそう遠くない時期に見に行く地合いにありそうです。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。
6月3日(月)
**:** トランプ大統領訪欧(〜6日)
10:45 中国5月MarkIt製造業PMI
16:50 フランス5月製造業PMI改定値
16:55 ドイツ5月製造業PMI改定値
17:00 ユーロ圏5月製造業PMI改定値
17:30 英国5月製造業PMI
6月4日(火)
17:30 英国5月建設業PMI
18:00 ユーロ圏5月CPI速報値
18:00 ユーロ圏4月失業率
6月5日(水)
10:45 中国5月MarkItサービス業PMI
16:50 フランス5月サービス業PMI改定値
16:55 ドイツ5月サービス業PMI改定値
17:00 ユーロ圏5月サービス業PMI改定値
17:30 英国5月サービス業PMI
18:00 ユーロ圏4月PPI、小売売上高
27:00 ベージュブック
6月6日(木)
15:00 ドイツ4月製造業新規受注
18:00 ユーロ圏1〜3月期GDP確報値
18:00 カーニー英中銀総裁講演
20:45 ECB理事会
21:30 ドラギECB総裁会見
21:30 米国4月貿易収支
6月7日(金)
15:00 ドイツ4月貿易収支
15:00 ドイツ4月鉱工業生産
15:45 フランス4月貿易収支
15:45 フランス4月鉱工業生産
21:30 米国5月雇用統計
前週のユーロレンジ
上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
5月27日(月)
ユーロドルは、東京市場では高値圏でこう着していましたが、欧州市場序盤にはドル円のドル買いにフォローする形でやや水準を下げ、その後もイタリアの財政規律問題に対する罰金の可能性からユーロは1.1187レベルまで下げました。しかしLDN、NYとも休場となったことから値幅は終日で28pipsと冴えない1日に終わりました。
5月28日(火)
ユーロドルはイタリアの財政規律問題がユーロの上値を重くする流れが継続しましたが、EU側が譲歩する可能性もありそうなことから上値が重たい程度に留まりました。NY市場では実需のユーロ売りと株安によるユーロ円の下げも重なって引けにかけては1.11台半ばへと押しての安値引けとなりました。
5月29日(水)
ユーロドルは、東京市場では動意薄だったものの欧州市場序盤に前日安値を下抜けると売りが強まり、改めてイタリアの財政規律問題への懸念、またECB副総裁の欧州景気に対する懸念発言も重なりNY市場の昼前には1.1124レベルへと下値を広げ、引けにかけてはやや買い戻しが見られて引けました。
5月30日(木)
ユーロドルは、材料自体に変化は無いものの欧州が抱える諸問題から消去法的な売りが出やすい地合いが続き、NYの朝方には1.1116レベルと週間安値を更新、その後も戻りは鈍いままでの引けとなりました。
5月31日(金)
ユーロドルは、東京市場ではトランプ大統領にメキシコ関税発言をきっかけとしたユーロ円の売りもあって方向感がはっきりしませんでしたが、欧州市場序盤以降はリスクオフの動きからドル全面安へと転じ、NY昼前には1.1179レベルまで上昇後やや押して引けました。
ディスクレーマー
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