ユーロ スピードは速いが戻り売りの流れ(10月第2週)

10月第1週のユーロは、9月上旬に抜けられなかった1.15台前半下抜けしたことで上値の重たい展開となってきました。

ユーロ スピードは速いが戻り売りの流れ(10月第2週)

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロドルは、ハードブレグジット懸念は継続材料ですが、イタリアの予算案がGDP
比2.4%というEUの財政規律である2.0%を大きく超える内容となったことが前週に続いてユーロ売りの材料とされました。予算案自体は、イタリア与党(5つ星と同盟)は拡大財政を考えているというのが当初の見られ方でしたが、直前に1.6%という数字が出た後に実際は2.4%と2%を挟んで逆にずれたことが各所で問題視されています。

財政規律を守ることによる低迷を続けるよりも財政拡大による景気拡大を目指すというのはEUという連合体の中の主要国のひとつイタリアとしては難しいものです。EU側からも財政規律に反するとの声も出ていて、予算案の提出期限となる今月15日までにイタリアが修正案を出してくるのかどうか、欧州委員会は正式な予算案が提出された後で評価すると述べていますので、今週もイタリア関連ニュースが大きな材料となりそうです。

また、ブレグジット特にアイルランド問題が現状では最大のハードルとなっていますが、EUの実質的に北アイルランドをEU域内として扱うという提案に対して、メイ首相は先週開かれた保守党の党大会で改めてこれまでの方針(北アイルランドも英国として扱う)で進めることを呼びかけました。メイ政権は北アイルランドの民主統一党(北アイルランドは英国の他地域と同一とする立場)の閣外協力を得ていることもあって、EUとの合意はなかなか難しい状況です。

その場合、合意なき離脱というハードブレグジットの可能性が高まりますので、関税が高くなることも含めて英国経済への打撃の方が大きいというのがコンセンサスです。英国政府のその場合には再生刺激策等で景気低迷を阻止すると言及していますが、あまりにも不透明で今月末あたりまでに合意案が見えてこないと、かなりハードブレグジットの可能性が高まり、結果としてポンドが売られやすくユーロも連れ安となりやすい地合いが継続すると言えるでしょう。

更に大手企業が英国からEUへの移転を決めていることも多く(野村ホールディングスは中核拠点をフランクフルトに加え、融資拠点をパリに移転とFTが報道)、ハードブレグジットとなった場合には数年単位の影響が残ることは間違いないでしょう。ハードブレグジットの場合のメリットも考え、蓋を開けてみないとわからないという意見もありますが、市場関係者の反応としてはポンドを中心に欧州通貨売りという地合いが続きやすいと考えざるを得ないと個人的には考えています。

テクニカルな面から日足チャートをご覧ください。

今週の週間見通しと予想レンジ

*日足チャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

10月第1週のユーロは、9月上旬に抜けられなかった1.15台前半下抜けしたことで上値の重たい展開となってきました。材料的にも引き続きユーロ売りが入りやすい流れではありますが、9月高値からの下げのスピードがやや速いこともあって、チャート的には調整の買い戻しが先行しやすいと思えます。ただ、その場合でも9月高値1.1815と先週やsyね1.1465との38.2%戻しとなる1.16水準(青のターゲット)では売りたい向きが出てくると思われます。

また、次の下げのメドとしては8月安値1.1302と9月高値との78.6%(61.8%の平方根)押しとなる1.14台前半がターゲットとなりますが、8月安値ではトランプ大統領が通貨安誘導をしているとの非難もあったことから、1.13台はいまだに警戒感も残るといったところでしょうか。今週は、1.1450レベルをサポートに1.1600レベルをレジスタンスとする週を考えておきます。

今週のコラム

本文でハードブレグジットの懸念を言っている割にはポンドは強いではないか、と思われる方も多いかと思います。実際に先週後半はユーロが下げている中で、ポンドは上げていますので、対比すると尚更かと思いますが、これはイタリアの財政問題がユーロにとっては比較的新しい悪材料であるのに対して、ブレグジット協議の難航は長く続いているテーマであるという面が大きいためです。

