2019年の豪ドル対米ドルの見通し

ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析の両面から2019年の豪ドル対米ドルの見通しをしてゆきます

2019年の豪ドル対米ドルの見通し

2019年の豪ドル対米ドルの見通し

*****************************************************************************
「FX羅針盤」の年明けの年間相場予想、第二弾はオセアニアの経済指標と投機ポジション、テクニカル分析に加え、今年からは主要国の金融政策、経済統計分析もしていただいているワカバヤシFXの橋本さんのオーストラリアドル年間見通しです。得意のファンダメンタルズとテクニカル双方からのアプローチで、今年の方向性を占います。今年の予想は「年初は豪ドル安、年央〜年末にかけて豪ドルの反発」中国の景気減速鮮明化から昨年は思いの外豪州経済の立ち上がりが遅れる形となりましたが、今年こそは豪州の年となるか!?(編集部)
*****************************************************************************

米・豪のGDP

米・豪のGDP

図@は米豪の四半期毎の前年比をベースにしたGDP比較です。これは豪州の発表数値の基準に合わせています。(注:米国は毎四半期発表時の前四半期年率とは数値が違いますので御注意願います)。
上図を見る限り両国の経済規模の違いはあっても、その伸び率にはほとんど差異がありません。
特に図Aの3四半期移動平均では概ね同じ軌跡を辿り右肩上がりになっています。

ほぼ同じ成長率推移にも関わらず、中央銀行の金融政策に大きな違いが生じています。
下記の政策金利推移のチャートをご覧ください。

2019年の豪ドル対米ドルの見通し

昨年3月(上図の黒い線)にFRB利上げを実施して以降、米豪の金利差は逆転し拡大を続けています。現状でもまだ暫く金利据え置き継続を見込む豪州中銀と、利上げ回数の予想は減少したものの、今年も利上げを継続するFRBとの両国間の金融政策差異は2019年も続き、金利差は一層拡大すると予想されます。


それでは2019年の豪州GDPの伸びはどうなるかというと、下の表を見ていきましょう。

2019年の豪ドル対米ドルの見通し 2枚目の画像

表1Aは2017年11月時点の豪州中銀のGDP見通し、表1Bは2018年11月時点の見通しを表しています。赤い○印は、2018年GDPに関してはAが予想で、Bがほぼ実績に近い数値での予想です。昨年は2017年時点で2018年のGDPを3%予想に見ていましたが、2018年11月時点では3Qまでの実績値を含み3.5%まで上っています。
2019年見通しは全く変わっていませんが、2018年数値は準実績値が0.5%程度大きくなっているので、その基準からの3.25%上昇は意味合いが違ってきます。

同様に緑の○印で記したCPIを見ると、コアインフレ部分は2019年12月末期に0.25%だけ上昇する予想になっていましが、その他は1年経過してもさほどインフレを心配していない様子が伺えます。引き続き、中銀は利上げに切り替えるタイミングが難しくなっている様です。

2019年の豪ドル対米ドルの見通し 3枚目の画像

GDPを別の角度から見るために、2018年10月時点のIMF予想を確認してみましょう。
2019年1月21日にIMFは世界経済の見通しを下方修正していますが、オセアニア地域のデータが更新されいないので、昨年10月時点の数値を使用しています。それでも傾向として、灰色の米国GDPが来年の2020年には大きく下がる見通しになっています(黒の矢印)。従い豪州やNZもGDPは減少するものの、米国ほどの下落幅予想とはなっていません。(尚、図を解りやすくするために2.5%に赤い横線を入れています)

となると豪州にとっての最大のリスクと言われている対中国との貿易関係になります。ここで豪州中銀が作成した対中国との関係でGDPに対する中国割合のチャート(図D)を作みてゆきます。

2019年の豪ドル対米ドルの見通し 4枚目の画像

(図出所:豪州中銀HP)

これをみると確かに2010年頃まではGDPに占める対中国は10%を越えていましたが、2014年以降は7%程度まで下がってきています。なかでも対中投資(棒グラフの灰色)に関してはここ数年で2〜3%程度まで下がってきており、影響度合いは一層下がっています。赤の消費は大きく変動する項目ではないので、豪州の対中影響度も年を追う毎に小さくなっていくと思われます。

2019年の豪ドル対米ドルの見通し 5枚目の画像

図Eを見ると、豪州は昨年も一貫して金利を据え置き(1.5%)ました。2016年2Qに下げ止まったCPIは、低金利政策の維持により2016年3Qから、CPI>政策金利の状態を維持できています。中銀はこのまま政策金利を低く抑えてCPIの上昇を待つスタンスを継続する以外になさそうです。
従いまして、2019年は青のCPIがオレンジの政策金利との差を拡大できるか否かが焦点になりそうです。中銀のGDP見通しやIMFのGDP予想を見ると2019年以降は2.7%〜3.25%の成長が見込めるので、豪州の利上げ時期を見通せる状況が2019年後半には出てきてもおかしくありません。
一方で、米国はGDP鈍化見込みであり、FRBの利上げ回数は現状の年内1〜2回程度が更に少なくなることも予想されます。特に年央〜後半の経済指標には注目が必要です。

