ドル円見通し(週報17年7月第一週)

7月6日、3時に米連邦公開市場委員会(FOMC)の6月会合議事録が公表される。年3回とされた利上げ計画のうち既に2回を実施した。

ドル円見通し(週報17年7月第一週)

【FOMCからの上昇継続】

6月15日のFOMC直前に109円割れまで円高が進んでいたが、FOMCでの利上げ決定を受けて上昇、111円台へ乗せた。2015年12月、2016年12月、2017年3月と米連銀が利上げを決定した後は、当面のドル円にとっての買い材料消化として円高のきっかけとなってきた。しかし今回は15日、16日、翌週の19日、20日と上昇を継続、23日にかけても概ね111円台を維持、上昇基調を継続することで、これまでの利上げ決定後の反応と異なる展開となった。つまり、市場は材料消化では済まさなかったということだ。

【独、英の長期金利上昇から米長期金利も上昇】

6月27日、ドラギECB総裁発言からECBが金融緩和を終了させて出口戦略へ進むのではないかとの見方が強まりユーロが急騰した。28日にはECB副総裁がこの動きにブレーキを掛ける発言をしたが効果は一時的でユーロはその後も上昇を継続。金融緩和終了が近づいたとしてのユーロ高は域内の長期金利を上昇させ、独仏10年債利回りを上昇させ、さらに南欧の重債務国でも利回り上昇が見られた。

6月28日には英中銀のカーニー総裁が利上げ時期が接近している可能性を示唆する発言をしたことで英ポンドが上昇した。このため英10年債利回りも上昇に入った。
欧州各国の長期債利回り上昇は裁定取引および欧米全般の先行き金利上昇感となり、米長期債利回りも上昇に入った。このため、ほぼ横ばいの日本10年債利回りとの格差により、ユーロ円におけるユーロ高円安とともに、ドル円においても米長期金利上昇の影響でドル円が上昇するという反応が出始めている。

6月15日のFOMCは、直前の6月14日に米消費者物価指数等が予想外に悪かったことで利上げ決定ないしは今後のスタンスに影響が出るのではないかとの思惑から14日夜には円高が進んだ。しかし、結果的にはFOMCの利上げ計画は去年のような先送りの繰り返しとなるような軟弱なものではないと再認識されたため、これまでのように、利上げ決定を材料消化、知ったら終いとして円高へ向かわなかった。利上げ継続、金融引き締めが粛々と進むとの見方が簡単には材料消化とさせなかった。
これに加えて欧州の利上げ時期接近の市場心理が欧米の長期金利を総じて上昇させ始めた事で、ドル円が上昇基調を継続することとなったと解釈できる。

29日夜には113円に迫る112.92円をつけたが、さすがに113円到達は時期尚早としてブレーキがかかったが、30日の112円割れは切り返しており、今週は週末の米雇用統計をにらみながら、ドル高円安の継続性を試しやすい状況と思われる。

【FOMC議事録から雇用統計へ】

7月6日、3時に米連邦公開市場委員会(FOMC)の6月会合議事録が公表される。年3回とされた利上げ計画のうち既に2回を実施した。残り1回について、市場はまだ先送りの可能性があるのではないかという見方も残っているが、果たしてそうなのかどうか。また量的緩和により膨張したFRBのバランスシート圧縮計画がどのように進むのか、その金融引き締め的なインパクトはどうなのかに関するヒントはあるのか?注目される。

7月7日21時30分、米雇用統計の発表がある。前回、非農業部門雇用者数は13.8万人増と予想よりかなり少なかったが、失業率が4.3%へ改善した。その後にNY連銀総裁は「完全雇用に近い状況では10万人増で十分」とも発言している。今回は事前予想が17.9万人増、失業率は変わらずと予想されている。

2015年12月に利上げが再開され、2016年は4回の利上げ予想とされていたのに2016年1月の世界連鎖株安により利上げは大幅に先送りされて結局2016年12月の1回に終わった。その経験があるために、市場は利上げの先送り可能性期待へと傾斜しやすい市場心理で展開してきた。しかし、その楽観論が6月15日から後退し始めた。それは昨年6月の英国国民投票ショックから円安ドル高が進んだようなショック的なイベントによる基調転換とは異なるが、昨年7月から円安ドル高へと傾斜していったような、市場心理の転換があったのではないかと察せられる状況かもしれない。

