ドル円見通し 米雇用統計冴えず146円台へ一段安、これまでの円安株高に対する逆スパイラル

8月2日の低調な米雇用統計により米長期債利回りは総じて大幅低下した。

ドル円見通し 米雇用統計冴えず146円台へ一段安、これまでの円安株高に対する逆スパイラル

米雇用統計冴えず146円台へ一段安、これまでの円安株高に対する逆スパイラル

〇先週のドル円、日銀が0.25%への利上げを決定、FOMCが9月利下げ検討姿勢を示し8/1に148.50へ下落
〇週末米雇用統計が予想以上に弱く、米長期債利回りが大幅低下、ドル146.41へ一段安
〇日足は4営業日続落、週足は5週連続陰線で下落、月間足では7月末まで10.91円の下落
〇米雇用統計NFP+11.4万人、失業率4.3%に悪化、平均時給前年同月比+3.6%に鈍化
〇景気減速懸念強まり、米長期債利回りは大幅続落、米株価指数も大幅続落
〇円安株高のバブル気味大上昇に対する揺れ返しの、円高期に入った可能性も
〇148.08を超えて続伸する場合、149.00から149.76手前までは戻り売り優勢となるとみる
〇146.41割れからは145円試し、145円割れからさらに続落する場合は143、142、141円を順次試すか

【概況】

ドル円は8月2日夜の米雇用統計が予想以上に弱かったことで米長期債利回りが大幅低下してドル全面安となる中で発表前の147円台中盤から146.41円へ一段安し、3日早朝にかけても安値圏に留まり146.51円で週を終えた。
7月3日高値161.94円を起点として上昇が頭打ちとなり、7月11日と12日の市場介入や米CPI鈍化で下落期に入り、7月25日に151.93円まで下げてから7月30日に155.21円までいったん戻していたものの、7月31日に日銀が0.25%程度への利上げを決定して植田総裁が利上げ継続の可能性に言及したことに加えて8月1日早朝のFOMCが9月利下げ検討姿勢を示したことで8月1日午前に148.50円へ一段安し、その後の戻りも鈍く8月2日の米雇用統計から一段安した後も売り一巡による買い戻しがみられなかった。

週間では7月26日終値153.72円から8月2日終値146.51円まで7.21円の下落となり2022年11月11日へ下落した時の週足陰線による7.89円に匹敵する下落幅となった。日足は4営業日続落、週足は5週連続陰線で下落した。月間足では6月末の160.86円から7月31日終値149.95円まで10.91円の下落となり、2022年11月の下落幅10.65円を超えて8月も2営業日で3.44円の下げ幅と続落している。

【米雇用統計弱く景気減速懸念強まる】

8月2日に米労働省が発表した7月雇用統計では非農業部門就業者数が前月比11.4万人増となり6月の17.9万人増から大幅に減速して市場予想の17.5万人を大幅に下回った。失業率は6月の4.1%から4.3%へ悪化して凡そ3年振りの高水準となり、インフレ指標である平均時給伸び率は前年同月比で3.6%上昇となり凡そ3年ぶりの低水準となった。
8月1日早朝のFOMCでパウエルFRB議長は9月会合(9月17-18日)での利下げを検討するとしたが、今回の雇用情勢悪化と賃金インフレ圧力の低下により9月会合での利下げ開始がほぼ確実視されるとともに0.25%ではなく0.50%の利下げ期待も7割近くに上昇した。

【米長期債利回りは大幅続落、米株価指数も大幅続落】

8月2日の低調な米雇用統計により米長期債利回りは総じて大幅低下した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.19%低下の3.79%となったが、日足は7営業日連続低下で4月25日につけた年初来ピークの4.74%以降の最低として昨年12月26日の3.78%に迫った。30年債利回りは前日比0.17%低下の4.11%となり、7営業日連続低下で4月25日に付けた年初来ピークである4.85%以降の最低を更新した。2年債利回りは前日比0.27%低下の3.88%となり、4月30日に付けた年初来ピークの5.05%以降の最低及び2023年10月の5.23%以降の最低を更新した。

