ドル円週報 スピードは鈍るも円高トレンドは継続(6月第1週)

米中協議は一段のこじれを見せ、中国はレアアースの対米輸出規制に言及しています。

ドル円週報 スピードは鈍るも円高トレンドは継続(6月第1週)

今週の週間見通し

先週のドル円は水曜までは動意無し、109.15レベルに大口のドル買いオーダーがあってトライしきれなかったことから木曜にはいったんドル買い方向に動くかに見えました。しかし、木曜のNY引け後にトランプ大統領がメキシコからの不法移民に対する措置として制裁関税を導入、段階的に引き上げると表明したことをきっかけに更なるリスクオフの動きを招きました。

週初からあった109.15水準のドル買いオーダーをこなすと、短期筋のストップオーダーも巻き込み金曜のNY引けは108円台前半へと大幅に水準を切り下げることとなりました。金曜のFX羅針盤コラムで臨時にドル円のテクニカルなターゲット(年初来安値と高値の半値押し108.66)について言及しましたが、懸念通りに突き抜ける結果となりました。

問題はここからですが、米国発の貿易摩擦は日米協議こそ参院選後に何らかの落としどころが出てきそうですが、米中協議は一段のこじれを見せ、中国はレアアースの対米輸出規制に言及しています。米国のレアアースは9割が中国からの輸入ですから、米国の全品制裁関税と中国の報復措置と、当初今月の大阪G20サミットで合意する方向が更に遠のいたとしか思えません。またUSMCA(米国メキシコカナダ協定、新NAFTA)でも早速メキシコとの摩擦激化が起きていますし、本日からトランプ大統領が訪欧する中でも為替報告書監視リスト常連のドイツに対して何か言いだすのではないかという懸念しか感じられません。

株価は下げたくないものの不均衡是正に取り組んでいる姿勢を見せることの方が来年の大統領選に向け共和党にとって好ましいという判断が働いているように思えますが、ここまで貿易摩擦激化を伴うとなると、個人的にはあくまでも米国が勝ったというスタンスを取りつつもどこかで妥協せざるを得ないのではないかと見ています。当面は米中間の協議の行方を見ながらも実際に結果を見るまではリスクオフにバイアスをかけざるを得ないという流れでしょう。

他に今週は水曜にベージュブック(地区連銀レポート)があり、米国内の各地区における景況判断が気になること、また木曜の米国貿易収支は対中、対日、対ドイツの赤字がどのように変化しているのかも気になります。
一方で金曜には雇用統計の発表がありますが、ほぼ完全雇用の状況下においては、既に注目すべき経済指標ではありません。一時的な変動にはつながりそうですが、材料視する必要はないでしょう。

次にテクニカルな観点を改めて見ておきましょう。日足チャートをご覧ください。

先週の週報金曜のコラムでも指摘した「5月安値を下抜いた場合、年初来安値104.90と高値112.40の半値押しにあたる108.65(青のターゲット)が次のターゲットとなり、早ければ今週中にも試しに行く水準」という動きが出ました。これは円相場を取り囲む材料とテクニカルなターゲットが一致したことで、ドル売りバイアスがかかった結果と言えます。

半値というのは落ち着きどころとしてはいい水準ですが、あまりにも米国による不均衡是正のための動きが急速で、リスクオフによるドル売りバイアスが常にかかっている状況が今後も続くと考えられます。このバイアスをテクニカルで示すと4月高値からの下降チャンネル(太い青の平行線)とみなすことが出来ますが、先週木曜の上げでこの下降チャンネルの上限で抑えられたこと、また下降チャンネルの下限が年初来安値と高値の61.8%押しにあたる107.77と重なっていることに気が付きます。

今週もこのチャンネルの中で上がったところは売り、下値の次のターゲットは107.77水準と考えることが出来ます。今週も上値が重たい流れを考えるもののスピードは鈍ると見て108.90レベルをレジスタンスに107.70レベルをサポートとする流れをとします。

今週の週間見通し

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2019年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、ボストン、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

