今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロは、週前半は不透明感が残るものの英国とEUとの間でブレグジット協議が進展するとの楽観的な思惑からポンド買いが入り、その動きにユーロも連れ高となりました。1.14台は2月6日以来の高値圏となったこともあって、実需のユーロ買いが出ているにも関わらず、週後半は1.14に乗せると反落する動きとなり、結果として1.13台後半を中心としたもみあい相場のままで引けています。
ブレグジット協議に関しては、EU側のバルニエ首席交渉官がこれまでも譲歩の可能性を示唆していましたが、金曜には「バックストップが一時的な措置であることを明確にする用意がある」と、英国側が求めるバックストップに期限を決めることに理解を示す発言をしています。金曜時点では反応が鈍かったのですが、週明けの早朝市場ではこれを材料にポンドに買い戻しが入っています。このEU側の譲歩が英国議会の現時点での修正案に沿うものであれば、いよいよ3月29日あるいは短期間の延期をもってブレグジット案の合意へと進む可能性が高まっています。
これまでは、合意という表面的な材料でポンド買い戻しの動きが継続してきましたが、合意が見えてくるといよいよ離脱後という実質的な材料に関心が移ることとなります。EUからの離脱自体が初めてのことで不透明感が漂いますが、EU内の英国と単独の英国を比較した場合、多くの面で英国経済にもEU経済にも影を落とすこととなるでしょうから、ユーロが買われるような動きは考えにくいところです。さらに、EU主要国の経済指標は全般に弱めで景気減速懸念は拭い去れませんし、政治的な問題も今はやや下火になっていますが、5月23日のEU議会選挙に向けて4月に入ると極右の動きなど、色々と悪材料が出てきそうです。まだ時間的には早すぎますが、悪材料のほうが目立つ状況には当面変化は見られないと思います。
今週も経済指標は連日のように発表されますが、注目されるのは英中銀総裁講演とECB理事会後のドラギ総裁会見でしょうか。英中銀はタカ派寄り、ECBハト派というのが最近の流れですが、このあたりに変化があるかどうかを見極めた上で、ブレグジット協議の進展を見ていく週となります。
テクニカルにも見てみましょう。日足チャートをご覧ください。
日足チャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
前週までのチャートから重要なラインを残し、2月安値と先週高値のフィボナッチリトレースメントを修正しました。
1月高値(1.1570)と2月安値(1.1234)との半値戻しが1.1402、1月末の高値(1.1514)と2月安値(1.1234)との61.8%戻しが1.1407とほぼ一致し、1.14水準に集中しています。先週の1.14超えでの上値の重たさもテクニカルには頷けますが、それ以上に悪材料が多いという点がユーロドル市場参加者の買いをすぐに仕切るという行動に繋がっていると思われます。この傾向は今週も続くでしょうし、引き続き青の平行線で示した下降チャンネルの中での推移を継続していくでしょうから、1.13台前半の買いと1.14台前半の売りによる綱引き状態となりそうです。
テクニカルには上値は先週の高値圏、下値は2月安値と先週高値(1.1420)との61.8%押しにあたる1.1305が、それぞれレジスタンスとサポートになると考え、今週は1.1300レベルをサポート、1.1420レベルをレジスタンスとする一週間を見ておきます。
今週のコラム
今週は久しぶりにユーロ円のチャートを見てみましょう。
ユーロ円もドル円の112円台乗せと歩調を合わせ、先週は127.50レベルまで水準を切り上げました。こちらはドル円から1営業日遅い7日からの上昇チャンネルをピンクの平行線で示してありますが、金曜の上げで上抜け現状は青の平行線で示した急角度の上昇チャンネル中での動きとなってきました。
ここで赤い平行線が近い水準にあることがわかりますが、これは昨年9月高値(133.13)と今年安値の119.07との61.8%戻しに当たる127.76となっています。ドル円もそろそろ上値の限界点に近づいてきていることと同様に、ユーロ円もこの127円台後半は目先のターゲット兼レジスタンスになってくると考えています。チャートの形状からもドル円の影響が大きいのですが、今週はドル円とともにユーロ円がこれまでの上昇を失う可能性について見ておきたい週であると思います。
今週の予定
3月4日(月)
18:30 英国2月建設業PMI
19:00 ユーロ圏1月PPI
3月5日(火)
17:50 フランス2月サービス業PMI改定値
17:55 ドイツ2月サービス業PMI改定値
18:00 ユーロ圏2月サービス業PMI改定値
19:00 ユーロ圏1月小売売上高
24:35 英中銀総裁講演
3月6日(水)
22:15 米国2月ADP全国雇用者数
28:00 ベージュブック
3月7日(木)
19:00 ユーロ圏10〜12月期GDP確報値
21:45 ECB理事会
22:30 ドラギECB総裁会見
3月8日(金)
16:00 ドイツ1月製造業新規受注
16:45 フランス1月貿易収支、鉱工業生産
17:00 オーストリア中銀総裁講演
22:30 米国2月雇用統計
3月10日(日)
**:** 米国夏時間に移行
前週のユーロレンジ
記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
2月25日(月)
ユーロドルは、底堅い動きとはなっていたものの先週半ば以降はレンジの中での推移、米中通商協議関連ニュースへの反応も鈍く明確な方向感は出ませんでした。ユーロ買いの材料は主にポンドの上昇によるものでしたが、離脱期限延長の検討と労働党による再国民投票の話がそれぞれポンド買いの材料とされ、ユーロも連れ高となっていました。
2月26日(火)
ユーロドルは1.13台半ばで方向感のはっきりしないもみあいを続けていましたが、メイ首相が議会で離脱延期の採決を取ることに言及したことを好感し、前日に続いてのポンド大幅高となった動きに引っ張られてユーロ買いとなりました。ユーロドルは2月6日以来の1.14台を見ましたが、引けにかけては利食いも入りやや押しての引けとなりました。
2月27日(水)
ユーロドルは、終日方向感がはっきりしない展開となっていましたが、印パ紛争が激化し戦闘機撃墜のヘッドラインにユーロ円がリスクオフの売りで反応したことからユーロ売りの動きが出るいっぽうで、ポンド買いに引っ張られてのユーロ買いの動きとがミックスしている状況が続きました。その後はドル円同様にドル買いの動きが目立ちNY昼頃には1.1361レベルへと下落、1.14超えは前日高値と合わせてダブルトップ状の高値圏を形成しました。
2月28日(木)
ユーロドルは、東京市場では動きが見られなかったものの米朝首脳会談物別れのヘッドライン直後はドル売りで反応しましたが、その後の欧州市場では月末の実需のユーロ買いが入り一時1.1420レベルまで上伸しました。NY市場では予想よりも強い米国GDPをきっかけとしたドル買いの動きからそれまでの上昇を全て失い、行って来いの引けとなりました。
3月1日(金)
ユーロドルは、欧州市場序盤までは小動きとなっていましたが、月初で実需のユーロ買いがロンドンフィックスに向けて出たことからじり高、その後NY市場前場には弱い経済指標に反応してドル売りから一時1.1409レベルまで上げましたが、引けにかけてはドル買い戻しの動きとともに安値圏へと押して引け、1.14台の上値の重たさを感じさせる週末クローズとなりました。
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