ドル底堅いもののそろそろ上げは限界か(週報3月第1週)

先週はそれほどドル買い・円売りというニュースは見られなかったにも関わらず、ドル円は年初来高値を更新する展開となっています。

ドル底堅いもののそろそろ上げは限界か(週報3月第1週)

今週の週間見通し

先週のドル円は、前週のレンジ50銭の反動もあったかと思いますが、110円台前半から112円台乗せと大きく円安が進み値幅も1円72銭と月末月初を挟んだ割には取引をともなった週になったかと思います。しかし、週を通して最も注目されていた米朝首脳会談は合意に至らず物別れ、また米中通商協議が最終合意に近いというテーマはやや使い古された感もあって、それほどドル買い・円売りというニュースは見られなかったにも関わらず、ドル円は年初来高値を更新する展開となっています。

多分にテクニカルな要因が大きかったとは思いますが、これは後ほど検討することとし、他に気になる動きとしてはドル建て金価格が大きく下落したことです。金価格は先週初には1330ドル台で推移していましたが、週末には1290ドル近辺へと40ドル以上の下落を見せました。リスクオフによる金買いの動きに対する調整で中長期的な資金の動きが入った可能性がありますが、他市場に比べてどうも金相場は妙に円安志向にあることは個人的には首をかしげています。

週末には共和党のイベントでトランプ大統領が久しぶりにドルに対して言及し、強すぎるドルは望まないとしながら、その原因をFRBの金融政策としあからさまにパウエルFRB議長を批判しました。そして「他国との取引ができなくなるような強いドルは望んでいない」というくだりは、米中通商協議後の日米通商協議を念頭に置いた発言である可能性があります。日米通商協議は3月中にも再開される予定となっていますが、同協議に向けてUSTRは貿易交渉に関する報告書を議会に提出、ライトハイザー代表は具体的に「日本を含むアジア各国で為替の問題がある」と為替条項がテーマとなる可能性を示唆しています。

現段階では日米通商協議は市場参加者の視野には入っていないに近い状態と思われますが、日本側の代表である茂木経済再生相は本日の予算委員会で場所を含めてこれから調整、また為替条項付帯は否定しながらも対象は物品だけではない、と発言しています。対日強硬派のライトハイザー代表が出てくることで、少なくとも米国に有利な方向で話が進められそうですが、その様子を探るにも今後出てくるであろう米中首脳会談での最終合意が、どの程度米国寄りのものとなっているのかを見極める必要があります。日米交渉もあまり油断はせずにいたいところです。

円相場を取り囲むテーマとしては以上が今後の重要なポイントとなってきますが、現時点ではそうした材料よりもテクニカルな要因が大きいと思いますので、次にテクニカルな面から見てみましょう。
日足チャートをご覧ください。

色々とラインが引いてありますが、上下にあるピンクの太線は2018年の高値と安値です。そして、先週木曜までは1月4日からのサポートラインとそれと平行に引いた上昇チャンネル(ピンクの細線)の中での推移となっていましたが、金曜の動きでこのチャンネルを上抜け、ストップも伴って現状は青の平行線で示した上昇チャンネルへと角度をやや急にしてきている段階にあります。

ここで、昨年高値114.55と今年安値104.90とのフィボナッチ・リトレースメントを見ると78.6%(61.8%の平方根)戻しが112.49となっていて、今週は青の平行チャンネル上端と水準が一致しています。また、112.50という水準は年初来安値から考えると、7円60銭にも達していて、最近の値動きから考えた場合、一波の動きとしては明らかに大きい印象です。そろそろ、テクニカルにはこの112円台半ばが中期的なターゲットかつ、上げの限界点になってくるのではないかと考えています。

今週も下がったところでは押し目買いが強そうではありますが、ある程度下方向の余裕も見て、111.00レベルをサポートに、112.50レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。

今週の週間見通し

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2019年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、ボストン、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

3月4日(月)
09:30 豪州1月住宅建設許可件数
16:00 トルコ2月CPI
18:30 英国2月建設業PMI
19:00 ユーロ圏1月PPI
24:00 米国12月建設支出

