トルコリラ円見通し リラ安再開の動きと円安の支援に欠けて4.70円を再び割り込む(24/4/10)

トルコリラ円の4月9日は概ね4.74円から4.69円の取引レンジ、10日早朝の終値は4.68円で前日終値の4.74円から0.06円の円高リラ安だった。

トルコリラ円見通し リラ安再開の動きと円安の支援に欠けて4.70円を再び割り込む(24/4/10)

リラ安再開の動きと円安の支援に欠けて4.70円を再び割り込む

〇トルコ円、4/10午前序盤、4.70台回復するも反発の勢い欠け、上昇一巡による下落再開感強まるか
〇米3月CPIとFOMC議事要旨公開でドル円上下に大きく振れる可能性。トルコ円も急伸や大幅下落に注意
〇対ドル、4/9は概ね32.30から31.92の取引レンジ。4/10午前、32.34まで安値切り下げ
〇リラ安再開でボックス型持ち合いの様相。持ち合い下放れで史上最安値更新へ進みかねない展開
〇高インフレの鎮静化難しく、政治改革の期待感より先行きの政局不安定への懸念勝り始めている状況か
〇イスラエルへ貿易制裁発動、イスラエルが対抗的に貿易規制発動すればトルコ経済は打撃
〇4.72を超えないうちは一段安警戒、4.69割れからは4.67前後への下落を想定
〇4.72手前は戻り売り有利、4.72超えからは4.74前後への上昇を想定

【概況】

トルコリラ円の4月9日は概ね4.74円から4.69円の取引レンジ、10日早朝の終値は4.68円で前日終値の4.74円から0.06円の円高リラ安だった。
3月31日のトルコ統一地方選での与党大敗をきっかけとしたドル/トルコリラでのリラ高とドル円の上昇局面を活かしてトルコリラ円は4月1日夜高値4.77円へ急騰したが、その後は高値更新へ進めず、ドル円が5日午前に150.80円へ失速した局面で4.71円まで反落し、4月5日夜の米雇用統計発表後の円安により4.75円まで戻したものの6日早朝には4.73円へ失速していた。

4月8日夜に4.69円まで下げてから4.74円まで戻したものの買い戻しは続かず、9日夜にかけてはドル円が夕刻に151.93円へ戻してから151.55円へ反落し、ドル/トルコリラでのリラ安が続いたことに圧迫されて4.69円まで下げた。4月10日午前序盤は4.70円台を回復しているものの反発の勢いに欠けており、統一地方選結果をきっかけとした上昇一巡による下落再開感が強まっている印象だ。
今夜は米3月CPI上昇率の発表があり、明朝にはFOMC議事要旨公開があるため、それらの内容次第ではドル円も上下に大きく振れる可能性があり、ドル円が急伸反応を見せればトルコリラ円もドル円を追いかけて反騰すると思われるが、逆に米CPI鈍化が顕著となり米国の6月利下げ期待度が高まる場合には米長期債利回り低下とともにドル円が急落してトルコリラ円も大幅下落に巻き込まれる可能性もあると注意したい。

【ドル/トルコリラ 統一地方選後のリラ買い一巡でリラ安再開の動き】

ドル/トルコリラの4月9日は概ね32.30リラから31.92リラの取引レンジ、10日早朝の終値は32.27リラで前日終値の31.98リラからは0.29リラのドル高リラ安だった。
3月31日のトルコ統一地方選での与党大敗をきっかけとしたリラ買いにより4月1日は32.48リラから31.36リラへドル安リラ高となり、その後はリラの高値切り上げへは進まなかったものの日足終値ベースでは4月4日まで4営業日連続でドル安リラ高となっていた。しかし地方選結果をきっかけとしたリラ買いが一巡して4月5日は終値ベースで1ドル32リラ台へ下落し、8日は前日比マイナスで終わったものの安値を32.20リラへ切り下げ、9日も32.30リラへ安値切り下げを続けた。10日午前には32.34リラまで安値をさらに切り下げており、リラ安が再開している印象だ。

【ドル/トルコリラはダブル底型からボックス型持ち合いへ】

ドル/トルコリラは3月19日に32.50リラの史上最安値を付けた後、3月21日のトルコ中銀による予想外の5%利上げにより3月22日高値31.53リラへ上昇し、3月29日に32.49リラまで反落したところから統一地方選での与党大敗を受けたリラ買いで4月1日には31.36リラへ反騰した。この段階ではドルから見ればダブル天井、リラから見ればダブル底形成の可能性があった。

