概況
ECBの緩和縮小観測にユーロ上昇再開
ユーロにとって6月最終週は大きな節目の週となりました。
27日(火)にこれまでEU圏周辺のどのようなタカ派発言にも動じず、金融緩和の継続だけを念仏のように唱え続けたECBドラギ総裁が、突然ECBフォーラムの講演で「ユーロ圏の景気の回復基調に対するスタンスを保つためには政策手段の微調整はありうる」との発言。テーパリングを連想させる不意打ちに、ユーロは主要通貨に対して上昇しました。
イエレン議長が米国のインフレ上昇にやや懐疑的な講演を行ったタイミングに重なったこともあり、ユーロドルは月曜の安値1.1172から週末の高値1.1445までほぼ一方向で上昇を続け、ユーロ高値圏の1.1426で越週しています。先週のユーロ週間の変動幅は273ポイントに上りました。
「取り残される」円にユーロ円は1年4カ月ぶりの高値
一方、米欧で金融緩和縮小と金融政策の正常化の動きが注目される中、日銀と円は完全に取り残された形となったため円はほぼ独歩安。ユーロ>>ドル>円の強さ(上昇率)順となったためにユーロ円はユーロドル以上に変動し、週初の124円台半ばから128円台半ばまで週間で約4円上昇して昨年二月以来の高値をつけました。
今週の見通し
ドラギ総裁はやはり慎重に緩和縮小の織り込みを意図か?
ドラギ総裁は引き続き、ECBの緩和姿勢継続の基本姿勢を崩していないことから、先週のユーロの急伸はやや過剰反応気味とする見方もあるようです。
しかし、ドラギ総裁発言後、コンスタンシオ副総裁をはじめとする幹部が火消しに躍起になっている(風に見せている?)にもかかわらずドラギ総裁自身は発言について強い否定コメントをしていないところに、総裁が市場の反応を慎重に見極めながら徐々にテーパリングを織り込んでいこうとする姿勢が垣間見えるように思われます。
大きな潮目の変化を迎え、ユーロドルは中長期の底値圏離脱覗う動きか
とはいえ、ユーロ圏の緩和スタンスに当面の変化はなく先々の緩和縮小も段階的なものと予想され、かつ一時的に足踏みがみられたとしても、米国が景気回復でも金融政策の正常化でも数歩先行する中で、ユーロドルがこれだけ上昇するのは妥当なのかと問われれば、これはやはり妥当なのだと思います。
為替には様々な変動要因がありますが、その中でも最も重要なのは通貨間の金利の方向性と速度です。これは経済の変化の方向性そのものでもあり、一旦動き始めると容易に方向は変わりませんし、止めることもほとんど不可能です。
先週がユーロという通貨、あるいはユーロ圏の金利乃至経済のベクトルの方向が変化したタイミングであったとすれば、為替市場の反応は当然すぎるものであったと考えられます。
少し長い目で見るとユーロは、リーマンショック、もう少し近いところではギリシャ危機と長期にわたり暴落に近い下げを経験し、その後どうにか下げ止まって安値圏でのレンジ相場が続いている状況です。
そういう意味では先週のユーロ上昇の動きも、ユーロの底値圏でのレンジの上限にようやく達するかどうかというレベルです。通貨の均衡点というのは常に変化しており、適正水準の見極めは容易ではありませんが、変動率からいっても、絶対水準からいってもユーロの上値余地は決して小さいものではないと言えるでしょう。
ユーロドル予想レンジは1.1250-1.1600
週末の海外時間、1.1445の高値をつけたユーロは利益確定の売りも出て、一時1.14割れまで反落しましたが、すぐに切り返して底堅さを示しました。
チャート的には終値1.1426はブレグジットの英国民投票時の高値1.1428にほぼ近く、2015年以降2年半に及ぶユーロの長期レンジ相場の上限を形成するトレンドライン1.1452に接近しています。
今週は週末に米雇用統計を控える週で、米ドルの要因でも為替は動きそうですが、ユーロの金融政策のベクトル変化の兆候がもたらした、為替市場のセンチメントと資金の流れの変化により、ユーロはしばらく底値圏を脱する機会をうかがう動きが継続しそうです。
一旦トレンドラインを上抜けると長期停滞したユーロドルのレンジからの離脱にユーロの上昇が加速する可能性があり注意が必要です。その場合次のターゲットは2016年高値の1.1616ということになりそうです。今週のユーロドル予想レンジは1.1250-1.1600、ユーロ円は126-130を予想します。
オーダー/ポジション状況
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