一方で米国主要株価指数は大幅下落に見舞われた。NYダウは前日比610.71ドル安となり8月1日の494.82ドル安から大幅続落したが一時は900ドル安を超える下落規模となった。ナスダック総合指数は前日比417.99ポイント安で1日の405.25ポイント安から続落して安値で16582.79をつけて7月11日付けた史上最高値18671.07以降の最低を更新し、S&P500指数も100.12ポイント安で1日の75.62ポイント安から続落し、安値で5302.03を付けて7月16日に付けた史上最高値5669.67以降の最低とした。
米国株式市場はこれまで足元の経済指標が悪くてもリセッションには陥らずにソフトランディングして先行きの金融緩和で大上昇を継続するとの楽観論が優勢だったのだが、8月に入ってからの急落では利下げへの楽観よりも景気後退への不安が勝ったようだ。8月5日も大幅続落する場合は世界連鎖株安に陥ることへの懸念も生じるのではないかと警戒するが、米長期債利回り低下と株安でドル円の下落が長期化することも懸念される。

【円安株高のバブル気味大上昇に対する揺れ返し】

ドル円の大幅下落は日本株安とも相互に影響しあっている。
1989年12月に日経平均が38957.44円で当時の天井を付けてからバブル崩壊的な下落で1990年10月安値19781.70円まで大幅下落してその後も長期的な下落基調が続いた時に、ドル円は1990年4月2日160.36円を天井として同年10月安値123.60円まで大幅下落となりその後も1995年4月底79.70円まで長期的な下落に陥っている。
リーマンショック時に日経平均は2007年2月26日高値18300.39円と6月20日高値18297.00円をダブル天井として2008年10月28日安値6994.90円へ暴落したが、ドル円は2007年6月22日天井124.15円から2009年1月21日安値87.11円へ大幅下落してからも2011年10月21日安値75.57円まで下落を続けた。また日経平均は2015年6月24日高値20952.71円から2016年6月24日安値14864.01円まで大幅下落した際にドル円は2015年6月5日天井125.84円から2016年6月24日安値99.04円まで大幅下落している。

今年7月序盤までの円安と株高がバブル的な動きだったとして大規模な修正局面に入ったとすれば円高と株安がまだ暫く続く可能性も懸念されるわけだが、@米国が9月に利下げすることはほぼ確実視されて一部には0.50%利下げもあり得るとされていること、A年内合計2回ないし3回の利下げもあり得るとされる中で日銀が長期金利抑制のための国債大量購入の減額を進めて追加利上げもあり得るとしていることの姿勢の差が年末にかけて続きやすいこと、B11月の大統領選挙でトランプ氏が勝利して前回政権時のようにドル高けん制と中国との対立や関税強化、財政拡大等に走る可能性もあること、C中東情勢が終結の目途が立たずに地政学的リスクが高まっていること等を踏まえれば、日本景気の弱さによるファンダメンタルズ的な円安感よりもそれらが優先されて揺れ返し型の円高期に入ったとしても不思議ないと思われる。

【2022年10月からの下落時並み、当面のポイント】

【2022年10月からの下落時並み、当面のポイント】

今年7月3日高値161.94円から8月2日付け安値146.41円まで15.53円の下落幅となりすでに昨年11月13日高値151.90円から12月28日安値140.24円までの下げ幅11.66円を超えているため、比較対象は2022年10月21日高値151.94円から2023年1月16日安値127.22円まで3か月で下げ幅24.72円となった時期とすべきではないかと考える。
2022年10月からの下落は9月22日に続く10月21日と10月24日の市場介入で上昇にブレーキが掛けられたことに加え、11月10日の米CPIが予想以上の鈍化となり「逆CPIショック」として米長期債利回りの大幅低下とドル安を招き、黒田前総裁が任期終了までに異次元金融緩和政策の修正に手を付け始めたことが重なったことによる円安の揺れ返しとドル安だった。今回も7月11日と12日の市場介入に加えて米国のCPIやPCEデフレーターが鈍化傾向を顕著として米雇用統計の悪化がFRBの利下げを招くとされたこと、植田総裁の利上げ継続姿勢などが重なったことによる円安の揺れ返しとドル安のため背景と市場心理は似ていると思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当面、145円を下値支持線、8月2日の日足陰線高値149.76円を上値抵抗線とする。
(2)8月2日の陰線中心値は148.08円にあるため、148.08円を超えて続伸する場合は8月2日の陰線による下げ幅解消を試す上昇を想定するが、149.00円から149.76円手前までは戻り売り優勢となりその後の下落再開から一段安へ進みやすくなるとみる。
(3)8月2日安値146.41円割れからは145円試しとする。145円前後ではいったん買い戻しも入りやすいとみるが、145円割れからさらに続落する場合は143円、142円、141円を順次試し、昨年12月28日安値140.24円へ迫ってゆく流れと考える。

