ドル円 金融市場全般の不安リスクが重石(2月第二週)

景気の先行き感が強い中での米長期金利上昇なら日米長期金利差拡大でドル高円安へ反応するのが定石であり、2016年12月への米10年債利回り上昇期は円安ドル高であった。

ドル円 金融市場全般の不安リスクが重石(2月第二週)

【概況】

2月2日の米雇用統計が良好だったことをきっかけとして米長期金利が上昇、10年債利回りが4年ぶり高水準となったことでややバブル気味に大上昇してきたNYダウが急落、世界連鎖株安となりドル円は圧された。
2月2日深夜高値110.48円から株暴落の2月6日には安値で108.45円まで下落、株安一服で8日には109.78円まで戻したが109円台後半では戻り売りにつかまり、10日未明には108.04円まで安値を更新、1月27日未明安値108.28円も割り込んだ。
9日深夜からはNYダウが反発したこともあって突っ込み警戒感から108.80円台まで戻した。週明け12日早朝には108.88円をつけたがその後は伸びず、12日夜のNYダウ続伸でも反応は鈍く、108円台中後半での推移に止まっている。

【株安の衝撃】

NYダウは2月2日に665.75ドル安、2月5日には1175.21ドル安と暴落的な下げとなった。6日は安値更新後の反騰で567.02ドル高と戻したが、8日は再び1032.89ドル安と下落した。9日は安値では前日比500ドル超の下落となり、その後の反騰で500ドル超高、引けは330.44ドル高という乱高下となった。2週間で12%強の急落は2011年8月にも見られたが、その時はリーマンショックからの上昇2年目でまとまった反動安が入ったところであり、その後は上昇再開につながっているが、月間足で高値から安値まで3000ドル近い2946.41ドル安の下落幅というのはリーマンショックの2008年10月に3000.01ドル安した時以来である。当時よりも水準が切り上がっているため、下落率としては当時の方が大きいが、2016年1月からほぼ2年間棒上げ、2009年3月から上昇9年目での記録的下落のため、この9年間の上昇に対する反動安が一挙に噴出す可能性も懸念される。

日経平均も2日に211.58円安、5日に592.45円安、6日は1071.84円安と大幅続落。7日、8日は戻したものの急落した6日のレンジ内に止まり、9日は508.24円安と下落、安値圏に止まっている。日経平均は1月23日高値からすでに13%の下落率となっているが、これは2015年8月高値から9月末にかけて20%安となり、その後に2016年2月底まで二段下げとなったときに近い。2013年5月高値から6月へ22%安、4週間の短期急落から一段高へ進んだケースもあるが、概ね2年間の上昇と、直前高値でやや行き詰まり感が発生し、かつ史上最高値を更新し続けてきたNYダウが急落した状況も踏まえれば、2015年8月下落型ないしはそれ以上の衝撃となる可能性が警戒される。

【欧米長期金利上昇基調=株安圧力が続く?】

欧州株、新興国株も急落しており、特に心配なのは上海株の急落だ。この1週間で10%を超える急落となった。2015年12月に米連銀が利上げを決定、2016年に4回の利上げ姿勢を示したが、1月の上海株暴落をきっかけとした世界連鎖株安が米連銀の追加利上げを思いとどまらせ、結局2016年12月まで追加利上げは先送りされた経緯がある。
今回の発端は米国株安であり、米国株式市場がブレーキを自ら踏んで世界連鎖安をストップさせれば、米連銀の利上げ計画も従来通りの今年3回予想を維持するかもしれないが、世界的な株安が続き、金融市場全般が不安定な状況に陥れば、2016年同様に米連銀が追加利上げへ慎重姿勢を示す可能性も考えられる。
株安はリスク回避心理を増長させて比較的安全資産とされる米長期債買いを招き、結果的に米長期金利が低下する可能性があるが、株が反発すれば長期金利が上昇してまた株高を抑え込むというジレンマに陥るかもしれない。
2月5日以降の米地区連銀総裁らの発言はNY連銀総裁の「このくらいの水準なら判断に影響ない」等の冷静を装うものが多かったが、就任したばかりのパウエル新議長にとっては心中穏やかではないと思われる。