6月3日(月)
**:** NZ市場休場
**:** トランプ大統領訪欧(〜6日)
10:45 中国5月MarkIt製造業PMI
10:45 (サンフランシスコ連銀総裁講演)
16:00 トルコ5月CPI
16:00 トルコ5月製造業PMI
16:50 フランス5月製造業PMI改定値
16:55 ドイツ5月製造業PMI改定値
17:00 ユーロ圏5月製造業PMI改定値
17:30 英国5月製造業PMI
22:45 米国5月製造業PMI改定値
23:00 米国5月ISM製造業景況指数
23:00 米国4月建設支出
25:40 (リッチモンド連銀総裁講演)
26:25 セントルイス連銀総裁講演

6月4日(火)
10:30 豪州4月小売売上高
13:30 豪中銀政策金利発表
17:30 英国5月建設業PMI
18:00 ユーロ圏5月CPI速報値
18:00 ユーロ圏4月失業率
18:30 南ア1〜3月期GDP
22:45 パウエルFRB議長講演
23:00 米国4月製造業新規受注


6月5日(水)
**:** トルコ休場(〜6日)
10:30 豪州1〜3月期GDP
10:45 中国5月MarkItサービス業PMI
16:50 フランス5月サービス業PMI改定値
16:55 ドイツ5月サービス業PMI改定値
17:00 ユーロ圏5月サービス業PMI改定値
17:30 英国5月サービス業PMI
18:00 ユーロ圏4月PPI、小売売上高
21:15 米国5月ADP全国雇用者数
22:45 米国5月サービス業PMI改定値
23:00 米国5月ISM非製造業景況指数
23:30 週間原油在庫統計
27:00 ベージュブック

6月6日(木)
10:30 豪州4月貿易収支
15:00 ドイツ4月製造業新規受注
17:25 黒田日銀総裁講演
18:00 ユーロ圏1〜3月期GDP確報値
18:00 カーニー英中銀総裁講演
18:00 南ア1〜3月期経常収支
20:30 米国5月チャレンジャー人員削減予定件数
20:45 ECB理事会
21:30 ドラギECB総裁会見
21:30 米国4月貿易収支
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 米国1〜3月期非農業部門労働生産性


6月7日(金)
12:50 黒田日銀総裁講演
15:00 ドイツ4月貿易収支
15:00 ドイツ4月鉱工業生産
15:45 フランス4月貿易収支
15:45 フランス4月鉱工業生産
21:30 米国5月雇用統計
23:00 米国4月卸売在庫・売上高

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

5月27日(月)
ドル円は東京市場では株価の上昇とともにリスクオンの動きからドル買いの動きとなりましたが、LDN、NY市場とも休場となることもあって値幅は伴いませんでした。東京市場以降は高値圏でほとんど動意の無いまま1日を終えました。


5月28日(火)
ドル円は東京市場では全く動かず109円台半ばでのもみあいとなりました。欧州市場に入り上値の重たい株価とともにじり安となる中、月曜安値を下抜けると仕掛売りが見られましたが、逆にその動きがその後の買い戻しを招いた印象でした。NY市場では米中間の摩擦を嫌気したダウの売りがリスクオフの動きとなりましたが、為替市場は落ち着いた動きとなり安値を試さないまま引けました。

5月29日(水)
ドル円は上値の重たい株価に沿って東京市場の朝方、そして欧州市場序盤に2度109.15レベルの安値をトライしましたが、大きめのドル買いオーダーを前に反発する動きとなりました。その後株価はさらにじり安の動きとなる中、ドル円は日計り組の買い戻しも入り上昇、その後はユーロドルの下げがドル買いの動きとなりNY後場には109.70レベルまで上昇後にやや押して引けました。


5月30日(木)
ドル円は東京後場以降底堅い株価とともにドル買いの動きとなりました。前日に109.15レベルで何度か反発したこともあって短期筋が買い戻した動きも重なり、NY市場の朝方には109.92レベルと110円の大台を伺う動きも見せました。しかしポジション調整一巡後は買い方が引き、株価も上値が重たくなったことから引けにかけては109円台半ばへと押して引けました。

5月31日(金)
ドル円はNY引け後にトランプ大統領がメキシコへの制裁関税について発言、株安、円高とリスクオフの動きからスタートしました。その後も中国によるレアアース対米輸出規制の計画なども出て株式市場は続落、ドル円も東京後場には109円割れ。その後も下げ止まらない株価とともにドル円は売りが強まり、NY大引けでは108.28レベルまで水準を大きく下げ安値引けとなりました。

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