トルコリラ下げ加速、連日の史上最安値更新(5/23夕)

5月に入りほぼ一方向で値を下げているトルコリラですが、本日は一段と下げを加速しています。

トルコリラ下げ加速、連日の史上最安値更新(5/23夕)

トルコリラ下げ加速、連日の史上最安値更新

5月に入りほぼ一方向で値を下げているトルコリラですが、本日は一段と下げを加速しています。昨晩トルコリラが24円を割り込む動きとなった事で、今朝7時過ぎにFX業者のロスカットルール発動による本邦の個人投資家の損切りと見られる大量の売りが出てトルコリラは一気に22円台に下落。対ドルでも4.81を突破しました。

その後のアジア時間では一旦は落ち着いたものの、夕刻欧州勢参入とともに一段安の様相となり、東京時間18:30までに対円で22.29、対ドルでは4.9253の安値をつけ売りが売りを呼ぶ展開となっていて、週明けからの下落幅はいずれも8%を越えています。

もともと米ドルの長期金利の上昇による新興国通貨売りに始まった今回のトルコリラの下落ですが、14日にロンドンでエルドアン大統領が有力機関投資家向けに開いた経済政策説明会で、景気刺激のために金利引き下げを実施する事で物価上昇と通貨安に歯止めがかかるという珍奇な説を主張、通貨安と10%を越えるインフレに歯止めをかけるための中銀の緊急利上げを期待する市場と真っ向から対立した事で通貨安に拍車がかかりました。
翌15日には6月24日の大統領選以降経済への関与を強める意向を示し、中銀への恫喝ととられかねない発言も出た事から、中央銀行の独立性に対する危機感が広がり、昨日22日にはフィッチがこれを問題視するステートメントを出しています。トルコ中銀は16日には口先介入で為替相場を牽制一旦は反発の兆しを見せたものの、具体的なアクションはおこせておらず、結局無策を見破られ、トルコ売りが加速する形となりました。

一昨年のクーデター未遂以降急速に独裁的傾向を強めているエルドアン大統領は、戦後トルコの伝統である世俗主義を捨て、オスマントルコの再興を目指しているかのように見えます。昨年には首相職を廃止し大統領の権限を大幅に拡大する憲法改正を実施、そして今回1年以上前倒しした大統領選と国会議員選挙で大統領制への移行を早め更なる権限強化を図るつもりのようです。トルコは構造的に外貨建て債務が大きく自国通貨安は、債務の実質的拡大と輸入物価の上昇を通じて経済的な危機を強める事となります。

本邦では2007年頃90円台だった頃からトルコリラは高金利通貨として根強い人気を博してきました。その後リーマンショック時に大きく値を下げて以降、対円でトルコリラは70円台を一度も回復できていません。金利差を狙っての比較的低レバレッジでのトルコリラ買いの長期ポジションや、一時証券会社が盛んに販売したトルコリラ建ての債券等の商品もさすがにこの水準では取引の維持が難しくなっているものと想像され、今朝のロスカットの動きは気になるところです。

エルドアン大統領と与党AKPが来月選挙に勝利する可能性は高く、当面トルコリラ反発の材料は見当たらない一方で、強権的な内政、外交には内外の不満も大きく、最近でも19日にエルドアン暗殺計画の存在が伝えられたのに対し副首相が「エルドアン大統領は死の恐怖におびえるような人ではない」と強気の姿勢を示すなど、情勢は不安定です。

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