1ドル32リラ台到達、円高傾向も続き8営業日続落で最安値を連日更新
〇トルコ円、3/11は概ね4.62から4.57の取引レンジ、ドル高リラ安と円高の両面から圧される展開続く
〇対ドル、3/11は1ドル32リラ台に初めて到達、7日連続で取引時間中の史上最安値を更新
〇終値としても3/7終値31.86を超えて、史上最安値を更新
〇フィッチはトルコの信用格付けをB+に引き上げるも、リラ安の歯止めにならず
〇4.61を下回るうちは一段安警戒とし、4.56割れからは4.52前後への下落を想想定する
〇4.60から4.61にかけては売り有利とし、4.58を割り込むところから下げ再開及び一段安を想定する
【概況】
トルコリラ円の3月11日は概ね4.62円から4.57円の取引レンジ、12日早朝の終値は4.58円で先週末終値の4.61円から0.03円の円高リラ安だった。
ドル高リラ安が収まらず、ドル/トルコリラは1ドル32リラ台へと史上最安値を更新し、ドル円も先週の大幅下落から3月11日夕刻に安値を切り下げて上値の重い下げ渋り程度の動きに留まっているため、トルコリラ円はドル高リラ安と円高の両面から圧される展開が続いている。
ドル円は日銀関係者によるマイナス金利及びYCC(長短金利操作)解除への前向き発言が相次ぎ、メディアも3月ないし4月にマイナス金利等が解除される見込みとの報道を繰り返していることで2月29日未明高値150.84円からの下落基調が続いて先週末には146.48円まで安値を切り下げたが、週明けの3月11日も夕刻に146.46円をつけ、その後に147円台を付けたところも売られて上値の重い展開が続いている。
今夜は米2月CPIの発表があり、予想を上回る上昇率ならドル円もいったん反騰する可能性があるが、来週の3月18-19日に日銀金融政策決定会合、3月19-20日に米FOMCが控えているため、日米金融政策の変化へ向けた流れを踏まえれば円高基調はさらに続きやすく、2月CPIが予想よりも鈍化するならドル円の下げ足が速まる可能性も警戒される。いずれにしてもトルコリラ円にとっては暫く円高圧力がかかりやすいと思われる。
【ドル/トルコリラは7日連続で取引時間中の史上最安値を更新】
ドル/トルコリラの3月11日は概ね32.05リラから31.80リラの取引レンジ、12日早朝の終値は31.94リラで先週末終値の31.84リラから0.10リラのドル高リラ安だった。
3月1日から3月8日まで6日連続で取引時間中の史上最安値を更新してきたが週明けもこの流れは変わらず7日連続の史上最安値更新となり、1ドル32リラ台に初めて到達した。終値としても3月7日終値31.86リラを超えて史上最安値を更新した。
リラ安に歯止めがかからなくなっており、週間では昨年12月15日の週から先週まで13週連続のドル高リラ安、1月26日の週から7週連続で取引時間中の史上最安値を更新してきたが、今週もすでに取引時間中の最安値を更新してリラ安の勢いはさらに増している印象だ。
3月11日夕刻にトルコ統計局が発表した1月失業率は9.1%で12月の8.9%から悪化した。1月の小売売上高は前月比2.6%増で12月の1.6%増を上回ったが、前年同月比は12月の14.0%増から13.3%増へ低下した。3月12日は1月の鉱工業生産と経常収支の発表がある。
【フィッチの格上げもリラ安の歯止めにならず】
格付け大手のフィッチ・レーティングスは3月8日にトルコの信用格付けを従来の「B」から「B+」に引き上げ、格付け見通しを「安定的」から「ポジティブ」に引き上げた。同社は2023年のエルドアン大統領三選後に金融政策の方向転換がなされたことで政策への信頼性が増していることを格上げの根拠としたが、市場は積極的な反応を見せないまま週明けに史上最安値更新へ進んでいる。
トルコのシムシェキ財務相は3月11日にフィッチが格上げしたことを歓迎し、財務相としては「トルコ中銀によるインフレ抑制政策を支援するため、今後も財政政策を引き締める」と述べた。しかし、中銀はインフレ抑制のための利上げは終了したとし、インフレ抑制対策としては金融機関による貸し出し基準を厳しくすることで対応しており、3月31日にトルコの統一地方選挙があるため、選挙前は追加利上げ等の強力な政策は打ち出し難い時期でもある。
中銀や財務相は今年前半にインフレはピークとなり年後半に低下するとの楽観見通しを示しているものの、現状はそうした楽観見通しを揺るがすようにインフレ進行が続いている。地方選挙明けの4月に再利上げできるのか試されるが、これ以上の利上げがトルコ経済には大きな打撃となることも懸念されるため、中途半端な利上げないし利上げ見送りの場合にはリラ売りが現状よりも加速してゆく可能性があると思われる。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
トルコリラ円の概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、3月4日午前に一段安してからいったん戻して再び軟調な推移に入ったため、3月5日午前時点では3月4日午前安値を直近のサイクルボトムとして4.75円割れから新たな弱気サイクル入りとし、3月6日午前への下落で4.75円を割り込んだために3月4日午後高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして7日午前から11日午前にかけての間への下落を想定した。
3月11日夕刻へ安値を切り下げてからも安値圏にとどまっているため、3月7日夜を直近のサイクルボトムとしてすでに底割れから新たな弱気サイクル入りしていると考え、12日夜から14日夜にかけての間への下落を想定する。強気転換には4.62円を超える反騰が必要と思われる。
60分足の一目均衡表では一時的な高値時を除いて先行スパンを下回る状況が続いているため遅行スパン悪化中は安値試し優先としてきたが、両スパンそろっての悪化が続いているので遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところから下げ再開とし、連続的な上昇で先行スパンを上抜くところからは反騰継続とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は3月12日早朝に40ポイント台後半へ戻したものの50ポイント台に届かず失速気味のため、30ポイント割れからは10ポイント台への低下を伴う下落を想定する。50ポイント超えからはいったん戻しに入るとみるが60ポイント前後では戻り売りにつかまりやすいとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、4.56円を下値支持線、4.61円を上値抵抗線とする。
(2)一時的な上昇を除いて4.61円を下回るうちは一段安警戒とし、4.56円割れからは4.52円前後への下落を想想定する。4.52円以下は反発注意とするが、4.60円を割り込んでの推移か直前安値から0.04円を超える反騰がみられないうちは13日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)4.60円から4.61円にかけては売り有利とし、その後に4.58円を割り込むところから下げ再開及び一段安を想定する。
【当面の主な予定】
3月12日
16:00 1月 経常収支 (12月 -20.91億ドル)
16:00 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 2.4%)
16:00 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 1.6%)
3月14日
20:30 週次 外貨準備高 3月8日時点 グロス (3月1日時点 805.1億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 3月8日時点 ネット (3月1日時点 205.0億ドル)
3月15日
17:00 2月 財政収支 (1月 -1507.2億リラ)
3月20日
16:00 3月 消費者信頼感指数 (2月 79.3)
23:30 2月 中央政府債務 (1月 6兆9650億リラ)
3月21日
20:00 トルコ中銀金融政策委員会 政策金利 (現行 45.0%)
20:30 週次 外貨準備高 3月15日時点
注:ポイント要約は編集部
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