今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロドルは週前半こそユーロ買いが目立ち、火曜には1.1746レベルの高値をつけましたが、その後はユーロ売りへと反転しユーロ円の売りも加わって連日のユーロ安が週末まで続きました。特に、先週指摘したトライアングルの下抜けが見られたことで、テクニカルにユーロ売りが強まった面が大きかったと考えられます。金曜には1.1560レベルまで水準を下げ、1.15の大台を視野に入れ始めています。
今週は、材料的には静かな週となっていて、欧州からの経済指標もあまり重要度の高いものが見られません。ドル材料の米国経済指標も月初の一連の重要指標発表が終わり狭間の週です。欧州関連では先週のイタリア紙に現政権はEU離脱の国民投票の実施は目指さないとの記事が出ましたが、国民も政権内の一部も離脱を支持する層がそれなりにいることから、このような記事が出たとも考えられます。
5つ星も同盟も連立政権となる前には、もっと過激な政策を掲げていましたので、今後の方向性の変化には注意が必要です。またイタリアの現政権は、EU内の極右政権との連携も強め、来年実施される欧州議会選挙での愛国派(ポピュリズムの連合)の議席増を狙っています。連立発足のためいったん抑えていたポピュリズムの流れが改めて強まる可能性は十分にあり得るところです。
さらにイタリア関連では、先週コンテ首相が予算案を9月にも公表すると話しましたが、同国予算がEUの緊縮財政の規律(財政赤字をGDPの3%以内に抑える)を守れないのではといった懸念の声もあり、こちらも連立前の両党の政策から来ていると言えるでしょう。連立政権は最低所得補償制度や減税を考えていましたが、これらを実施するにも財政赤字ルールの見直しを求めています。こうした思惑からイタリア国債の利回りが上昇(価格は下落)する動きも強まり、ドイツ国債との利回りスプレッドも広がってきています。
短期的にどうこうといった話ではないものの、ユーロがテクニカルに下げやすい流れとなっているこの時期に、改めてイタリア政治がユーロの悪材料とされてきたことは注意が必要でしょう。もし来年のEU議会選挙(5月)でポピュリズムが多数派ということにでもなるとEUの枠組み自体が変化する方向も考えなくてはならないでしょうから、いったん落ち着いていたと思えるEU各国の国内政治についても再検討を要しそうです。
ごちゃごちゃと書きましたが、イタリアの国内政治をきっかけとしたユーロ安地合いが今週も続きやすいという前提の話でした。
テクニカルな観点から日足チャートをご覧ください。
ユーロドル日足チャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
2週連続で指摘した三角もちあい(ピンクのトライアングル)は、教科書通りに下抜けるコンティニュエイション(継続)パターンとなりました。先週金曜のコラムでも急ぎお知らせしたことと重なりますが、それまでのトレンドを再開、継続するチャートパターンです。今回の場合、それまでのトレンドは4月下旬から5月下旬までの下げとなりますので6月安値1.1508を割り込み、これまで底堅かった1.15の大台を下抜ける可能性が高いパターンです。
中期的なターゲットとしては、2017年安値1.0340と2018年高値1.2555との半値押しとなる1.1448(赤のターゲット)が、現在ユーロが目指している水準と言えます。トランプ大統領がドル高牽制発言を繰り返すリスクはありものの、EUが抱える問題点とテクニカルな観点から今週か来週にも一度は半値押しを見る流れがあると考えています。今週の可能性も含め、1.1450レベルをサポートに、1.1625レベルをレジスタンスと下方向に余裕ある値動きを考えておきます。
今週のコラム
今週はユーロ円のチャートから現在のターゲットとなる水準を見て行きましょう。
ユーロドルで下方向を考えていることに加え、ドル円でも週報に書いた通り下げるリスクが高いと考えていますので、ユーロ円も下げの流れを考えることとなります。
ユーロドルほどきれいなパターンでは無いものの、ユーロ円は上昇ウェッジ(くさび形、青のラインで示した形)の下抜けによる一段安を想定すべきチャートとなっています。
そうすると5月安値124.62と7月高値131.99のフィボナッチ・リトレースメント(赤のターゲット)と、7月高値からその後の押しと戻しを考えた逆N波動によるフィボナッチ・エクスパンション(青のターゲット)の2つを考えることとなります。
半値押しが128.50で100%エクスパンションが128.31と一致し、61.8%押しが127.44で127.2%(161.8%の平方根)エクスパンションが127.54とほぼ同水準にあります。現状のユーロ円は上値の重たい展開を継続しやすく、まずは128.30、次に127円台半ばをターゲットとする流れにあると考えておくとよいでしょう。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。
8月6日(月)
15:00 ドイツ6月製造業新規受注
8月7日(火)
15:00 ドイツ6月貿易収支
15:45 フランス6月貿易収支
8月8日(水)
特になし
8月9日(木)
08:01 英国7月住宅価格指数
17:00 ECB月報公表
8月10日(金)
15:45 フランス6月鉱工業生産
17:30 英国4〜6月期GDP速報値
17:30 英国6月貿易収支、鉱工業生産
前週のユーロレンジ
上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
前週のユーロ
7月30日(月)
ユーロドルは東京市場では動かなかったものの欧州市場以降順調に水準を切り上げる動きとなりました。欧州市場に入りなかなか抜けきれなかった1.1665レベルをつけるとストップオーダーを巻き込みながら上昇、その後も実需買いと欧州長期金利上昇を支えに1.17台前半まで買われて高値圏での引けとなりました。
7月31日(火)
ユーロドルは、東京市場ではユーロ円の買いに引っ張られてユーロ買いの動きとなりました。海外市場に移ってからもユーロ買いの動きが続きNY市場の朝方には1.1746レベルの高値をつけましたが、その後はドル買いの動きに引っ張られて急反落。引け間際には1.1682レベルまで水準を切り下げて安値引けとなりました。
8月1日(水)
ユーロドルは、ドル円のドル買いに引っ張られる形でユーロ売りが先行してのスタート。海外市場でもドル円を見ながらのドルの動きに追従する展開を続けました。しかしNY市場に入ってからは実需のユーロ売りが出たことと、またドル円の下げがユーロ円の売りにもつながり1.16台半ばへと押して安値圏での引けとなりました。
8月2日(木)
ユーロドルは、東京市場ではユーロ円の売りが上値を抑え下げている間に、6月からのサポートラインを割り込みトライアングルを下抜け、テクニカルに一段安の可能性が高いチャートとなりました。欧州市場では英中銀の利上げ直後の上下こそ無かったものの、その後のポンドの下げとともにユーロもじり安となり、NY市場ではドル円でのドル買いもユーロの上値を抑える結果となりました。引けにかけては1.1582レベルの安値をつけ安値引けとりました。
8月3日(金)
ユードロドルは欧州市場序盤に弱めの経済指標に反応して1.1562レベルまで水準を下げたものの急反発、1.1560水準にユーロ買いオーダーも見え、雇用統計前に日中高値の1.1611レベルをつけました。その後も上下に振れる神経質な展開を続け、NY市場前場には1.1560ワンタッチで再び反発して1.16台乗せ。引けにかけては安値圏へじり安の動きとなりユーロの上値の重さを感じさせる週末クローズとなりました。
ディスクレーマー
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