景気後退懸念強く史上最安値更新、4円割れを意識か
【先週のトルコリラ】
先週のトルコリラは、ユルマズ副大統領が発表した中期経済計画におけるインフレ見通しが、トルコ中央銀行(トルコ中銀)が8月に公表していた内容よりも高いインフレが長期化する内容だったことで、景気後退懸念が強まり、史上最安値を更新した。
2日に発表された第2四半期GDPが前期比は市場予想を上回ったものの、前年比では市場予想を下回るまちまちの結果だった。一方、3日に発表された8月消費者物価指数(CPI)、生産者物価指数(PPI)がほぼ想定通りの鈍化傾向が確認できたものの、トルコリラはじりじりと下落。
5日、ユルマズ副大統領は、中期経済計画(2025年−27年)を公表し、26年までにインフレ率を1桁台に引き下げ、27年までに経済成長率を5%に引き上げる方針を示した。ユルマズ副大統領は、ディスインフレが基本目標だと強調。「計画の主目標はインフレ率を徐々に1桁台まで低下させ、ディスインフレのプロセスに沿って潜在成長率を向上させることにある」と述べた。
24年のインフレ率の予想は41.5%で、25年は17.5%、26年は9.7%。GDP伸び率の予想は24年3.5%、25年が4%、27年が5%とした。トルコ中銀が8月に公表した最新のインフレーションレポートでは、消費者物価の上昇は24年が38%、25年は14%に鈍化するとの見通しだ。
市場では、トルコ中銀のインフレ目標よりもユルマズ副大統領が発表した中期経済計画のインフレ目標が緩んだことで、金利引き締め期間の長期化に伴う景気後退懸念が強まり、トルコリラは史上最安値を更新、4.1663円まで下落した。円が主要通貨に対し総じて上昇したことも影響。
トルコリラ・円(東京時間:9月2日―9月6日)
※Investing.comの日足を参照
始値:4.2900円
高値:4.3552円
安値:4.1663円
終値:4.1820円
【先週と今週の重要指標】
※時間は東京時間
9月2日
16時00分、8月製造業PMI、前回:47.2、結果:47.8
16時00分、第2四半期実質GDP(前年比)、前回:5.3%、市場予想:3.1%、結果:2.5%
9月3日
16時00分、8月消費者物価指数(前月比)、前回:3.23%、市場予想:2.40%、結果:2.47%
16時00分、8月消費者物価指数(前年比)、前回:61.78%、市場予想:52.00%、結果:51.97%
16時00分、8月生産者物価指数(前月比)、前回:1.94%、結果:1.68%
16時00分、8月生産者物価指数(前年比)、前回:41.37%、結果:35.75%
9月10日
16時00分、7月失業率、前回:9.2%
16時00分、7月鉱工業生産指数(前月比)、前回:−2.1%
16時00分、7月鉱工業生産指数(前年比)、前回:−4.7%
9月11日
16時00分、7月小売売上高(前月比)、前回:1.7%
9月12日
16時00分、7月経常収支、前回:4.1億ドル
※予定は変更することがございます。
【今週の見通し】
今週のトルコリラは、引き続き史上最安値を更新する可能性が高まっている。高いインフレが続くことで景気後退懸念が強く意識されて、押し目を狙いにくい状況にある。失業率や小売売上高で前月を下回る数字となった場合、売り圧力が強まるだろう。
8月CPIとPPIでインフレの着実な鈍化傾向が確認できたことはポジティブと考えるが、大統領府とトルコ中銀の中期的なインフレ見通しに対する見解の相違はネガティブ要因だ。
かつてエルドアン大統領は、金利を引き下げて景気を刺激すればインフレは収束するという考えのもと、金利引き下げをトルコ中銀に強く要請し、トルコ中銀総裁を何人も更迭した経緯を持つ。大統領府とトルコ中銀に金融・財政政策のズレが生じた場合、エルドアン大統領が再び強権発動する可能性もある。中東情勢という地政学リスクに金融・財政政策に対する強権発動リスク(両方ともエルドアンリスク)が意識されれば、トルコリラの4円割れも近いだろう。
テクニカルでは、史上最安値を更新していることで、下値模索の弱い状況と言えよう。8月28日の短い下影(下ヒゲ)も先週末に吸収したことで目線は下向きである。短期的なリバウンドが入りにくい状態のためじり安の展開継続を想定する。
トルコリラ円日足
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