来週の為替相場見通し:『ドル円は円キャリートレードの巻き戻しで大暴落』(8/3朝)

ドル円は7/3に記録した約38年ぶり高値161.99をトップに反落に転じると、今週末かけて、一時146.42(2/2以来の安値圏)まで急落しました。

来週の為替相場見通し:『ドル円は円キャリートレードの巻き戻しで大暴落』(8/3朝)

『ドル円は円キャリートレードの巻き戻しで大暴落』

〇今週のドル円、週初155.52まで上昇後、週末にかけて週間安値146.42まで急落
〇日銀の利上げ実施、植田総裁の追加利上げの可能性示唆、FOMC、パウエル議長会見のハト派な内容、
〇米7月ISM製造業景況指数、週末米雇用統計等の米指標の悪化等が背景
〇ユーロドル、不冴えの米雇用統計等受けた米長期金利の急低下に週末1.09台を回復
〇ドル円、日足が主要テクニカルポイント下抜け、21日線が90日線をデッドクロス、地合い極めて弱い
〇ファンダメンタルズも円キャリートレードの巻き戻し、株価大幅下落がドル円の重石
〇「落ちてくるナイフは掴むな」の格言の通り、当面は下値を探る動きが続くか
〇来週の予想レンジ(USDJPY):145.00ー150.00、(EURUSD):1.0775−1.1025

今週のレビュー(7/29−8/2)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初153.81で寄り付いた後、(1)本邦輸入企業の実需のドル買い(5・10日要因に絡む公表相場決定にかけてのドル不足)や、(2)日経平均株価の堅調推移(リスク選好の円売り圧力)、(3)日銀金融政策決定会合を控えたポジション調整(追加利上げに対する懐疑的な見方)が支援材料となり、翌7/30にかけて、週間高値155.22まで上昇しました。

しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(4)NHKによる「日銀、追加利上げ検討へ、0.25%程度に引き上げる案など議論か」との観測報道や、(5)三村淳財務官による「足元の円安について輸入物価を押し上げて国民生活に影響を与えるなどデメリットの方が大きい」との円安牽制と受け止められる強気発言、(6)日銀金融政策決定会合のタカ派的な結果(国債買い入れ額を現在の月6兆円程度から2026年1ー3月に月3兆円程度に減らす方針が示されると共に、0ー0.1%としていた無担保コール翌日物レートを8/1から0.25%に引き上げることを決定)、(7)植田日銀総裁による「今後も経済・物価情勢が見通し通りに推移していけば追加利上げしていく方針」「政策金利0.5%というのは壁として意識していない」との予想外のタカ派発言、

(8)米7月ADP雇用統計(結果+12.2万人、予想+15.0万人)の冴えない結果、(9)米4ー6月期雇用コスト指数(結果+0.9%、予想+1.0%)の市場予想を下回る結果、(10)米FOMCのハト派的な結果(米FRBはフェデラルファンド金利の誘導目標を5.25ー5.50%に据え置いたものの、声明文にて「2%のインフレ目標に向けさらにいくらかの進展がみられた」との記述あり)、(11)パウエルFRB議長による「FOMCは利下げに近づいているという感触を得ている」「9月FOMCで利下げが選択肢になる可能性ある」とのハト派的な発言、(12)日米金利差縮小に伴う円キャリートレードの巻き戻し、(13)テクニカル的な地合いの悪化(上昇トレンド崩壊に伴う仕掛け的なドル売り・円買い)、

(14)米新規失業保険申請件数(結果24.9万件、予想23.6万件)の冴えない結果、(15)米7月ISM製造業景況指数(結果46.8、予想48.8)の市場予想を下回る結果、(16)米6月建設支出(結果▲0.3%、予想+0.2%)の大幅悪化、(17)米7月非農業部門雇用者数(結果+11.4万人、予想17.5万人)の市場予想を下回る結果、(18)米7月失業率(結果4.3%、予想4.1%)の予想比悪化、(19)米7月平均時給(結果+3.6%、予想+3.7%)の市場予想を下回る結果、(20)米6月耐久財受注(結果▲6.7%、予想▲6.6%)の市場予想を下回る結果、

21)米6月製造業受注指数(結果▲3.3%、予想▲3.2%)の市場予想を下回る結果、(22)株式市場の大暴落(リスク回避の円買い圧力)が重石となり、週末にかけて、週間安値146.42まで急落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間8/3午前1時30分現在)では、147.00前後で推移しております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0864で寄り付いた後、(1)日銀金融政策決定会合および植田日銀総裁記者会見のタカ派的な結果や、(2)上記1を背景とした円キャリートレードの巻き戻し(ユーロ円急落→ユーロドル連れ安)、(3)世界的なリスクオフ再燃(グローバルな株安進行→リスク回避のユーロ売り)、(4)欧州債利回り低下に伴うユーロ売り圧力、(5)英ポンドの冴えない動き(英BOEによる4年5カ月ぶりの利下げ決定)、(6)7/30に記録した直近安値1.0797を下抜けたことに伴う仕掛け的なユーロ売り・ドル買いが重石となり、週後半にかけて、週間安値1.0776まで反落しました。

しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(7)米7月雇用統計の冴えない結果や、(8)上記7を背景とした米長期金利の急低下、(9)短期筋のショートカバーが支えとなり、週末にかけて、週間高値1.0926まで反発しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間8/3午前1時30分現在)では、1.0913前後で推移しております。尚、今週発表されたユーロ圏4ー6月期GDP速報値(結果+0.6%、予想+0.5%)や、ユーロ圏7月消費者物価指数速報値(結果+2.6%、予想+2.5%)、ユーロ圏7月コアCPI速報値(結果+2.9%、予想+2.8%)はいずれも市場予想を上回る結果となりましたが、市場の反応は限られました。

来週の見通し(8/5−8/9)

<ドル円相場>
ドル円は7/3に記録した約38年ぶり高値161.99をトップに反落に転じると、今週末かけて、一時146.42(2/2以来の安値圏)まで急落しました(僅か1カ月で約15.5円の暴落劇)。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、一目均衡表転換線、基準線、雲上下限、ボリンジャーミッドバンド)を軒並み下抜けしたことや、強い売りシグナルを示唆する「21日線と90日線のデッドクロス」「一目均衡表三役逆転」「弱気のバンドウォーク」が成立したこと、ダウ理論の上昇トレンドが崩壊したこと等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは極めて弱いと判断できます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)日銀による追加利上げ観測の高まり(今週開催された日銀金融政策決定会合で追加利上げが実施された他、植田日銀総裁は会合後の記者会見で予想外にタカ派的な見解発表→政治的圧力に屈したとの見方あり)や、(2)米FRBによる早期利下げ観測の高まり(パウエルFRB議長は9月FOMCでの利下げ開始を示唆。不冴な米経済指標も相俟って年内75bpの利下げ織り込みがスタート)、(3)上記1、2を背景とした円キャリートレードの巻き戻し(日米金利差縮小を見越して円キャリートレードを解消する動きが活発化→ドル円・クロス円ロング勢の大規模ロスカットを誘発)、(4)株式市場の大幅下落(日経平均株価をはじめ株式市場がグローバルに崩壊→リスク回避の円買い圧力)など、ドル円相場の更なる下落を連想させる材料が揃っています。

「落ちてくるナイフは掴むな」の格言の通り、当面は下値を探る動きが続くと見られるため、当方では引き続き、ドル売り・円買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします(日米金利差やグローバルな株価動向に振らされる荒い値動きが続く見通し)。尚、来週は米7月ISM非製造業景況指数や、米当局者発言(シカゴ連銀グールズビー総裁、サンフランシスコ連銀デイリー総裁、リッチモンド連銀バーキン総裁)、日銀金融政策決定会合の主な意見に注目が集まります。

来週の予想レンジ(USDJPY):145.00ー150.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場(EURUSD)は7/17に記録した約4カ月ぶり高値1.0948をトップに反落に転じると、今週後半にかけて、一時1.0776まで下落しましたが、週末にかけては一転、1.09台前半まで切り返すなど、荒々しい値動きが続いています。日足ローソク足が主要テクニカルポイントを挟んで上下動を繰り返していることや、チャートパターン的にも中立状態(トレンド系・オシレータ系共にシグナルが点灯せず)が続いていること等を踏まえると、テクニカル的に見て、方向感を見出し辛い時間帯の継続(振れを伴いながらのレンジ相場継続)が予想されます。

但し、ファンダメンタルズ的に見ると、(1)欧米金利差に着目した構造的なユーロ売り・ドル買い圧力(米FRBによる利下げ観測が足元で高まっているものの、ECBは米FRBに先行して既に利下げサイクル入りしているため、金融政策面ではユーロドルに下落圧力が加わり易い)や、(2)欧州経済の先行き不透明感、(3)欧州域内の財政不安(欧州委員会は6/19にフランスやイタリアを含む7カ国に「過剰財政赤字手続き」開始を勧告し、9/20までに構造改革案を要求。特にフランスは総選挙の結果、財政拡張の旗を掲げる左派連合が勝利したため、フランスの財政健全化期待が後退。事実、格付け会社ムーディーズは7/9にフランス国民議会総選挙の結果は同国の信用格付けにとってマイナスであると警告)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロ売り・ドル買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします(ユーロドルの上値余地は乏しく、心理的節目1.1000の突破は容易では無い)。尚、来週はドイツ6月製造業受注や、ドイツ6月鉱工業生産以外に目立った経済イベントが予定されていないため、今週同様、「米ドル」や「円」に振らされる主体性に乏しい値動きとなりそうです。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0775−1.1025

注:ポイント要約は編集部

『ドル円は円キャリートレードの巻き戻しで大暴落』

ドル円日足

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る