今週の週間見通し
先週のドル円は、水曜NY市場から木曜NY市場にかけての114円台半ばへ行って来いの動きを除くと113円台後半で方向感のはっきりしない値動きを続けた週となりましたが、相変わらず下がったところでは買いたいという向きと、日米通商協議をはじめとする米国の通商政策に少なからず為替の水準も考慮されているであろうとの懸念による綱引きが続いています。
特に現在の水準は、7月にトランプ大統領によるドル高けん制発言が飛び出た113円台前半を明確に上抜けていること、またユーロドル等の他の主要通貨でも改めてドル高の動きとなってきていることから、水準という点ではいつ調整が入ってもおかしくはないでしょう。また11月6日には米国中間選挙が行われますが、10月初めの時点での予想では上院は共和党が過半数を維持するものの、下院では民主党が過半数を取る可能性が高いという状態です。
下院で過半数を取られると、今後のトランプ政権にとって何を提出しても民主党に反対されるということに繋がりますので、何らかのテコ入れでもって下院でも過半数を維持したいとホワイトハウスでは考えるはずです。昨年決まった減税は経済への効果は大きいものの、既に材料としては過去のものという扱いでしょうから、混乱を極める米中間は別としてNAFTAに続いて日米間か米欧間かどちらかの成果を見せたいと考えているのではないかというのがこれまでも書いてきた通り個人的にドル売りにつながりやすいと思わせる材料です。
また、成果を見せられるかもしれないもうひとつの材料は米朝間の協議進展で、ポンペオ国務長官が訪朝して早期の第2回米朝首脳会談開催に目処をつけてきたようです。この第2回会談で米朝間の終戦と平和条約につながるような水面下での交渉成功がアピールできれば、これは大きなポイントとなりそうですが、通商協議同様にそう簡単に進むとも思えず、中間選挙に有利に働くために10月中にとなると難しいと思います。
中間選挙では多くの場合、野党が頑張って与党が議席を選らすのですが、その差が少ないと言われる今回の選挙(下院は共和党が23議席失うと逆転)で果たしてこのまま共和党がやや劣勢のまま進むのか、今月いっぱいは注視していきましょう。
さて、相変わらずのドルの強さですが、米金利上昇を織り込んでも強い米国株式相場、そしてその恩恵もあってバブル崩壊後の高値圏へと水準を切り上げる日経平均、ほぼこれだけしか材料が無いのではないかと考えていたのですが、ちょっと気になる記事が今朝8日の日経新聞1面にあります。「ドル不足 調達金利上昇 / 米利上げ・新興国不安 邦銀、10年ぶり水準」というタイトルで、実際の米金利に対する上乗せ金利が0.75%程度にまで拡大しているという記事です。
現在の円金利はゼロですから、単純に米金利(2.4?2.5%)で調達できれば何らコストはかからないはずですが、9月の半期末時点では3.15%まで上がったとのこと。通常のマーケットでは当然金利市場で調達しますが、ドル高・円安傾向が続いている現在のような相場環境で期末を控えた金融機関が保険のためにドルを為替市場で買ってドル資金として持っておくという可能性もゼロではありませんし、ジャパンプレミアムが取り沙汰された際には実際にそのような動きがありました。
9月末に向けて調達の保険でドルを買った動きが、ドルを底堅い動きにしていた可能性も考えると、10月以降はよくわからないけどドルが強いという要員のひとつは薄まるのではないかという気もします。最大の要素は米国の政治ということになりますが、テクニカルにも先週の高値はいったんいいところではなかったかと思えます。日足チャートをご覧ください。
いくつかのターゲットが示されていますが、ピンクの水平線は2017年11月高値の114.74、そして青のターゲット114.84は5月下旬の安値を起点とした上昇N波動による100%エクスパンションです。どちらも115円の大台手前の水準に位置していますが、先週高値の114.54(4日早朝に114.55)は誤差の範囲と言っても問題は無い水準です。
