今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロドルは、週前半はドイツの連立協議に時間がかかりそうとの思惑からユーロ売りが先行しましたが、週後半はECB理事会の議事要旨において早期の緩和縮小を示唆する内容となっていたことから反発し、金曜の東京市場の段階でほぼ前週末の水準にまで戻していました。
そこの出てきたのがドイツの連立協議が基本的な部分で合意したとのニュースです。週初には連立政権スタートは早くても3月、それまでにもすり合わせなくてはならないテーマが多く、最悪の場合少数与党か再選挙というネガティブな見通しまで出ていたところに、急転基本的な部分で合意したことから、連立の本協議に入ることとなりました。
CDUとSPDは、難民問題では受け入れを20万人から22万人に増やすとSPD寄り、税制は100億ユーロの減税(減税部分では両党とも同じだったが対象が異なる)について高額所得者への増税は見送りとCDU寄り、社会保障は一本化せず負担軽減に留めるとややCDU寄りと、玉虫色の合意内容ですがそれぞれの力関係を考えた妥協案を徹夜で行った努力は認めるべきでしょう。
ここに至るまで、大統領の説得や国民の早期連立期待もあり、メルケル首相、シュルツSPD党首ともに早期の連立に楽観的な見通しを示していましたが、それがようやく実現したこととなります。連立の本協議が始まり連立政権スタートにはまだ時間はかかるものの(SPDの党大会が21日、22日以降に本協議開始)、ドイツ政治を覆っていた不透明感がある程度払拭されたことで、政治面でのユーロ売りは無くなることとなります。
ただ、最悪のケースではややCDU寄りの基本合意に対して、SPD党大会で連立の本協議入りが反対される可能性もゼロではありません。そうなった場合には、改めて他党との連立、少数与党、再選挙という選択肢となりますので、今週末21日の結果を見るまでは、あまり積極的にユーロ買いに傾けることには注意が必要です。
しかし、強い欧州経済を背景としたECBの緩和縮小も含め、今後はユーロ高に動きやすくなることがメインシナリオですから、既に金曜の段階で昨年高値を大きく上抜けているものの、今週はテクニカルな観点から改めてユーロドルが目指す水準について見て行くこととします。
3年ぶりの高値ですから月足チャートを見ます。
ユーロドル月足
月足チャートは昨年のユーロ高局面でも何度か見てきたチャートですが、2014年高値と2017年安値を基準に考えます。この間の下げに対する半値戻し1.2172というターゲットを既に達成し、次の大きなターゲットとしては61.8%戻しとなる1.2602、この水準は2017年安値から2017年高値1.2092への上げ、その後11月安値の1.1554への押しを上昇N波動と考えた場合の61.8%エクスパンション1.2628とも重なります。
もう少し手前では50%エクスパンションの1.2422というターゲットも見えてきます。この最も近いところに位置する1.2422を中期的なターゲットとしながらも21日までは、急騰もしにくいというのが現在の立ち位置と言えるでしょう。
日足チャートもご覧ください。
ユーロドル日足
*日足チャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
先ほど示した月足チャートの方が大局は示していると考えられますが、短期的には日足チャートに示した上昇平行チャンネル内での動きを想定できます。また12月安値を起点に1月4日までの上げ、その後の9日までの下げを短期的な上昇N波動と捉えると、フィボナッチエクスパンションの100%ターゲットが1.2287となり、上値の目途として妥当な水準と言えます。いっぽうで、下値は昨年高値となった1.2092前後が現状ではサポートとなります。
今週は1.2080レベルをサポートに、1.2280レベルをレジスタンスとする一週間を見ておこうと思います。来週はSPDの党大会の結果如何に関わらず、動きやすい週初となりますので、週明けの動きには注意となります。
今週のコラム
ユーロドルが昨年高値を上抜ける動きとなったことで、1月5日高値136.64から133.08まで押していたユーロ円もまた強い地合いへと回帰してきました。今週はユーロ円を見てみます。
日足チャートをご覧ください。
ユーロ円日足
ユーロ円は昨年4月以降ほぼ一貫して上昇傾向を示していました。中期的には上記チャートに示した8月安値からのサポートラインとそれに平行な上昇チャンネル、補助的に10月高値と1月高値を結んだラインを考えることができます。
ユーロドル同様に今週末21日のSPD党大会の結果を見るまでは動きにくいものの、あらためて1月高値の136.64をターゲットとする流れにあることは確かです。また長期的には次の月足チャートが示すように、141.18(2014年高値149.78と2016年安値109.59の78.6%=61.8%の平方根戻し)が2015年の戻し高値と一致していることからも大きなターゲットとなることがわかります。
ユーロ円月足
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。
1月15日(月)
19:00 ユーロ圏11月貿易収支
**:** NY市場休場
1月16日(火)
16:00 ドイツ12月CPI確報値
18:30 英国12月CPI、PPI
1月17日(水)
17:55 オーストリア中銀総裁講演
19:00 ユーロ圏12月CPI確報値
19:00 ユーロ圏11月建設支出
1月18日(木)
11:00 中国10〜12月期GDP
11:00 中国12月鉱工業生産、小売売上高
17:15 ドイツ連銀総裁講演
22:30 クーレECB理事講演
1月19日(金)
18:00 ユーロ圏11月経常収支
18:30 英国12月小売売上高
1月21日(日)
**:** ドイツSPD党大会
前週のユーロレンジ
始値 高値 安値 終値
ユーロドル 1.2038 1.2218 1.1916 1.2204
ユーロ円 136.22 136.33 133.08 135.50
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。
前週のユーロ
1月8日(月)
週末にドイツCDUとSPDによる連立協議が始まったものの、双方の合意にはまだまだ時間がかかりそうであるとのニュースで朝から売りが先行。前週安値を割り込むと短期筋のストップオーダーも巻き込みながら1.1956レベルまで水準を下げ安値圏での引けとなりました。
1月9日(火)
前日の下げの余波があるところに日銀買いオペ減額によるドル円での円高の動きがユーロ円の動きとなったため、上値の重たい展開が続きました。メイ首相の内閣改造が進んでいないことによるポンド売りの動きもユーロの売りとなり、NY市場では1.1916レベルへと押した後にやや戻して引けました。
1月10日(水)
中国の米債購入減額検討とのニュースにユーロドルもドル売りで反応、1.2018レベルの高値をつけたものの、その後はユーロ円の売りが強まったことや、直近のユーロの売りトレンドもあり戻り売りが優勢、急騰分を失い若干の底堅い地合いでの引けとなりました。
1月11日(木)
欧州市場まではドル円同様にドル買いユーロ売りとなっていましたが、ECB理事会の議事要旨が早期の緩和縮小を連想させるタカ派な内容であったことから急騰。1.20の大台、前日高値を次々とこなし、高値1.2059レベルを付けた後も底堅いままでの引けとなりました。
1月12日(金)
東京市場では動意薄でしたが、欧州市場に入りドイツのCDUとSPDによる連立の基本的な部分で合意ができたことで1.21台乗せと一気に昨年高値を上抜ける動きとなりました。その後もユーロ買いは終日続き、NY引け間際には1.22台に乗せ高値圏での週末クローズとなりました。ユーロドルの1.22台乗せは2014年12月以来、3年ぶりの高値となっています。
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