ドル円見通し 155円台後半へ続伸後は上げ渋り、日銀会合と夜の米PCE統計待ちに
〇ドル円、米経済指標の結果を受けて米長期債利回りが上昇したこと背景に、4/25夜155.74へ高値更新
〇直後に155.30まで下げたところも買われ、4/26早朝にかけては155円台中盤を維持
〇米GDPは予想を下回る鈍化だったが、四半期ベースのコアPCEデフレーターは予想を大幅に上回る
〇米国の利下げ開始先延ばしの可能性高まり、日米金利差拡大が続くとの見方で円安継続
〇本日発表される日銀金融政策決定会合結果、国債買い入れ縮小か
〇米長期債利回りは昨年末以降の高値更新、NYダウ続落、ナスダックは4日ぶりの反落
〇155.30以上での推移中は一段高余地ありとし、155.74超えからは156円試しとする
〇155.30割れからはいったん下げに入るとみて、155円前後への下落を想定する
【概況】
ドル円は4月25日夜の米1-3月期GDP速報値が予想を大幅に下回る鈍化となったものの四半期ベースのコアPCE(個人消費支出)デフレーターが予想を大幅に上回ったことによる米長期債利回り上昇を背景に155.74円へ高値を更新、直後に155.30円まで下げたところも買われて26日早朝にかけては155円台中盤を維持している。
米1-3月期GDP速報では成長率が10-12月期の3.4%増から1.6%増へ大幅に鈍化したが、FRBがインフレ指標として重視しているコアPCEデフレーターは四半期ベースで前期の2.0%から3.7%へ跳ね上がった。米国の利下げ開始は9月ないし11月にずれ込むとの見方が強まり米長期債利回り上昇による日米金利差拡大が続くとの見方で円安が継続した。
本日は昼頃に日銀金融政策決定会合の結果発表、午後3時半から植田総裁の会見があり、最近の円安に対するけん制姿勢や国債買い入れ縮小等の政策修正があるのか注目されるが、円安へのけん制姿勢が弱ければ円安反応を招く可能性がある。
今夜は3月の米PCE統計の発表があり、インフレ指標のコアPCEデフレーターについては2月の前年比2.8%から2.7%へ若干鈍化すると見込まれているが、全体のPCEデフレーターは2月の2.5%から2.8%へ加速すると予想されており、インフレ高止まりないし再燃懸念を強めればドル円が一段高するきっかけとなりやすい。
政府・日銀による市場介入への警戒感も日々強まっているが、2022年の市場介入は9月22日(木曜日)、3連休を挟んだ10月21日と10月24日だった。
【米GDPは予想を下回る鈍化だったがPCEデフレーターは跳ね上がる】
4月25日に発表された1-3月の米GDP速報値は前期比1.6%増となり10-12月期の3.4%から大幅に低下して市場予想の2.4%も下回った。GDPも凡そ7割を占める個人消費は前期の3.3%増から2.5%増へ鈍化して市場予想の3.0%を下回った。成長鈍化は利下げ催促要因だが、同時に発表された四半期ベースのPCE(個人消費支出)デフレーターは全体の前期比が10-12月期の1.8%から3.4%へ急上昇し、コアPCEデフレーターも前期の2.0%から3.7%へ急上昇したため、インフレ再燃懸念により米国の利下げ開始が先延ばしされる可能性が一段と高まったと市場は受け止めた。
FRBは4月30日−5月1日に次回FOMC(連邦公開市場委員会)を開くが、政策金利は現状維持と見込まれ、これまでの年3回利下げ想定が崩れるのか注目される。
【日銀金融政策決定会合、国債買い入れ縮小か】
日銀は4月25-26日開催の金融政策決定会合結果を昼頃に公表、午後に植田総裁会見がある。3月会合ではマイナス金利を解除して17年振り利上げを決定、YCC(イールドカーブコントロール=長短金利操作)を止めたが国債の大量買入れは継続し金融緩和は暫く続くとしたことで会合結果公表後に円安反応を加速させた。
政府や財界等による円安けん制姿勢が強まっていることもあり、植田総裁も先週のG20財務相・中銀総裁会合後に円安の影響次第では政策変更(利上げ等)もあり得るとし、メディア報道では今回の会合で国債買い入れ額を減額するのではないかとみられているが、市場は日銀会合でサプライズ的な追加利上げがなければ円安は継続するとみている印象だ。
イエレン米財務長官は4月25日のインタビューにおいて、為替介入は例外的な環境下においてのみで適切と述べている。先のG20財務相・中銀総裁会合での日米財務相会談で鈴木財務相は円安への懸念と対処姿勢を示して理解されたとしているが、イエレン長官発言は安易な介入をけん制する意味合いもあるのではないかと思われる。ドル高がアジア通貨安を招いているものの、米国にとってはドル高がインフレ抑制のために有効であり、政府・日銀も米国の意向を忖度して市場介入を躊躇している可能性もある。
【米長期債利回りは昨年末以降の高値更新、ダウ続落、ナスダック反落】