しかしその後は高値切り上げヘ向かわずにリラ安が再開して32リラ台前半へ下落してきたことにより、リラからみればダブル底型というよりも32.50リラ前後を下値支持線・31リラ台中盤を上値抵抗線としたボックス型持ち合いの様相へ変化してきており、持ち合い下放れにより史上最安値更新へと進みかねない展開となりつつある印象だ。
統一地方選でのエルドアン大統領率いる与党が大敗したことで、現政権が民衆の支持を獲得するために高インフレの鎮静化やリラ安抑止へ向けて動くとの期待感が当初のリラ買いを招いたのだが、高インフレの鎮静化は難しく、インフレ抑制のための追加利上げも予想されているものの政策金利を現行からさらに10%引き上げて60%としても抑制効果は限られるのではないかとの懸念もあり、政治改革への期待感よりも先行きの政局不安定への懸念が勝り始めているのではないかと思われる。

【トルコはイスラエルへ貿易制裁を発動】

トルコ政府は4月9日にパレスチナ自治区ガザで停戦が宣言されるまでイスラエルへの輸出を制限すると発表し、イスラエル向けの鉄鋼、肥料、ジェット燃料などの輸出制限を開始した。
トルコはイスラエルとの国交正常化へ向かっていたが、パレスチナ・イスラエル戦争勃発により目論見がとん挫し、国民の反イスラエルの動きを踏まえてトルコ政府としてもイスラエルに対する大規模な経済制裁を発動せざるを得なくなったと思われる。内政で混乱があるときは海外情勢で国内世論を引き締めることが政治の定石でもあり、エルドアン政権としては支持率回復のためにもイスラエルへの強硬姿勢を示さざるを得なかったと思われる。イスラエルも対抗的にトルコへの貿易規制を発動すると思われ、トルコ経済にとっては打撃になると思われる。

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

トルコリラ円の概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、4月5日未明高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りとしてボトム形成期を5日午前から8日朝にかけての間としていたが、4月5日午前安値から5日夜へ戻した後に8日夜へ下落したため、9日午前時点では5日午前安値を直近のサイクルボトム、5日夜高値を同サイクルトップとした新たな弱気サイクル入りとして10日午前から12日午前にかけての間への下落を想定した。
4月9日深夜にかけて下落したため引き続きボトム形成中とし、4.72円超えからは強気転換注意とするが現時点からの強気サイクル入りには4月5日夜高値に迫る反騰が必要と思われる。

60分足の一目均衡表では4.70円台前半中心の揉み合いから下放れ始め先行スパンからの転落が続いているため遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところから下げ再開とするが、連続的な上昇で先行スパンを上抜くところからは反騰入りとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は4月5日夜以降の右肩下がりの展開が続いて繰り返し30ポイント前後を試しているため、50ポイント以下での推移中は一段安余地ありとし、30ポイント割れからは20ポイント前後への低下を想定する。強気転換は55ポイントを超えてその後も50ポイント以上を維持しながら指数のピークを切り上げる上昇が必要と思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、4.69円を下値支持線、4.72円を上値抵抗線とする。
(2)4.72円を超えないうちは一段安警戒とし、4.69円割れからは4.67円前後への下落を想定する。4.67円以下は反騰注意とするが、4.70円以下での推移なら11日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。下げ足が速まる場合は4.66円以下へ下値目途を引き下げる。
(3)4.72円手前は戻り売り有利とみるが、4.72円超えからは4.74円前後への上昇を想定する。4.74円前後は反落警戒とするが、ドル円が急伸する場合には4.75円台へ上値目途を引き上げる。

【当面の主な予定】

4月10日 休場(断食明け大祭)
4月11日 休場(断食明け大祭)
 20:30 週次 外貨準備高 4月5日時点 グロス (3月29日時点 687.5億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 4月5日時点 ネット (3月29日時点 154.5億ドル)
4月12日 休場(断食明け大祭)
4月15日
 16:00 2月 失業率 (1月 9.1%)
 17:00 3月 財政収支 (2月 -1538億リラ)
4月16日
 16:00 2月 小売売上高 前月比 (1月 2.6%)
 16:00 2月 小売売上高 前年同月比 (1月 13.3%)
4月17日
 16:00 2月 経常収支 (1月 -25.56億ドル)



注:ポイント要約は編集部

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