米国の暫定予算切れにより、政府機関が一時的にまた閉鎖されたが、米上下両院が9日に包括的予算法案を可決し、政府機関の閉鎖状態」は解除された。しかし、この法案により連邦政府予算の上限は今後2年間で約3000億ドル引き上げられる。年末の大規模減税を含む税制改革法では10年間で1.5兆ドルの減税となる。さらに現在検討されている巨額インフラ投資計画では政府支出の拡大は避けられず、これらを賄うための国債増発が懸念される。
米長期債利回りは年末から上昇してきたが、一番の要因は米連銀の利上げ計画云々ではなく、これら財政赤字拡大、国債増発懸念と思われる。同じくドイツの国債増発が独長期債利回り上昇を招き、ECBの緩和終了プロセスやBOEの早期利上げ見通しが欧州長期債利回り上昇を加速させている。

【米長期金利とドル円の逆相関】

景気の先行き感が強い中での米長期金利上昇なら日米長期金利差拡大でドル高円安へ反応するのが定石であり、2016年12月への米10年債利回り上昇期は円安ドル高であった。昨年9月へのドル円下落は米10年債利回りが低下傾向を続ける中での円高であり、11月6日へドル円が戻したところも米10年債利回り上昇期に反応したものであった。
しかし、昨年12月からの米10年債利回り上昇期ではドル円が逆相関で下落している。1月中盤までは株高基調が継続している中での利回り上昇であったにもかかわらずドル円は逆相関を継続し、ドル指数も下落した。これは弱いドルとリンクした米長期金利上昇であり、日米金利差によるドル円の方向付けという定石は外れだしている。今週も株暴落とその後の株反発等に振り回されつつも米長期金利上昇基調は継続、その中でドル円も週末には108.04円まで安値を更新している。欧米長期金利が上昇ないしは現状水準で高止まりし、株価が不安定ないしは下落基調で推移する場合は年末からの逆相関を続けて長期金利上昇は株安リスク=ドル円でもリスク回避の円高という構造が続くのではないかと思われる。

【108円前後支持帯、114円台抵抗帯のボックス圏に留まれるか?】

2月9日に108.04円の安値を付け、1月26日安値108.28円を割り込んだ。このため現況は12月12日の戻り高値からの下落基調の継続中と思われるが、昨年4月17日安値108.11円、6月14日安値108.84円、9月8日安値107.32円と続いてきた108円前後の支持帯に到達しているため、9月8日安値割れ回避か安値を試してから戻しに入る可能性も考えられるだろう。
概ね5か月周期で安値を付けてきており、2016年6月24日の英国EU離脱ショック、2016年11月9日のトランプ大統領誕生ショック、2017年4月17日安値、2017年9月8日安値はおおむね5か月周期で到来しており、昨年9月底からちょうど5か月目が現在である。
しかし、9月8日安値を割り込んでさらに続落してゆく場合、凡そ5か月周期での騰落リズムから逸脱し、108円前後の支持帯からも転落して下落=円高レベルが加速する状況に入ってゆく可能性が懸念される。

【60分足 一目均衡表分析】

【60分足 一目均衡表分析】

60分足の一目均衡表では、2月8日深夜の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンから転落した。12日から13日朝にかけては横ばい推移となり、遅行スパンは実線と交錯、先行スパンには潜り込んでいる。109円乗せへと戻す場合は先行スパン突破、遅行スパンも好転してくるため109.50円にかけて戻りを試す可能性が出てくるが、108.50円割れの場合は両スパン悪化となるため下げ再開感が強まると注意する。

60分足の相対力指数は2月6日安値から10日安値にかけての間で強気逆行気味となっているので、50ポイント台ではニュートラル、60ポイント台を回復してくれば上昇再開感が強まるが、40ポイント以下での推移へ進む場合は逆行崩れから30ポイント割れへ向かう可能性が考えられる。

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは2月6日安値から3日を経過した10日未明安値でボトムを付けた可能性があるため、新たな底割れ回避中は13日から15日にかけての間へ戻しに入る可能性がある。しかし底割れからは新たな弱気サイクル入りとなるため、12日深夜安値108.434円割れを弱気転換注意、10日未明安値割れからは弱気サイクル入りとして次の安値形成期となる15日未明から19日朝にかけての間への下落を想定する。その場合は9月8日安値試しへ向かう可能性が考えられる。

