ドル円とリラが揃って反騰し前日の急落を解消するも6日午前は失速気味
〇昨日のトルコ円、ドル円反騰入りと対ドルでのリラ巻き返し上昇を受け、前日の下落幅を解消
〇本日早朝に4.85まで戻した後は4.81まで反落するなど上値重い
〇対ドル、6/5は概ね32.67から32.09の取引レンジ、6/6早朝終値は32.23
〇ドル/トルコリラ、6/4の急落幅をほぼ解消
〇トルコのBRICS加盟希望表明をロシアは歓迎、地政学的リスクの先行き不透明に
〇今夜のECB理事会(利下げ予想)や明日の米5月雇用統計発表等を受け、暫くは波乱含みの展開か
〇4.80を上回るうちは一段高余地ありとし、4.85超えからは4.88前後への上昇を想定
〇4.80割れからは下向きとして4.78前後への下落を想定
【概況】
トルコリラ円の6月5日は概ね4.85円から4.73円の取引レンジ、6日早朝の終値は4.84円で前日終値の4.75円から0.09円の円安リラ高だった。
6月4日はドル円の急落に加えて対ドルでトルコリラが急落して終値ベースの史上最安値を更新したことが重なったために6月3日終値4.85円から4日終値4.75円へ急落して前日比0.10円の円高リラ安となり安値で4.73円をつけたが、5日午前序盤からドル円が反騰入りしたことと、対ドルでリラが巻き返しの上昇となったために円安とリラ高の両面から押し上げられて前日の下落幅を解消した。
ドル円は日銀が長期金利抑制のための国債買い入れ額を減額するとの報道や6月3日夜の米ISM5月製造業景況指数の悪化と、さらに4日の米JOLTS求人件数が予想を大幅に下回る悪化となったことによる
米長期債利回りの低下を見て6月4日夜安値154.54円へ急落したが、やや過剰反応だった急落が落ち着いて買い戻しに入り、155.50円を超えてから上昇が勢い付いて6月5日深夜には156.46円まで切り返して6月4日午前高値156.48円からの一段安をほぼ解消した。しかし6日午前は156円を割り込んでおり、米長期債利回り低下傾向が続いたことによる戻り売りが優勢となりつつある。
トルコリラ円は6日早朝に4.85円まで戻した後はドル円の反落と対ドルでのリラ反騰が一服したことで4.81円まで反落するなど上値が重くなっている。ドル円とドル/トルコリラがともに波乱となったために値動きが大きかったものの、6月3日高値4.89円から戻り高値が切り下がった状況にあるため、4.80円割れから続落する場合は戻り一巡による下落期入りの懸念も浮上すると注意したい。
今夜はECB理事会(利下げ予想)や米国の週間新規失業保険申請件数や労働生産性、明日夜は米5月雇用統計と続くためまだ暫く波乱含みの展開と思われる。
【ドル/トルコリラは前日の急落をほぼ解消】
ドル/トルコリラの6月5日は概ね32.67リラから32.09リラの取引レンジ、6日早朝の終値は32.23リラで前日終値の32.57リラから0.34リラのドル安リラ高となった。
4月12日の史上最安値33.03リラから5月14日高値31.89リラへ上昇した後は1ドル32リラを挟んだ揉み合いで膠着状態にあったが、6月4日は一時32.63リラへ急落して終値を32.57リラとして終値としての史上最安値だった4月24日終値32.54リラを更新した。トルコ最高裁がエルドアン大統領による中銀総裁らの任期中解任権を認めた大統領令を無効と判断したことへのエルドアン大統領の反発懸念や、トルコ外相が中国やロシア等によるBRICSへの加盟を希望すると述べてロシアがこれを歓迎するとしたことによる地政学的リスクの先行き不透明感が6月5日のリラ急落を招いたと思われ、32.40リラ近辺の下値支持線を割り込んだところからリラ売りが加速した印象だ。しかし6月4日のリラ売り反応はやや過剰だったとして6月5日は揺れ返しのリラ買いとなり4日の急落幅をほぼ解消し、6日午前序盤は32.34リラから32.16リラのレンジで落ち着いている。
【トルコのBRICS加盟希望の波紋】
6月4日に ロシア大統領府のペスコフ報道官がトルコが「BRICS」への加盟を望んでいるとしたトルコ外相の発言を歓迎するとし、次回のBRICS首脳会議の議題になると述べた。
トルコのフィダン外相は6月3日から北京を訪問しており、現地の講演における「トルコはBRICS加盟を望むか」との質問に対して「もちろん望む」と答えた。トルコ政府及びエルドアン大統領が公式にBRICS加盟を表明しているわけではないが、2024年中の加盟を望んでいるとの報道もある。
BRICSは現在、ブラジル、ロシア、インド、中国、南ア、エチオピア、イラン、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)が参加している。トルコはEUへの加盟を長年希望してきたが反対されてかなわず、NATOに加盟しているものの米国との関係は険悪であり、ウクライナ問題ではロシアとの停戦協議を主導したり密接な関係があり、中国との貿易関係も深まっている。
