『史上最安値更新するも下値余地は限定的か。IMF第4条協議は良好な評価』
〇今週のトルコ円、トルコ経済先行き不透明感等からの対ドル安値更新に、週央にかけ4.18まで下落
〇その後は株価持ち直し、IMFのポジティブ評価等に週後半にかけ4.29まで反発
〇トルコ円、テクニカルには主要テクニカルポイント下抜け、売りシグナルも成立、地合い弱い
〇ファンダメンタルズは地政学リスクが重石となるも、中長期では経済の持ち直しと資金流入期待が支え
〇来週の予想レンジ(TRYJPY):4.15ー4.45
今週のレビュー(8/26−8/30)
今週のトルコリラ円相場は、週初4.24円で寄り付いた後、(1)対ドル相場の史上最安値更新(仕掛け的なリラ売り圧力→トルコリラ円連れ安)や、(2)トルコ経済の先行き不透明感(トルコ8月景気動向指数およびトルコ8月設備稼働率がいずれも前月を下回る不冴な結果)、(3)トルコ7月貿易収支(結果72.9億ドル赤字、予想72.0億ドル赤字)の赤字幅拡大、(4)中東情勢緊迫化に端を発した地政学的リスクの高まりが重石となり、週央にかけて、史上最安値4.18円まで下落しました。
もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(5)株式市場の世界的な持ち直し(リスク選好の新興国通貨買い)や、(6)国際通貨基金(IMF)による対トルコ第4条協議のポジティブな評価結果(IMFはトルコについて「昨年6月以降の経済政策・金融政策の大転換を受けて危機発生リスクが大幅に低減している」「インフレ率についても依然として高水準にあるものの鈍化サイクルが始まっている」「財政政策をもう一段引き締めれば物価が迅速かつ持続的に低下する」との見解を発表)が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値4.29円まで反発しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間8/31午前3時30分現在)では、4.28円前後で推移しております。
来週の見通し(9/2−9/6)
トルコリラを巡っては、対ドル、対円共に史上最安値を更新しました。日足ローソク足が主要テクニカルポイントを軒並み下抜けしていることや、トレンド系指標がアップサイドから急ピッチに垂れ下がってきていること、強い売りシグナルを示唆する「弱気のパーフェクトオーダー」「一目均衡表三役逆転」「ダウ理論の下落トレンド」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは弱いと判断できます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、エルドアン大統領による親ハマス路線の明確化に端を発した西側諸国との関係悪化懸念(地政学的リスク)や、それに伴う外国人投資家による資金流出圧力など、トルコリラ円相場の短期的な下落を連想させる材料が揃っています。但し、中長期的な目線で見れば、トルコ政府・トルコ中銀による正常化政策を好感する形で、海外マネーの流入再開が期待されるため、下値余地は限られそうです。事実、トルコを巡っては、大手格付会社(ムーディーズ、フィッチ、S&P)が揃って格上げを決定している他、大手資産運用会社(PIMCOなど)によるトルコアセットの積極投資方針への転換も確認できます。
加えて、今週はIMFから「昨年6月以降の経済政策・金融政策の大転換を受けて危機発生リスクが大幅に低減している」との高評価も取得しました。従って、イスラエルとハマスを巡る地政学的リスクが落ち着き次第(停戦協議など打開策の検討が進み次第)、トルコリラ円相場が急速に持ち直す可能性がある点には留意が必要でしょう(ショートカバーリスクが大きいため下値を追いづらい状況)。尚、来週は9/2に予定されているトルコ8月製造業PMIや、トルコ第2四半期GDP、9/3に予定されているトルコ8月消費者物価指数、トルコ8月生産者物価指数などに注目が集まりそうです。
来週の予想レンジ(TRYJPY):4.15ー4.45
注:ポイント要約は編集部
トルコ円日足
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