『地政学的リスクと円キャリートレード解消の組み合わせで史上最安値を更新』
〇今週のトルコ円、週末にかけて週間安値4.40(史上最安値)まで急落
〇ドル円急落、中東地政学的リスクの高まり、トルコ指標不冴え等が背景
〇テクニカルには日足の主要テクニカルポイント下抜け、強い買いシグナルも点灯、地合い極めて弱い
〇ファンダメンタルズは、トルコの実質金利上昇、外国人投資家のトルコへの資金流入期待がサポート
〇グローバルなリスクオフから、もう一段下げる恐れあるものの、一巡後は持ち直すシナリオか
〇来週の予想レンジ(TRYJPY):4.30ー4.70
今週のレビュー(7/29−8/2)
今週のトルコリラ円相場(TRYJPY)は、週初4.66円で寄り付いた後、翌7/30にかけて、週間高値4.70円まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(1)イスラエル・パレスチナ問題を巡る地政学的リスクの高まり(エルドアン大統領は7/28にイスラエルの攻撃を非難すると共に軍事介入の可能性を示唆→イスラエルのカッツ外相は7/29にトルコの北大西洋条約機構からの除名を要求)や、(2)トルコ7月経済信頼感(結果94.4、前回95.8)の冴えない結果、(3)日銀金融政策決定会合のタカ派的な結果(追加利上げ決定に加えて、植田日銀総裁は記者会見で「今後も経済・物価情勢が見通し通りに推移していけば追加利上げをしていく」方針を示唆)、
(4)上記3を背景とした円キャリートレードの巻き戻し(ドル円急落→トルコリラ円連れ安)、(5)世界的な株安に端を発したリスクオフの新興国通貨売り、(6)トルコ7月製造業PMI(結果47.2、前回47.9)の冴えない結果、(7)直近安値・下抜けに伴う仕掛け的なリラ売り圧力が重石となり、週末にかけて、週間安値4.40円(史上最安値)まで急落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間8/3午前1時00分現在)では、4.43円前後で推移しております。
来週の見通し(8/5−8/9)
トルコリラの対円相場(TRYJPY)は、7/3に記録した高値4.99円をトップに反落に転じると、今週末にかけて、史上最安値4.40円まで急落しました。日足ローソク足が主要テクニカルポイントを軒並み下抜けしたことや、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」「弱気のバンドウォーク」「21日線と90日線のデッドクロス」が成立したこと等を踏まえると、テクニカル的見て、地合いは極めて弱いと判断できます。
但し、ファンダメンタルズ的に見ると、(1)トルコリラと日本円の金利差に着目した円キャリートレードの継続期待(日銀は今週開催された金融政策決定会合で追加利上げに踏み切ると共に更なる利上げの可能性も示唆しましたが、一方でトルコ中銀も引き締め姿勢を続ける方針を示しているため、両者の金利差は当面縮まらない公算大)や、(2)実質金利上昇に伴うリラ買い圧力(インフレ鈍化と金融引き締めの組み合わせは実質金利上昇を通じてトルコリラに上昇圧力)、
(3)外国人投資家による資金流入期待(トルコ政府・中銀による正常化政策を好感する形で外国人投資家によるトルコアセットへの資金流入が増加傾向。格付け各社がトルコの格上げを実施している他、資産運用大手もトルコアセットの保有に積極的)など、トルコリラ円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。目先は、グローバルなリスクオフにつられる形で、トルコリラ円相場がもう一段下げ幅を広げる恐れがあるものの、一巡後は上記1ー3を材料に持ち直すシナリオが想定されます。以上を踏まえ、当方では引き続き、トルコリラ円相場の一巡後の反発をメインシナリオと予想いたします。尚、来週は上記1や2を見極める目的で、トルコ7月消費者物価指数や、トルコ7月生産者物価指数に注目が集まります。
来週の予想レンジ(TRYJPY):4.30ー4.70
注:ポイント要約は編集部
トルコリラ円日足
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