3月5日(火)
09:30 豪州10〜12月期経常収支
10:45 中国2月MarkItサービス業PMI
12:30 豪中銀政策金利発表
17:50 フランス2月サービス業PMI改定値
17:55 ドイツ2月サービス業PMI改定値
18:00 ユーロ圏2月サービス業PMI改定値
18:30 南ア10〜12月期GDP
19:00 ユーロ圏1月小売売上高
23:45 米国2月サービス業PMI改定値
24:00 米国2月ISM非製造業景況指数
24:00 米国12月新築住宅販売件数
24:35 英中銀総裁講演
25:30 (リッチモンド連銀総裁講演)


3月6日(水)
07:10 豪中銀総裁講演
09:30 豪州10〜12月期GDP
20:00 トルコ中銀政策金利発表
22:15 米国2月ADP全国雇用者数
22:30 米国12月貿易収支
24:00 カナダ中銀政策金利発表
24:30 週間原油在庫統計
26:00 NY連銀総裁講演
26:00 (クリーブランド連銀総裁講演)
28:00 ベージュブック

3月7日(木)
09:30 豪州1月貿易収支、小売売上高
18:00 南ア10〜12月期経常収支
19:00 ユーロ圏10〜12月期GDP確報値
21:30 米国2月チャレンジャー人員削減予定数
21:45 ECB理事会
22:30 ドラギECB総裁会見
22:30 米国新規失業保険申請件数
22:30 米国10〜12月期非農業部門労働生産性
30:45 NZ10〜12月期製造業売上高

3月8日(金)
08:50 本邦10〜12月期GDP改定値
08:50 本邦1月国際収支(貿易収支)
**:** 中国2月貿易収支
16:00 ドイツ1月製造業新規受注
16:45 フランス1月貿易収支、鉱工業生産
17:00 オーストリア中銀総裁講演
22:30 米国2月雇用統計
24:00 米国1月卸売売上高・在庫

3月10日(日)
 **:** 米国夏時間に移行

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

2月25日(月)
ドル円は早朝に制裁関税猶予延長と米中首脳会談で最終的な合意を目指すとのヘッドラインをきっかけにリスクオンの動きが先行しましたが、株式市場とともに為替市場も前場には失速、その後欧州市場前場までは前週末の水準でのもみあいを続けました。欧州市場の昼頃からダウ先など株式市場が改めてリスクオンの動きを示すとドル円も再びドル買いへと動き、NY市場の昼過ぎには年初来高値を更新する111.24レベルを示現、その後やや押しての引けとなりました。


2月26日(火)
ドル円は前日に年初来高値を更新した後の利食いも入って早朝から売りが先行、その後は仲値でのドル売りに加え日経平均株価が下げた動きに沿って110.75レベルまで水準を切り下げました。NY後場までは上値は重たいもののもみあいを継続、NY後場はポンド買いがドル売り全般に波及し110.42レベルの安値をつけての引けとなりました。

2月27日(水)
欧州市場序盤まではほとんど動意の無いもみあいとなっていましたが、印パ紛争が激化し戦闘機撃墜のヘッドラインとともにリスクオフの動きから株安、円高。ドル円は前日安値を割り込んで一時110.36レベルの安値をつけましたが、株も為替も反応はそこまで、仲値に続いて月末に向けての実需もあった様子でじりじりと買い戻しも見られました。その後、ダウ先が反転に転じると日経先物も上昇、NY市場では米朝首脳会談に対する期待も加わって急速にリスクオフの巻き返しとなって111円台に乗せた後も底堅い動きのまま引けました。

2月28日(木)
 ドル円は前日の上げに対する調整と仲値に向けての実需売りから小幅な下げで米朝首脳会談の結果待ちという状況でしたが、後場に入り米朝首脳会談のスケジュール変更のニュースが入り、まとまらないのではとの思惑からリスクオフの動きとなりました。しかし、合意に至らなかったとのヘッドライン以降は全く下げず、その後はじり高へと転じました。その後、予想よりも強かった米国GDPの結果を受け前日高値を上抜けると、ストップオーダーも巻き込みながら引け間際には111.49レベルと年初来高値を更新しての引けとなりました。


3月1日(金)
 ドル円は月初の仲値買いに加え、中国の製造業PMIが予想よりも強かったことから上伸、前場には既に111.77レベルへと水準を切り上げていました。その後も底堅い展開が続き112円目前となっていましたが、NY市場で発表された経済指標が軒並み弱くダウの下げとともに昼前にいったん東京前場の水準へと押しました。しかし、実需買いが対ユーロを中心に根強かったこと、ダウが買いに転じたことから引け前に112.08レベルと年初来高値を更新し、若干押しての引けとなりました。

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