【当面の予定】

8/5(月)
休場 カナダ
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨 6月13-14日分
10:45 (中) 7月 財新サービス業PMI (6月 51.2)
16:55 (独) 7月 HOCBサービス業PMI改定値 (速報 52.0)
17:00 (欧) 7月 HOCBサービス業PMI改定値 (速報 51.9)
17:30 (英) 7月 S&PGサービス業PMI改定値 (速報 52.4)
18:00 (欧) 6月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (5月 -0.2%)
18:00 (欧) 6月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (5月 -4.2%)
21:30 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、メディア出演
22:45 (米) 7月 S&PGサービス業PMI改定値 (速報 56.0)
23:00 (米) 7月 ISMサービス業景況指数 (6月 48.8、予想 51.3)

8/6(火)
06:00 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、討論会
08:30 (日) 6月 全世帯消費支出 前年同月比 (5月 -1.8%、予想 -1.0%)
13:30 (豪) 豪中銀 政策金利 (現行 4.35%、予想 4.35%)
14:30 (豪) ブロック豪中銀総裁、会見
15:00 (独) 6月 製造業新規受注 前月比 (5月 -1.6%)
15:00 (独) 6月 製造業新規受注 前年同月比 (5月 -8.6%)
18:00 (欧) 6月 小売売上高 前月比 (5月 0.1%)
18:00 (欧) 6月 小売売上高 前年同月比 (5月 0.3%)
21:30 (米) 6月 貿易収支 (5月 -751億ドル 、予想 -727億ドル)

8/7(水)
未 定 (中) 7月 貿易収支・米ドル建て (6月 990.5億ドル)
07:45 (NZ) 4-6月期 就業者数増減 前期比 (1-3月 -0.2%、予想 -0.3%)
07:45 (NZ) 4-6月期 就業者数増減 前年同期比 (1-3月 1.2%、予想 0.0%)
07:45 (NZ) 4-6月期 失業率 (1-3月 4.3%、予想 4.7%)
08:50 (日) 外国為替平衡操作実施状況 (4-6月、日次)
08:50 (日) 7月 外貨準備高 (6月 1兆2315億ドル)
14:00 (日) 6月 景気先行指数CI速報値 (5月 111.2、予想 109.1)
14:00 (日) 6月 景気一致指数CI速報値 (5月 117.1、予想 113.8)
15:00 (独) 6月 貿易収支 (5月 249億ユーロ)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省10年債
28:00 (米) 6月 消費者信用残高 前月比 (5月 113.5億ドル、予想 103.0億ドル)

8/8(木)
08:50 (日) 6月 経常収支・季調前 (5月 2兆8499億円、予想 1兆8630億円)
08:50 (日) 6月 経常収支・季調済 (5月 2兆4062億円、予想 2兆2480億円)
08:50 (日) 6月 貿易収支・国際収支ベース (5月 -1兆1089億円、予想 3380億円)
08:50 (日) 日銀金融政策決定会合・主な意見 7月30-31日分
11:00 (豪) ブロック豪中銀総裁、講演
14:00 (日) 7月 景気ウオッチャー現状 (6月 47.0、予想 47.8)
14:00 (日) 7月 景気ウオッチャー先行き (6月 47.9)
15:00 (独) 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 -2.5%)
15:00 (独) 6月 鉱工業生産 前年同月比 (5月 -6.7%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 24.9万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 187.7万人)
23:00 (米) 6月 卸売売上高 前月比 (5月 0.4%)
28:00 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、ウェビナー出演

8/9(金)
休場 シンガポール、南ア
08:50 (日) 7月 マネーストックM2 前年同月比 (6月 1.5%)
10:30 (中) 7月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (6月 -0.8%)
10:30 (中) 7月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (6月 0.2%)
15:00 (独) 7月 CPI(消費者物価指数)改定値 前月比 (速報 0.3%)
15:00 (独) 7月 CPI(消費者物価指数)改定値 前年同月比 (6月 2.3%)

注:ポイント要約は編集部

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