さらにテクニカルにもユーロポンドの水準で8月に上昇トレンドを下回ったことに続いて、先週の下げで、7?9月の安値を下回ったということが大きいと考えています。ただ、ユーロの下げは対ドル以上に対ポンドで速くテクニカルなターゲットにもかなり近づいていることには注意が必要です。次の日足チャートをご覧ください。

今週の週間見通しと予想レンジ 2枚目の画像

ユーロポンド日足

4月安値と8月高値の61.8%推しが0.8804で先週金曜にすでに達成しています。78.6%(61.8%の平方根)押しの0.8723(それぞれ赤のターゲット)も残っていますので油断はできないものの、それでもすでに残すところ60pips程度となっていますし、8月高値から9月安値その後の戻しを3点とする逆N波動を考えても100%エクスパンションが0.8745(青のターゲット)とかなり近い水準に来ています。

あと若干の下げの可能性は残すものの、ユーロポンドが下げ止まったあたりからポンドの次の下げが始まる可能性が高いと思いますので、ユーロドル、ポンドドル、ユーロポンドと3つの通貨ペアの比較も1日1回程度は見ておくとよいと思います。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

10月8日(月)
**:** 東京市場休場、NY市場休場
15:00 ドイツ8月鉱工業生産

10月9日(火)
15:00 ドイツ8月貿易収支
22:30 フランス中銀総裁講演

10月10日(水)
15:45 フランス8月鉱工業生産
17:30 英国8月貿易収支、鉱工業生産

10月11日(木)
08:01 英国9月住宅価格指数
15:45 フランス9月CPI改定値
20:30 ECB理事会(13日)議事要旨公表
**:** G20(〜12日)

10月12日(金)
15:00 ドイツ9月CPI改定値
**:** IMF総会(〜13日)

10月14日(日)
 **:** バイエルン州選挙

前週のユーロレンジ

       始値  高値  安値  終値

ユーロドル 1.1606 1.1625 1.1463 1.1520
ユーロ円  132.07 132.46 130.60 131.00

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週のユーロ

10月1日(月)
ユーロドルは、ドル高地合いの中でブレグジットに絡んだアイルランド問題でポンドが上下する動きに沿ってユーロも上下する動きを見せましたが、全般的なドル高の動きも手伝ってNY市場では1.1564レベルまで下押しして安値圏での引けとなりました。

10月2日(火)
ユーロドルは、前週からのイタリアの財政問題とブレグジットに関して英国とアイルランドとの問題が上値を抑える結果となりました。イタリアでは与党の一角を占める同盟顧問がイタリアリラ復活が全ての問題を解決するとも述べ、今後の懸念材料となる可能性も出てきました。欧州市場前場には1.1505レベルと大台目前の水準まで売られましたが、その後はドル円同様にドル売りの動きに追随し、1.15台半ばまで戻して引けました。

10月3日(水)
ユーロドルは、東京市場でのイタリアの財政関連ニュースに一時的にユーロ買いの動きとなりましたが、後場には反転下落し海外市場に移ってからは財政問題については今後の懸念のほうが大きいと考える参加者が増える中、EUからもイタリア予算案は財政規律違反といったコメントも出て下げ足を速める結果となりました。NY市場では引け間際に1.15の大台を割り込み一時1.1464レベルの安値をつけ若干戻して引けました。

10月4日(木)
ユーロドルは、ドルの動きとしてドル円同様の展開となりました。欧州独自の材料としては引き続きイタリア予算とEU財政規律の問題が欧州委員会でも問題視されました。その後はドル売りの動きに引っ張られて1.15台半ばまでNY市場では買い戻しが見られましたが、引けにかけては上値も重く押しが入ってのクローズとなりました。

10月5日(金)
米国雇用統計自体の注目度が低いこと、月曜が東京、NY市場とも休場となることもあって低調な取引が続きました。ユーロドルは米国雇用統計に前後して米金利の上下とともに振れる神経質な展開も見られましたが、ほとんどの時間帯を1.15近辺での狭い値幅での取引に終始した一日となりました。

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