「イタリア国民投票」憲法改正否決と今後

4日、イタリア・レンツィ首相は、自身が提唱した憲法改正が国民投票で否決され辞意を表明。

「イタリア国民投票」憲法改正否決と今後

4日の国民投票で憲法改正が否決され、イタリア・レンツィ首相は辞意を表明

レンツィ首相辞意表明、憲法改正による中央集権化に失敗

4日、イタリア・レンツィ首相は、自身が提唱した憲法改正が国民投票で否決され辞意を表明。
イタリアは改革志向の強力な政権を欠いた事になり、前途は厳しいと見ます。
極めて短期間で交代を繰り返して来た歴代のイタリア首相に比べ、現レンツィ首相は高い支持率を背景に比較的長く就任していました。だからこそ、かねてからの懸案である憲法改正を国民投票にまで持ち込めたのですが、そのレンツィ首相をもってしても駄目だったとは驚きです。

イタリア議会は上院と下院の権限がほぼ同等で、立法に両院の承認が必要等で手続きが滞りやすいのです。
歴代のイタリア首相は多くが極めて短命で政治的に不安定とされたのはこの制度の為とされています。
今回の憲法改正とは、下院の権限強化を狙ったもので、改正案では、上院定数320人から100人への削減、内閣不信任の権限喪失など相対的に上院の権限を弱くする内容で、一部法律を除き、下院の承認だけで法案可決を可能とするものでした。

今年三度目の既成政治の敗北、ユーロ懐疑派の台頭は必至か

レンツィ首相の敗北は、
1. 欧州連合(EU)離脱を決めた6月の英国民投票、
2. 11月の米大統領選でのトランプ氏勝利に次いで、
3. 今年3度目の既成政治の敗北です。

イタリア国民はレンツィ氏のリベラル的な経済政策に否決を下したのだと見ます。レンツィ氏が2014年に就任して以来進めてきた政治改革が水泡に帰す訳ですが、この改革は、イタリアを低成長という泥沼から引っ張り出すために不可欠なものだとされてきましたから。
この今年3度目の政治的な激震は、EUの先行きにも不透明感を増すと懸念されます。そうなれば、イタリア政権の弱体化は避けられず、「5つ星運動」などユーロ懐疑派の政党が影響力を増し、イタリア政治の不安定化は避けられません。それを織り込み先取りする格好で、既にローマ市やトリノ市では「5つ星運動」所属の市長が誕生しています。
「5つ星運動」幹部は、イタリア旧通貨リラへの回帰を提唱し、政権を握ればユーロ圏からの離脱を問う国民投票を実施するとしています。

イタリアの金融危機深刻化の懸念も

イタリアが最初に取り組むべきは銀行問題です。
長年の低成長により、同国の銀行は多額の不良債権を抱え、その1つがモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(モンテ・パスキ)です。資本増強に50億ユーロの資金を必要としているものの、今回の国民投票結果を嫌気して民間投資家が資金提供を思いとどまれば、政府が資本注入する必要が出てきます。問題を抱えるイタリア系銀行8行が破綻するリスク・シナリオが急浮上してきます。このシナリオでは8行全てが破綻処理下に置かれると想定され、イタリアや欧州全域に金融システム不安が波及する事態、最悪のシナリオで金融危機を引き起こすと想定すべきでしょう。

次の問題は、どのような新政権が誕生するかです。
最も確率が高いのは、左右の政党が協力し、新たな内閣を組むというシナリオですが、レンツィ氏が舞台裏で手を貸そうとする可能性はあるものの、彼の影響力は大幅に弱まってしまいました。
イタリアが混乱に陥るとは限らないのですが、1年間は政局不透明感が続き、改革は後退し、成長は弱まる確率が高まりました。経済は長期低迷から抜け出せず、過激な「五つ星運動」が勢いを増しているイタリアは要注意の国となりました。
ユーロ圏第3の経済大国イタリアで、もし政変が起きればその影響は、英EU離脱Brexitの国民投票の比ではないとの意見もあります。しかも、来年はフランスやドイツの国政選挙が相次ぐわけで、2017年春のフランス大統領選には極右政党「国民戦線」ルペン党首が挑むとされ、ユーロ枢軸のフランスで反EUの動きが強まれば、欧州発の金融不安リスクが高まります。

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