自国経済の弱さを改めて意識、ボラタイルな地合い継続か
【今週のNZドル】
今週のNZドルは、弱い雇用統計が嫌気されるなか、投機筋の円売りポジション積み上げと、日本当局と思われる円買い介入に翻弄され、週間値幅が4円超のボラタイルな展開となった。
4月29日10時過ぎ、日銀が円安対策に動かないとの見方を強めた投機筋による円売り加速で、米ドルは160円20銭まで円安ドル高が加速。NZドルも円売りが強まったことから、95円36銭と2007年7月以来の水準まで上昇した。
ただ、4月29日13時過ぎ、日本当局による円買い介入実施観測を背景に円高NZドル安が加速。また、1日に発表された雇用統計も、雇用者数、失業率ともに市場予想を下回ったことでNZドルは売り優勢の展開となった。
2日未明にも、日本当局が2回目の円買い介入を実施したとの観測からNZドルは一時91円台を割り込む展開に。売り一巡後は91円台を回復したが、外部環境に翻弄されるなか、自国経済のリセッションが改めて嫌気された地合いとなった。
NZドル・円(東京時間:4月29日―5月3日(終値は9時台終値を参照))
※Investing.comの日足を参照
始値:92円48銭
高値:95円36銭
安値:90円93銭
終値:91円43銭
【今週と来週の重要指標】
※時間は東京時間
4月30日
10時00分、4月ANZ企業景況感、前回:22.9、結果:14.9
5月1日
7時45分、第1四半期雇用者数、前回:2.7%、市場予想:1.7%、結果:1.2%
7時45分、第1四半期失業率、前回:4.0%、市場予想:4.1%、結果:4.3%
5月2日
7時45分、3月住宅建設許可(前月比)、前回:15.9%、結果:−0.2%
※予定は変更することがございます。
【今週末から来週の見通し】
今週末から来週のNZドルは、目立った国内経済指標が予定されていないことから、経済的なつながりの強いオーストラリアの情勢と日本当局の円買い介入観測を睨んだ展開となろう。
7日に開催されるオーストラリア準備銀行(豪中銀、RBA)の理事会では、政策金利4.35%が据え置かれる一方、「利上げ」に関する議論は行われるとの見方が強い。RBA声明が利上げの可能性に言及する「タカ派」な内容となれば、豪ドルは対主要通貨で強含む展開となり、NZドルもつられると想定する。
一方、日本当局と思われる円買い介入は、4月29日と5月2日の2回合計で8兆円ほど行われたと市場では推計されている。2022年9月と10月の合計3回の金額は9.1兆円だったことから、22年時の介入に次ぐ大規模な円買い介入となったようだ。
当然ながら日本当局による円買い介入は無尽蔵に実施できるものではなく、限界が存在する。まず、政府が保有している外貨準備は3月末時点で1兆2900億ドル(1ドル155円計算で、約200兆円)ある。このうち、すぐに動かせる外貨預金が1550億ドルのほか、売却可能な証券が2000億ドルほど存在するので、合計3550億ドル(約55兆円)が「実弾」として使用可能な上限と考えられる。
そして、米国が「為替操作国」と認定する水準として、「GDPの2%以上」という数字が存在することも意識しておきたい。この水準に当てはめると、日本の2023年の名目GDPが591兆円なので計算上、11.8兆円が上限となる。仮にこの11.8兆円を上限と考えると、既に8兆円使用したことから、残りの「実弾」は3.8兆円ほどとなる。
4月29日は日本が祝日で市場参加者は普段よりも少なかったはずだし、5月2日5時頃も、ニューヨーク市場からオセアニア市場に主戦場が替わるタイミングだったことで参加者は少なかったと思われる。こうしたタイミングを狙った介入を今後も実施した場合でも、「あと1回」しか介入はできないという計算だ。実施のタイミングは日本当局次第だが、「実弾」が尽きた後、投機筋が円売りポジションを一気に積み増す可能性は頭に入れておきたい。
テクニカル面も触れておくが、日足の一目均衡表では、雲下限の攻防を迎えている。4月29日の長い上影(上ヒゲ)をつけた後は、100日移動平均線をサポートに下げ止まったが、下向きの50日移動平均線を下回っていることから、短期的なリバウンドも弱まりそうだ。不透明要因が多い状況下、積極的なNZドル買いは手控えられそうなムードにある。
NZドル円日足
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