今週の週間見通し
先週のドル円は、日銀会合において金融政策が微調整されたこと、また相変わらず留まるところを知らない米中間の貿易摩擦、この2つのトピックスが材料視された一週間となりました。日銀の金融政策は、長期金利の変動をこれまでの2倍程度まで許容すること、フォワードガイダンスにより大規模緩和を約束することがキーとなっていますが、結果としては緩和継続による円安の動きにつながりました。
会合後の動きは事前に長期金利上昇の容認のみがクローズアップされていたことによる反動もあったと思いますが、黒田日銀総裁2期目が始まってわずか4か月程度で、これまでの金融政策を否定するような動きは考え難いことでした。しかし、長期金利の変動を実際の市場の値動きに合わせつつ、フォワードガイダンスで緩和を約束するといった今回の決定内容は見方によっては、これまでの緩和政策がワークしにくくなってきたことに対する対症療法的なものと言えるでしょう。物価の見通しも下方修正され、2018年度末時点で何も変わっていない時に次の一手はどうするのか、正直なところ日本国民として怖い面もありますが、緩和政策の限界が見え始めてきたと思います。
次に米中貿易摩擦ですが、双方が追加関税の繰り返しで、このままで行くと中国発の景気後退が米国に波及し、それが世界全体に広がる懸念も考えなくてはなりません。中国を代表する上海総合株価指数は、2015年の中国株暴落(チャイナショック)時に近い水準で低空飛行していて、現在の米中間の摩擦が続くといつ割り込んでもおかしくない状況です。米国株は今のところ好決算にも支えられて堅調な動きとなっていますが、ダウは2月の急落以降25,500ドル水準で妙に上値が抑えられる流れが繰り返されています。今後も米中間の摩擦が激化すると米国経済もどうなるか不安が残ります。
材料的には中長期的なものではありますが、どうもドル円に関しては積極的にドルを買いにくい流れが続きそうな印象です。
テクニカルにはどうか、日足チャートをご覧ください。
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
先週も書いたように3月安値(=年初来安値の104.64)からのドル買いトレンドは終わったと考えていますが、長期レジスタンスの上抜けがダマシとなったように、中期サポートの下抜けもダマシのようなトライばかりが続き、いまだ下抜けしたとは言えないチャートとなっています。現在は5月安値からのサポートライン(青)を明確に下抜けるかどうかを見ながら、上がったところは売りというスタンスがよさそうです。
この上がったところですが、7月高値と先週高値を結んだレジスタンスライン(水色)が目先は戻り売りの水準と言え、もしこの水準(現在111円台後半を下降中)さえトライしきれないとなると、いよいよサポートラインをトライし、110円の大台をトライする可能性が出てくる流れが予想されます。今週はその前段階、上値は重いものの明確にトライしきれないという週を想定し、111.75レベルをレジスタンスに、110.50レベルをサポートとする一週間を考えておきます。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2018年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。
8月6日(月)
**:** 豪州市場休場
15:00 ドイツ6月製造業新規受注
8月7日(火)
13:30 豪中銀政策金利発表
15:00 ドイツ6月貿易収支
15:45 フランス6月貿易収支
8月8日(水)
08:50 本邦6月国際収支(貿易収支)
**:** 中国7月貿易収支
8月9日(木)
**:** シンガポール市場休場
06:00 NZ中銀政策金利発表
08:01 英国7月住宅価格指数
10:30 中国7月CPI・PPI
17:00 ECB月報公表
21:30 米国7月PPI
21:30 米国新規失業保険申請件数
23:00 米国6月卸売売上高・在庫
8月10日(金)
08:50 本邦4〜6月期GDP速報値
10:30 豪中銀四半期金融政策報告公表
15:45 フランス6月鉱工業生産
17:30 英国4〜6月期GDP速報値
17:30 英国6月貿易収支、鉱工業生産
21:30 米国7月CPI
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
前週の概況
7月30日(月)
ドル円は日銀会合、FOMCと日米双方の金融政策決定を前に様子見の1日となりました。月末を前にしていることも動かない要因となり、1日の値幅は30銭にも満たず終日もみあいを続けました。
7月31日(火)
ドル円は日銀会合に注目が集まり、今回の会合ではいくつかの変化が見られました。長期国債の弾力的な買い入れで金利上昇の許容幅を広げるいっぽうで、フォワードガイダンスによって当分の間は現在の低金利維持を約束したあたりが目新しいところです。当初は長期金利上昇の可能性で円高に振れ一時110.76レベルまで円高となりましたが、その後はフォワードガイダンスに反応し全体として現在の大規模緩和を継続すると判断できることから急速に円安となりました。総裁会見後の海外市場でも円安の流れが続き、NY市場ではダウ上昇によってドル全般に買いが入ったことから111.96レベルまで高値を切り上げましたが、112円台の売りが見えたことからやや押しての引けとなりました。
8月1日(水)
東京市場のドル円は前日の日銀会合後の底堅い動きに加え、株式市場が堅調な動きとなったことからリスクオンの円売りが目立ちました。後場には112円台のドル売りオーダーもこなしながら112.15レベルまで水準を切り上げましたがそこまで。海外市場に移ってからは一転株価が下げに転じる動きに加え、NY市場ではFOMCが予想通りだったこと、トランプ大統領が中国への関税を指示したことから引けにかけてはじり安となり、111.39レベルの安値をつけた後にやや戻しての引けとなりました。
8月2日(木)
ドル円は前日FOMC後のドル売りの流れを継続しドル売りが先行してのスタートとなりました。こちらも前日のトランプ大統領による中国への関税指示は株式市場で嫌気され、日経平均、ダウ先物ともに大幅安、その動きを見て更にリスクオフの動きが広がり、NYの朝方には111.32レベルの安値をつけました。しかし、NY市場では主要株価指数が大幅高となり、ダウは夜間取引で下げた分を全て取り返す動きを見せ、ドル円もリスクオフの巻き返しから東京前場の高値圏まで買い戻されてのクローズとなりました。
8月3日(金)
東京市場から欧州市場まではドルが底堅い動きを続けました。前日NY後場にドル円が反発した動きを続けたこと、欧州市場序盤にユーロ売りが強まったことから一時111.87レベルの高値をつけ、その後は雇用統計待ちとなりました。雇用統計ではNFPが予想よりも弱かったことに加え、その後発表されたISM非製造業指数も弱かったことからドル売りの動きとなり、111.11レベルの安値をつけ、引けにかけて若干買い戻しが入って引けました。
ディスクレーマー
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オーダー/ポジション状況
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