以上からみると、2019年央までに米国景気の鈍化兆候が起きるのか、それに伴う利上げの回数はどうなるかが焦点となり、2019年前半は昨年来からの米ドル選好地合いは続くと思いますが、年央〜年末にかけて米経済の鈍化が明白になった時点で、米豪の金融政策格差が出始め、為替相場に影響がでる可能性が高くなると思われます。

テクニカル分析

豪ドル/米ドル月足チャート

豪ドル/米ドル月足チャート

(2019年1月24日終値現在)

豪ドル/米ドルは、現在は大きなレンジとして0.70米ドル手前(ラインA)〜0.89米ドル(ラインD:以下米ドルを略)の3角保合いのレンジ下限にいます。
2018年初ラインE(0.8160〜80)に止められて、豪ドル高からの調整入りとなり、昨年はラインCとBのサポートも下抜けて、ラインAまで下押ししています。
もしこのラインAを月足終値ベースで割っていくようですと、緑の横ラインG(2008年底値0.60)付近までの下値余地が広がります。逆にAを維持できれば、再度ラインCに向かい、ラインF(0.7750付近)の抵抗線まで上値余地が広がり、強い関門のラインEトライになります。現状ではまだ豪ドル安トレンドが継続しているので、このラインAを切るか否かが2019年前半の動きになります。

週足チャート

週足チャート

(2019年1月24日終値現在)

週足でもう少し近場を見ますと、2016年から豪ドルは立ち上げて、ラインHとIの豪ドル高トレンドを形成していました。しかしながら2018年初にラインMで2回目の高値を抑え込まれ、更に2018年4月にはラインHを下抜いたことで、豪ドル安トレンドに転換しています。結果、5月以降はラインJとKの豪ドル安トレンドが形成されて推移しています。このトレンドラインは現在0.6830〜0.73にあります。現在のレンジ下限は丁度2016年初の0.6820とダブルボトムの位置になります。従いまして、時間経過でトレンドラインが下がってくると、0.6820は下抜け易くなります。ラインJは1年間で約100ピップス程度下がっているので、今年の年末には0.6730〜40付近になります。年末までこのトレンドラインを維持され、月足ベースでラインAを割って終わると、月足のラインG(0.60付近)が見えてきます。

逆に、上値の0.73(ラインK)を越えて終われれば、綺麗な0.6820〜40のダブルボトムが形成され、豪ドルは上値方向への戻りが始まりそうです。この場合にはラインL(現在0.7770=月足のラインF付近)が目標値として見えてきます。更にその上は何度も止められたラインM(=月足のラインE)が控えているので、この辺りまでの上値余地が広がってきます。

さて、次に月足と週足の移動平均線を見ましょう。

月足チャート移動平均線

月足チャート移動平均線

(2019年1月25日終値現在)

赤が38ヶ月線、青が62ヶ月線になっています。ゴールデンクロスやデッドクロスを確認してからも十分値幅取れる動きになっています。現在はデッドクロスの継続中ですが、豪ドルの下げ渋りにより38ヶ月線(0.7502)が横這っており、約300ピップスの幅しかありません。相場次第では年末にゴールデンクロスになる可能性も広がってきます。現状では62ヶ月線(0.7807)辺りは豪ドルの天井になりそうです。

週足チャート移動平均線

週足チャート移動平均線

(2019年1月25日終値現在)

週足では2018年5月末にデッドクロスしてから、赤の38週線(0.7238)が青の62週線(0.7467)に先行して豪ドル安になっています。仮に豪ドル安の修正入り、豪ドル高に戻った場合には青の0.75付近が当面の抵抗線になります。

2019年見通し

2019年前半は米豪の金融政策格差(豪ドル金利据え置き、米ドル利上げ見通し)で、引き続き豪ドルの先安観が強いままとなりそうです。しかしながら、米豪の経済規模の違いはありますが、フローベースでのGDP伸び率は2020年以降には豪州>米国となります。
これから1年通して注目するのは
(ア) 豪州の場合には、CPIやGDPが右肩上がりになり始めた時に中銀の金融政策の
スタンスやニュアンスの変化
(イ) 米国では、成長が頭打ちとなり、市場に利上げ打ち止め感が出始める時期
となりそうです。

これらのファンダメンタルズを背景に、テクニカルでもまだ豪ドル安トレンドが継続しており、週足の0.6830〜0.7300のトレンドをいつまで継続するか、そして時間経過でトレンドラインが下がり、0.6820のダブルボトムを月足で下回った場合には豪ドル安の継続となりそうです。この場合は1年後のトレンドライン下限の0.67、月足の0.63、0.60辺りまでの下値を見込む必要がありそうです。
上値は0.73を越えてくると、移動平均線の0.75や0.78(ラインLの0.7770を含む)、更に月足のラインE(0.8160〜80)までの上値余地が広がります。年初は豪ドル安、年央〜年末にかけて豪ドルの反発を予想します。レンジは0.69(下限切ると0.67付近)〜0.78を想定します。 

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る