【アナリスト予想では1年後に1ドル39リラ】
6月5日にロイター社が集計した直近の市場予想調査において、ドル/トルコリラの予想中央値は6月末に1ドル33リラ、8月末に34リラ、11月末に35.5リラ、2025年5月末で39リラへ下落すると見込まれた。リラ高へ進むとの予想者は1年後に29リラまで上昇するとしたが、最もリラ安が進むとしたものは1年後で45.67リラと予想している。
5月31日に金融大手の 米JPモルガンはドル/トルコリラの見通しについては2024年末に1ドル35.5リラ、2025年末に1ドル42リラとしてこれまでの見通しよりもリラ高へと修正したもののまだ暫くはリラ安基調が続くとしている。5月17日にトルコ中銀が集計した月次調査におけるドル/トルコリラの2024年末見通しは1ドル38.7771リラで4月調査時の40.0098リラを下回ったがリラ安基調がまだ続くとの見方がコンセンサスとなっている。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
トルコリラ円の概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、6月4日未明への下落で5月30日夕安値と同値まで下げたため、6月4日午前時点では6月3日午後高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして6月4日午後から6日夕にかけての間への下落を想定し、5日午前時点では一段安余地ありとしたものの4.78円超えからは強気サイクル入りとした。
5日午後に4.78円を超えて6月6日早朝に4.85円へ急伸したため、5日未明安値を直近のサイクルボトムとして強気サイクル入りしたと思われる。サイクルトップ形成期は6日午後から10日午後にかけての間と想定されるのでまだ上昇余地ありとするが、4.80円割れからは弱気転換注意とし、4.78円割れからは弱気サイクル入りとして7日深夜から12日未明にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では6月6日早朝への急伸で遅行スパンが好転して先行スパンも上抜き、その後も両スパンそろっての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、先行スパンへ潜り込んで続落し始める場合は下落再開を警戒して遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は6月5日夜から6日早朝への高値更新に際して指数のピークが切り下がる弱気逆行気配がみられるため、50ポイントを割り込んでも切り返すうちは上昇余地ありとするが、45ポイント割れからは下落期入りとみて20ポイント台への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、4.80円を下値支持線、4.85円を上値抵抗線とする。
(2)4.80円を上回るうちは一段高余地ありとし、4.85円超えからは4.88円前後への上昇を想定する。4.88円以上は反落警戒とするが、4.82円を上回っての推移なら7日の日中も高値試しを続けやすいとみる。
(3)4.80円割れからは下向きとして4.78円前後への下落を想定する。4.78円以下は反騰注意とするが、下げ足が速まる場合は4.76円前後へ下値目途を引き下げ、7日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
6月6日
20:30 週次 外貨準備高 グロス 5月31日時点 (5月24日時点 827.7億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 ネット 5月31日時点 (5月24日時点 403.5億ドル)
6月7日
23:30 5月 財務省現金残高増減 (4月 -2369.8億リラ)
6月10日
16:00 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 -0.3%)
16:00 4月 鉱工業生産 前年同月比 (3月 4.3%)
16:00 4月 失業率 (3月 8.6%)
16:00 4月 経常収支 (3月 -45.44億ドル)
注:ポイント要約は編集部
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