今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロドルは、ブレグジット案採決延期、メイ首相不信任回避、イタリア修正案提出、マクロン大統領不信任案の可能性と欧州の政治問題がユーロの上値を抑え、金曜には1.1270レベルの安値をつけることとなりました。
英国内の動きとしては、現状ではブレグジット案が反対多数でハードブレグジットが避けられない状況であることからメイ首相は採決を最大1月21日まで延期することとなりました。果たしてEUとの再協議で英国議会を納得させる譲歩を引き出せるのかどうかは、まったく不透明で今の状態では単にハードブレグジットが決まる時間が1か月先延ばしになったに過ぎません。個人的にはメイ首相が提示している案で進め、英国経済に大きなショックを与えないことの方が重要だと思うのですが、どうなるでしょうか。3月の期限まで時間ばかりが消費される中、当面はブレグジット案に対して何らかの修正が加わるのか、それを議会が賛成するのかを見守るしかない状況です。
そしてイタリアの予算案ですが、2.04%とほぼEUの定める規律に寄せてきたというところです。EU側はあくまでも2.0%と言う可能性がありましたが、月曜早朝のイタリア与党内の会議で意見の一致を見たというヘッドラインが入っています。これが、2.0%への再修正を含んだものであるのか、あるいは単に2.04%の財源確保の話なのか詳細はわかりませんが、おそらく2.0%への再修正と現実的な問題である財源確保との全てを含めた与党内の合意ではないかと思われます。いまのところ目立ったユーロ買いとなっていませんが、本日の欧州市場までの動きは要チェックです。
そしてマクロン大統領の不信任の話ですが、フランス国内では政府の政策に対する不満が大規模なデモとして噴出しています。あれだけ人気のあったマクロン大統領の支持率は23%にまで低下していて、これは歴代大統領の中でも最低の支持率にまで下がっているそうです。大統領不信任案は早ければ本日にも出される可能性があります。メイ首相は回避しましたが、マクロン大統領がどうなるかは現状かなり不透明と言わざるを得ません。
さらに関連してデモ対策費が莫大なようで、フランスも予算案が財政規律(フランスは3.0%)を超えざるを得ない状況になっているとのこと。現在GDP比2.8%の案が3.2%にまで膨らむ見通しと述べています。
フランスは今年も財政規律を超える予算が続いていて、一部ではイタリアの予算案修正と結び付け大統領の一段の指導力低下になると言われています。不信任がどうなるのかは今週中にも動きが見えてくると思いますが、どうも欧州(ユーロ)は悪材料ばかりで、年初来安値をもう一度トライするのではないか、そういう考えしか出てこない状況です。
チャートも見てみましょう。
日足チャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
ユーロドルは近いところでは11月高値(1.1500)と11月安値(1.1216、年初来安値)をそれぞれ起点とする三角もちあいを形成していましたが、金曜の下げでサポートラインを下回っての引けとなりました。かろうじて11月28日安値(1.1267)は維持したものの、まだそれほど離れているわけでもなく、次にここを割り込むと年初来安値更新が視野に入ります。イタリアはカタがつきそうですが、英国はどう見ても年明け、そしてフランス政治に対する懸念も広がります。
下げ局面での三角もちあい下抜けということからコンティニュエイション(継続)パターンを考えると、一段安のリスクが今週はあると見ることとなるでしょう。今週もユーロは不安材料が多く、テクニカルにも下値目線ということから、年初来安値を更新し1.1190レベルをサポートに1.1390レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。
今週のコラム
久しぶりにユーロ円の日足チャートを見てみましょう。
見ての通りで、既に1か月以上128.39を半値とした11月安値(127.50)と、11月末高値(129.28)との間で方向感の無い膠着相場となっています。ドル円もユーロ主導のドル相場になっているとも言えますが、ユーロドルが下値目線でかつドル円も上値が限られているとなるとユーロ円は下方向に動くしか道がありません。
そこでタイミングを見るためにもユーロ円のチャートを引っ張ってきたのですが、ユーロ円日足は10月中旬以降で見ると三角もちあいとなっていて、テクニカルには抜けた方向に動きやすい地合いにあります。そしてユーロドルもドル円も下方向となると、このユーロ円がもちあいを下抜けする時が、テクニカルにはユーロでもドル円でも動きが出てくる時ではないか、そしてチャートパターン的にはそれは今週の可能性もあるくらいにサポートラインが接近してきているというところに注意しておきたいところです。動きが先送りされる可能性もありますが、年内には決着するのではないかと思っています。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。
12月17日(月)
19:00 ユーロ圏11月CPI
19:00 ユーロ圏10月貿易収支
12月18日(火)
18:00 ドイツ12月ifo企業景況感
12月19日(水)
16:00 ドイツ11月PPI
18:30 英国11月CPI・PPI
19:00 ユーロ圏10月建設支出
28:00 FOMC結果発表
28:40 パウエルFRB議長会見
12月20日(木)
18:00 ユーロ圏10月経常収支
21:00 英中銀MPC結果公表
12月21日(金)
16:00 ドイツ1月GFK消費者信頼感
16:45 フランス12月企業景況感
16:45 フランス11月PPI
16:45 フランス7〜9月期GDP確報値
18:30 英国7〜9月期GDP改定値
前週のユーロレンジ
上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
前週のユーロ
12月10日(月)
ユーロドルは、東京前場はドル売りの動きからユーロ買いが先行しての週明けとなりましたが、欧州市場以降は英国議会の採決延期が確定し具体的な時期が示されなかったことから、先行きの不透明感からポンドとユーロに売りが目立ちました。ユーロドルは1.13台半ばまで水準を切り下げ、そのまま安値圏での引けとなりました。
12月11日(火)
ポンド、ユーロを中心に欧州通貨主導の一日となりました。東京市場から欧州市場前場までは前日の下げに対する調整でユーロがじり高となりましたが、いまだイタリア予算案修正を政権内で協議中とのヘッドラインから始まり、英国の議会採決延期とEUとの再協議を考えるメイ首相に対しEU側からも、英国内野党からも困難な状態を示すニュースが次々と入り不信任決議の話とともにポンド売り、ユーロ売りが強まりました。さらにフランスのマクロン大統領不信任投票を進めているとのニュースも出て、ユーロは1.1306レベルまで水準を切り下げ、安値圏での引けとなりました。
12月12日(水)
ユーロドルは、ブレグジット案の採決延期の後はメイ首相不信任投票が行われることとなり、欧州市場序盤まではポンドとともに上値の重たい展開となりました。しかし不信任は回避される見通し(その後、不信任は否決)に加え、イタリアも財政規律内の修正案を提案するとのヘッドライン(その後、イタリアが2.04%の修正案)も出て、ユーロは買い戻しが続きました。NY後場には1.13台後半まで水準を切り上げ若干押して引けました。
12月13日(木)
ユーロドルはECB理事会を控えて東京から欧州市場までは様子見となっていましたが、理事会の結果は予想通りで年内での債券購入終了が示されました。これ自体の反応は少なかったものの、その後のドラギ総裁会見で景気の鈍化に言及したことからユーロが売られる動きとなりNY市場では一時1.1331レベルまで下げました。しかし安値圏では買いも見られ一日のレンジの中ほどでの引けとなりました。
12月14日(金)
ユーロドルは、東京市場ではまったく動きが出なかったものの、欧州市場朝方に発表された経済指標が弱かったことをきっかけにじり安。その後はECB副総裁のハト派コメントも重なり来年の利上げ思惑後退からNY市場の朝方には1.1270レベルと東京前場から100ポイント近い下げを見せた後に、やや戻しての引けとなりました。
ディスクレーマー
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