トルコリラ円レポート月曜版
まず、先週の振り返り(ショートコメント)ですが、トルコリラ円は戻り売りを考え「24.70レベルをサポートに、25.70レベルをレジスタンスとする流れ」を見ていました。実際のレンジは、安値が24.47レベル、高値が25.44レベルと、予想よりも更にトルコリラ安が進み史上最安値を更新する動きとなりました。米金利上昇がトルコリラ安の主因ですが、トルコ材料もいくつか出ています。
先週のトルコリラは、週初からエルドアン大統領が「トルコ中銀は大統領の利下げ要求に従わなければならなくなる」といった内容のインタビュー発言を行い、緩和政策によりインフレ率低下を実現できると考えている大統領は、あらためて中銀の引き締め政策を牽制しました。トルコ中銀は4月に後期流動性貸出金利を13.5%へと引き上げ市場からは評価を得ていたものの、その後も通貨安は止まらず輸入物価上昇により国内のインフレ率は高止まっています。
このエルドアン大統領の中銀独立性を無視した発言が出たことで先週も史上最安値更新のスタートを切りました。トルコ中銀は16日に通貨安防衛のために必要な措置を取るとのコメントを発表し、一時的に反発したものの、その後は週末に向け再びじり安の展開を辿り対ドルでは史上最安値を更新しての週末クローズとなりました。
またエルドアン大統領は、上記インタビューと時と場所が同じロンドンにおいて機関投資家向けに自らトルコへの投資の安全性を説明しましたが、集まった投資家からも金融緩和でどのように通貨安とインフレを止めることが出来るのか、経済学を無視した政策では無理だと、投資家からも厳しい発言を浴びせられています。
今週のトルコは、いくつかの経済指標が発表されるものの、消費者信頼感や設備稼働率など、どちらかといえば目立った材料とはなりにくいものばかりです。そうした中で6月の選挙に向け大統領は着実に国内のメディアを掌握する動きに出ていて、先週も大統領寄りの企業がトルコ国内の大手メディアを買収し、政権を批判する記事に対する圧力をかけています。
トルコでは先の国民投票でエルドアン派が勝利したものの、その後の国内のインフレや通貨安、さらには留まるところを知らないエルドアン大統領の強権政治に対する不満も募っていて、大統領選では1回目の投票で過半数を取れない可能性が指摘されています。その場合に、野党連合が対立候補支持で団結すればエルドアン大統領ではない、野党党首が誕生する可能性も指摘されています。世論調査結果でもエルドアン大統領の支持率は45%を切ったとのことで、残り1か月の動向次第ではエルドアン大統領が敗北する可能性も出てくるかもしれません。選挙関連ニュースにもそろそろ注意が必要になってきました。
さて、材料的にはトルコリラを買う材料がなかなか見当たりません。週明けのドルトルコリラもいきなり史上最安値を更新してのスタートを切っています。あらためてテクニカルなターゲットを示しておきましょう。前にも見た月足10年チャートです。
今回はいくつかの分析を追加しましたが、トルコリラ安の流れは10年前の2007年高値と2014年高値を結んだレジスタンスラインと、それに平行に引いた下降チャンネル(ピンクの太線)の中での動きを続けているという前提で考えます。
すると、前回も示した2007年高値から2011年安値への下げ、その後の2013年高値への戻しを各点とした逆N波動によるフィボナッチ・エクスパンションは50%が26.85(到達済み)、61.8%は19.87となっていることがわかります(赤のターゲット)。また、もうひとつの逆N波動を2014年高値を起点に2017年1月までの下げ、その後の2017年9月への戻しを各点として計算すると、こちらは50%エクスパンションが19.91となります。
前者も後者も19円台後半、ほぼ20円の大台をターゲットとして示している点には注意が必要です。25円の大台もあっさりと下抜けしたことを考えると、長期的なターゲットとしては20円という水準をも視野に入れておく必要がテクニカルにはあるということになります。選挙結果でエルドアン大統領が勝っても負けてもトルコリラが売られるという可能性も、イタリアの連立合意までの流れを見ていると起きても不思議ではありません。
次にいつもの4時間足チャート(上からトルコリラ円、ドルトルコリラ、ドル円)をご覧ください。
トルコリラ円、ドルトルコリラ、ドル円四時間足
こちらを見ると、短期的にも対円対ドルともにトルコリラの下降トレンドは変化が無さそうです。対円では3週間前の高値から引いたレジスタンスラインとそれに平行に引いた下降チャンネル(ピンクの平行線)の中での推移と考えることが妥当に思えます。今週も上値の重たい展開を考えざるを得ず、24.00レベルをサポートに、25.00レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。
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