雇用統計後はドルが新値追いをしにくいということも併せて考えると今週はいったん目先の高値を見た後の調整局面に入りやすと見ています。今週は、112.75レベルをサポートに114.25レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2018年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。
10月8日(月)
**:** 豪州夏時間開始
**:** 東京市場休場、NY市場休場
10:45 中国9月MarkItサービス業PMI
15:00 ドイツ8月鉱工業生産
18:30 (セントルイス連銀総裁講演)
10月9日(火)
08:50 本邦8月国際収支(貿易収支)
09:30 豪州9月NAB企業景況感
15:00 ドイツ8月貿易収支
22:30 フランス中銀総裁講演
23:35 NY連銀総裁講演
26:00 (フィラデルフィア連銀総裁講演)
10月10日(水)
15:45 フランス8月鉱工業生産
17:30 英国8月貿易収支、鉱工業生産
21:30 米国9月PPI
23:00 米国8月卸売売上高・在庫
23:30 原油週間在庫統計
25:15 (シカゴ連銀総裁講演)
10月11日(木)
07:00 アトランタ連銀総裁講演
08:01 英国9月住宅価格指数
15:45 フランス9月CPI改定値
20:30 ECB理事会(13日)議事要旨公表
21:30 米国9月CPI
21:30 米国新規失業保険申請件数
**:** G20(〜12日)
10月12日(金)
**:** 中国9月貿易収支
15:00 ドイツ9月CPI改定値
21:30 米国9月輸入物価指数
22:30 (シカゴ連銀総裁講演)
23:00 米国10月ミシガン大消費者信頼感速報値
25:30 アトランタ連銀総裁講演
**:** IMF総会(〜13日)
10月14日(日)
**:** バイエルン州選挙
前週の主要レート
(週間レンジ)
前週の概況
10月1日(月)
ドル円は一段高となった日経平均株価とともに円安が進みました。NAFTAにおける米国とカナダの合意もありNYダウが先物市場で大幅高となったこともリスクオンの動きを強め、東京後場には昨年11月以来の114円台に乗せる動きを見せました。その後もドル円は高値圏でのもみあいを続け強い地合いのまま引けました。
10月2日(火)
ドル円は、114円台が定着できず日経平均株価が高値圏から反落する動きとともに、東京市場では利食いを中心とした調整が入りました。海外市場に移ってからはNYダウこそ史上最高値を更新する動きとなったものの米金利が下がったことや、欧州の悪材料を背景としたユーロ円の売りがリスクオンを弱めました。NY市場では昼前に113.53レベルまで水準を下げた後に若干の戻しが入って引けました。
10月3日(水)
東京市場のドル円は前日の下げ局面でも買いが湧いてくるという展開が続いたため、上値の重たい株式市場には目もくれず円売りの動きが先行しました。仲値すぎにはイタリアの財政赤字縮小計画の記事にユーロが対ドル、対円で上昇し、ドル円も底堅い展開を続けました。その後欧州市場までは目立った動きは無かったものの、NY市場に入り月曜高値を上抜けるとストップオーダーも巻き込みながら一段高、引けにかけては一段高となり114.54レベルでの高値引けとなりました。
10月4日(木)
ドル円は反落の一日となりました。早朝相場ではドル円はNY市場の高値を1銭更新したものの後が続かず、その後は日経平均株価の下げとともに直近の上昇に対する調整が目立ちました。その後、東京後場から欧州市場前場まではもみあいとなっていましたが、NY市場に入りダウが売られ日経平均先物も続落、ドル円は113.63レベルまで下押しした後、引けにかけてはダウの買い戻しとともに114円近くまで戻して引けました。
10月5日(金)
米国雇用統計自体の注目度は低くなってきたものの、月曜は東京、NY市場が休場となることもあって取引自体が手控えられていました。前日のドル売りが強かったことから東京、NY市場ともに114円台乗せをトライしたものの定着せず、その後はダウの下げとともに113.56レベルまで水準を切り下げ、引けにかけてはやや戻して引けました。
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