【今週の展開とチャートポイント】

【今週の展開とチャートポイント】

6月30日に112円割れし切り返したが、29日高値更新には至っていない。このため、29日夜高値まで戻せないか、その前後まで上昇してダブルトップを形成して下落し、30日安値を割り込む場合は、底割れによる短期的な弱気サイクル入りとして7月5日から7日の米雇用統計にかけて下落しやすくなる。しかし30日安値割れを回避するうちは29日高値を上抜く場合も含めて7月4日から6日にかけて上昇基調で進みやすくなる。

いずれの場合も、7月6日未明のFOMC議事録、7日夜の米雇用統計の結果から大きく動きだすと仮定すれば、その前哨戦的な展開として、上下の動きも限定的なものに止まるだろう。ただし、ここまで上昇基調で推移してきているので、大幅下落へと反応するには議事録等でのサプライズ的な弱気反応が必要であり、サプライズが無ければ高値を試しやすい市場心理かと思われる。

日足チャート上のポイントは、3月10日高値と5月11日高値を結んだラインが重要な抵抗線であり、現在は113円から113.50円にかけての間に来ている。この抵抗線を突破=113.50円超えから続伸となる場合は5月11日高値114.36円試しまで上値目途が切り上がる可能性がある。
113円台に乗せても、議事録、雇用統計から下落して111円(6月14日からの戻りに対する半値押しラインに相当&200日移動平均線などの節目集中ライン)を割り込む場合は下げ再開の可能性が高まり、6月14日安値108.80円試し、さらに強烈な円高へ進む可能性が出てくるだろうと思われる。

このように、議事録、雇用統計からは大きな動き、一段高か反転下落となるのかが決まってくると思われるが、その前段階では、上下いずれも逆動への警戒感も働きやすいため、雇用統計後を先取りして先行した大幅上昇や、大幅下落へは進み難いと思う。上値抵抗113円から113.50円、下値支持線は111.0円前後までとしたレンジを基本とし、後は議事録、雇用統計からの流れに乗るスタンスで準備してゆきたいと考える。(了)<6:40執筆>

【今週の主な予定】

7月3日
トロント市場休場(建国記念日)
(日) 8:50 6月調査日銀短観 大企業製造業DI (前期 12、予想 15)
(中) 10:45 中国6月財新製造業PMI (5月 49.8、予想 49.6)
(米) 17:30 ブラード米セントルイス連銀総裁講演
(米) 23:00 米6月ISM製造業景況指数 (5月 54.9、予想 55.0)
(米) 23:00 米5月建設支出 (4月 -1.4%、予想 +0.2%)

7月4日
米国市場休場(独立記念日)
(豪) 13:30 豪準備銀行(RBA)政策金利発表 (現状 1.50%)
(欧) 21:30 プラートECB理事講演

7月5日
(中) 10:45 中国6月財新サービス業PMI 
(米) 23:00 米5月製造業受注指数 (4月 -0.2%、予想 -0.5%)

7月6日
(米) 3:00 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録公表(6月13-14日開催分)
(欧) 20:30 欧州中央銀行(ECB)理事会、議事要旨公表(6月8日開催分)
(米) 21:15 米6月ADP全国雇用者数 (5月 +23.5万人、予想 +17.8万人増)
(米) 21:30 米新規失業保険申請件数 (前週 24.4万件)
(米) 21:30 米5月貿易赤字 (4月 476.0億ドル、予想 462.0億ドル)
(米) 23:00 米6月ISM非製造業景況指数 (5月 56.9、予想 56.5)
(米) 23:00 パウエルFRB理事講演

7月7日
20カ国・地域(G20)首脳会議(於;独ハンブルグ、-8日)
(米) 8:30 フィッシャーFRB副議長講演
(米) 21:30 米6月非農業部門雇用者数 (5月 13.8万人、予想 +17.9万人)
(米) 21:30 米6月失業率 (5月 4.3%、予想 4.3%)
(米) 21:30 米6月平均時給前月比 (5月 +0.2%、予想 +0.3%)

7月8日
(米) 0:00 FRB、金融政策レポートを公表
(欧) 19:15 クーレECB理事、講演

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