4月25日の米長期債利回りは米四半期ベースのPCEデフレーターが跳ね上がったことにより総じて上昇した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.07%上昇の4.71%となり、一時4.745%をつけて昨年12月27日に付けた3.78%以降の最高を更新した。30年債利回りは前日比0.04%上昇の4.81%となり一時4.84%をつけて昨年12月27日に付けた3.94%以降の最高を更新した。政策金利動向に敏感な2年債利回りは0.07%上昇の5.00%となり、一時5.018%をつけて1月12日に付けた4.24%以降の最高を更新した。
一方でNYダウはGDPの大幅鈍化と四半期PCEデフレーターの跳ね上がりを嫌って前日比375.12ドル安となり24日の42.77ドル安から続落し、ナスダック総合指数は100.99ポイント安で4日ぶりの反落となった。米国の成長率が鈍化しつつインフレが高止まりして利下げが先延ばしされれば株式市場の楽観的な強気感も大きく後退しかねないところだ。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は4月19日昼の急落から反騰入りして24日夜に155円台に到達し、25日夜には155.74円まで高値を伸ばしている。24日未明に小反落したところを起点として一段高しているため26日の日中から30日未明にかけての間への上昇余地ありとし、日銀会合や夜の米PCE統計次第では急伸もあり得ると思われる。ただし、市場介入への警戒感もあるため25日夜安値155.30円割れからは下向きとし、日銀会合や米PCE統計から急落する場合は27日未明から5月1日朝にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では24日夜に155円台へ一段高したことで遅行スパンが好転したが、25日夜高値の後は高止まりのため遅行スパンは実線と交錯しやすくなっている。先行スパンを上回るうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところから上昇再開とするが、先行スパンに潜り込む場合はその下限を試し、先行スパンから転落する場合は下げ足が速まる可能性があると警戒する。
60分足の相対力指数は4月25日未明から夜への一段高に際して指数のピークがフラットな弱気逆行がみられて50ポイント台へ低下しているため、65ポイント超えからは上昇再開とするが、50ポイント割れからはいったん下げに入るとみて30ポイント台への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、4月25日夜安値155.30円を下値支持線、25日夜高値155.74円を上値抵抗線とする。
(2)155.30円以上での推移中は一段高余地ありとし、155.74円超えからは156円試しとする。156円前後は反落警戒とするが155.30円を上回っての推移なら週明けも高値試しを続けやすいとみる。日銀会合結果や夜の米PCE統計から急伸する場合は157円前後へ上値目途を引き上げる。
(3)155.30円割れからはいったん下げに入るとみて155円前後への下落を想定する。155円以下は反騰注意とするが、日銀会合や米PCE等をきっかけに急落する場合は154円台中盤(154.65円から154.35円)へ下値目途を引き下げる。市場介入による急落が発生する場合は直前高値から5円超規模の急落となる可能性もあると注意する。
【当面の予定】
4/26(金)
中国全人代常務委員会最終日
昼 頃 (日) 日銀金融政策決定会合、政策金利 (現行 0-0.1%、予想 0-0.1%)
10:30 (豪) 1-3月期 PPI(生産者物価指数) 前期比 (10-12月 0.9%)
10:30 (豪) 1-3月期 PPI(生産者物価指数) 前年同期比 (10-12月 4.1%)
10:30 (豪) 1-3月期 輸入物価指数 前期比 (10-12月 1.1%、予想 0.1%)
15:30 (日) 植田和男日銀総裁、記者会見
21:30 (米) 3月 個人所得 前月比 (2月 0.3%、予想 0.5%)
21:30 (米) 3月 PCE(個人消費支出) 前月比 (2月 0.8%、予想 0.6%)
21:30 (米) 3月 PCEデフレーター 前年同月比 (2月 2.5%、予想 2.6%)
21:30 (米) 3月 コアPCEデフレーター 前月比 (2月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 3月 コアPCEデフレーター 前年同月比 (2月 2.8%、予想 2.7%)
23:00 (米) 4月 ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値 (速報 77.9、予想 77.9)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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