以上を踏まえると、目先は戻りを試しやすい時間帯にあるので、109円超え、維持へ進む場合は109.50円前後試しを想定するが、109.25円以上は戻り売りにつかまりやすいとみる。109円台回復後の109.70円割れ、109円に到達できずに108.434円割れする場合は10日安値108.04円試しとし、底割れからは9月8日安値107.32円試しへ向かうと想定する。(了)<9:10執筆>

【当面の主な予定】

2/13(火)
08:50 (日) 1月 国内企業物価指数 前月比 (12月 0.2%、予想 0.3%)
08:50 (日) 1月 国内企業物価指数 前年比 (12月 3.1%、予想 2.7%)
09:30 (豪) 1月 NAB企業景況感指数 (12月 13 )
22:00 (米) メスター米クリーブランド連銀総裁 発言

2/14(水)
08:50 (日) 10-12月期 GDP、速報値 前期比 (前期 0.6%、予想 0.2%)
08:50 (日) 10-12月期 GDP、速報値 年率換算 (前期 2.5%、予想 1.0%)
16:00 (独) 10-12月期 GDP、速報値 前期比 (前期 0.8%、予想 0.6%)
16:00 (独) 10-12月期 GDP、速報値 前年比 (前期 2.8%、予想 3.0%)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP、改定値 前期比 (速報 0.6%、予想 0.6%)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP、改定値 前年比 (速報 2.7%、予想 2.7%)

19:20 (欧) メルシュECB理事、講演
22:30 (米) 1月 消費者物価指数 前月比 (12月 0.1%、予想 0.3%)
22:30 (米) 1月 消費者物価コア指数 前月比 (12月 0.3%、予想 0.2%)
22:30 (米) 1月 消費者物価指数 前年比 (12月 2.1%、予想 1.9%)
22:30 (米) 1月 小売売上高 前月比 (12月 0.4%、予想 0.2%)
22:30 (米) 1月 小売売上高(除自動車)前月比 (12月 0.4%、予想 0.5%)
24:00 (米) 12月 企業在庫 前月比 (11月 0.4%、予想 0.3%)
未 定 (米) ムニューシン米財務長官、2019年度予算案証言、上院財務委員会

2/15(木)
08:50 (日) 12月 機械受注 前月比 (11月 5.7%、予想 -2.3%)
09:30 (豪) 1月 新規雇用者数 (12月 3.47万人、予想 1.50万人)
09:30 (豪) 1月 失業率 (12月 5.5%、予想 5.5%)
13:30 (日) 12月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 2.7%)
17:15 (欧) メルシュECB理事、講演
19:00 (欧) 12月 貿易収支 (11月 263億ユーロ、予想 270億ユーロ)
19:45 (欧) プラートECB理事、討論会で発言
22:30 (米) 1月 生産者物価指数 前月比 (12月 -0.1%、予想 0.4%)
22:30 (米) 1月 生産者物価コア指数 前月比 (12月 -0.1%、予想 0.2%)
22:30 (米) 2月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (1月 17.7、予想 18.0)
22:30 (米) 2月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (1月 22.2、予想 22.0)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.1万件、予想 22.8万件)
23:15 (米) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 0.9%、予想 0.2%)
23:15 (米) 1月 設備稼働率 (12月 77.9%、予想 78.0%)
24:00 (米) 2月 NAHB住宅市場指数 (1月 72、予想 72)

2/15(木)
08:50 (日) 12月 機械受注 前月比 (11月 5.7%、予想 -2.3%)
09:30 (豪) 1月 新規雇用者数 (12月 3.47万人、予想 1.50万人)
09:30 (豪) 1月 失業率 (12月 5.5%、予想 5.5%)
13:30 (日) 12月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 2.7%)
17:15 (欧) メルシュECB理事、講演
19:00 (欧) 12月 貿易収支 (11月 263億ユーロ、予想 270億ユーロ)
19:45 (欧) プラートECB理事、討論会で発言
22:30 (米) 1月 生産者物価指数 前月比 (12月 -0.1%、予想 0.4%)
22:30 (米) 1月 生産者物価コア指数 前月比 (12月 -0.1%、予想 0.2%)
22:30 (米) 2月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (1月 17.7、予想 18.0)
22:30 (米) 2月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (1月 22.2、予想 22.0)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.1万件、予想 22.8万件)
23:15 (米) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 0.9%、予想 0.2%)
23:15 (米) 1月 設備稼働率 (12月 77.9%、予想 78.0%)
24:00 (米) 2月 NAHB住宅市場指数 (1月 72、予想 72)

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