ECB理事会(1月25日開催)のポイント: 利下げ開始時期は本当に「夏」か?
【今回のポイント】
〇 4.5%の政策金利は現状維持
〇 利下げに関する検討を行っている点は発言
〇 利下げ開始時期は「夏」と発表すればユーロ売りか
【市場コンセンサスは何?】
1月25日に欧州中央銀行(ECB)理事会が開催される。市場コンセンサスは下記の二点と考える。
・政策金利4.50%の据え置き
・年内利下げ検討には言及
ECBが設定している政策金利4.5%は、ユーロ誕生以降、過去最高である。昨年12月14日に開催されたECB議事録では、「利下げ」に関する議事録は無かった。前回の会合では、「タカ派」との見方が強まり、足元のユーロは160円台で推移しているが、足元開催されたダボス会議にて、ラガルドECB総裁は「夏までに利下げの可能性」と時期に言及したことから、今会合では最低でも「年内利下げ検討」に関する発言はあるとの見通しだ。
【前回議事録】
・コミュニケーションにおけるデータ依存アプローチの重要性を再確認
・市場の期待は見通しと一致していない
・インフレ率低下は心強いもの、広範囲に及んでいる
・自己満足する余地はなく、今は警戒を解くべきではない
・インフレがおそらく短期的に上昇することに注意必要
・インフレとの闘いの勝利を確信するには時期尚早
・引き続き警戒と忍耐が必要、しばらくの間は制限的スタンスを維持する必要
・メンバーはインフレ率が2025年に2%目標に戻ると自信強めた
【何がサプライズになる?】
今回のECB理事会のポイントは、利下げ開始の時期となろう。
世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席したラガルド総裁は、一部メディアに対して、「今夏に利下げを行う可能性が高い」との見解を示した。ただ、同時に「慎重さは必要で、政策決定はデータ次第だ。なおも一定水準の不確実性があり、一部統計は我々が望む水準で安定していない」と早期の利下げ観測をけん制した。
物価に大きな影響を及ぼす賃金交渉やエネルギー価格の動向、供給混乱の再燃を警戒する姿勢を示した。
一方、ビルロワデガロー・フランス中銀総裁は「インフレに対する勝利を宣言するには早すぎる」「2024年のいつ利下げするのについて語ることは時期尚早」と慎重姿勢を崩していない。
ユーロ圏の12月インフレ率は前年同月比2.9%と、前月(11月)の2.4%より加速した。一方、2023年のドイツ実質GDP(速報値)は前年比−0.3%と厳しい状況にある。名目GDPで日本を抜いて世界3位になったドイツだが、高インフレと高コストで製造業の国際競争力が低下している。
ラガルドECB総裁が、ダボス会議で発した「夏」という利下げのタイミングが、今回のECB理事会でどのように議論されて、どのように理事会のコンセンサスとして発表されるかに注目だ。
ラガルドECB総裁以外のECB理事会関係者の発言を見ると、慎重論もそれなりに多いことから、「夏」発言のラガルドECB総裁は比較的「ハト派」なのかもしれない。
【では、ユーロはどう動く?】
〇コンセンサス通りだった場合
利下げ開始時期を「明言しない」もしくは「第4四半期(10−12月)以降」という発表となった場合、いったんユーロは主要通貨に対して買いで反応するだろう。
さすがに、昨年12月会合のような「まるで検討しなかった」という「タカ派」色の強い内容はないと考えるが、ラガルドECB総裁がダボス会議での「夏」発言を打ち消す発言であれば、基本的にはユーロ買いだ。
昨年11月16日の高値164円35銭の奪還は難しいが、1月19日高値161円90銭を上回り、162円台に乗せる地合いは考えておきたい。
〇サプライズだった場合
ラガルドECB総裁が「夏」発言をした後、ユーロは対円で159円から買われ161円台に乗せた。市場は早期利下げ観測が後退したと捉えたようだが、今回、ECB理事会として「夏」の利下げ開始を検討と発表した場合、早期利下げへの思惑は大幅に後退するものの、利下げが明確にわかっているユーロを積極的に買う動きも手控えられよう。
足元のユーロは、対円で1月19日に161円90銭まで上昇したが、昨年11月16日の164円35銭手前で上げ渋っている。さすがに利下げの可能性が高い通貨を積極的に買う動きは入りにくい。
サプライズとなった場合、ユーロは円に対して売りで反応しそうだ。ただ、ダボス会議の発言を受けて、「想定外」という状況はないことから、下げ幅は限定的と想定する。ユーロは昨年12月の高値水準である159円処では下げ渋ると考える。
【最近のECB関係者の発言は?】
ここ2週間以内でECB関係者の発言を拾ってみた結果をまとめると下記の通りである。
・早期の金利引き下げは時期尚早だが、タイミングは夏頃か
クノット・オランダ中銀総裁(1月17日)
「インフレは所得不平等の最大の要因の一つである」
ビルロワデガロー・フランス中銀総裁(1月17日)
「フランス経済の不透明感は払しょくされつつある」
☆「2024年のいつ利下げするのについて語ることは時期尚早」
パネッタ・イタリア中銀総裁(1月17日)
「2024年、イタリア成長率は1%未満となる見込み」
バスレ・スロベニア中銀総裁(1月17日)
「第2四半期初頭の利下げ期待は、まったく時期尚早だ」
「労働市場は引き続き力強い、賃金動向に注意必要」
クノット・オランダ中銀総裁(1月17日)
☆「今年前半の利上げの可能性は低い」
「市場が緩和的な見方をするほど、ECBが緩和を行う可能性は低くなる」
ラガルドECB総裁(1月17日)
☆「ECBは夏までに利下げの可能性」
「ECBはピーク金利に到達している」
「インフレ率はECBが望む水準にはない」
シムカス・リトアニア中銀総裁(1月16日)
「利下げについて市場より遥かに楽観的ではない」
☆「利下げは夏頃から始まる可能性」
センテノ・ポルトガル中銀総裁(1月16日)
「利下げを含む、あらゆるトピックスに対する準備が必要」
ビルロワデガロー・フランス中銀総裁(1月16日)
「今年の次の動きは利下げとすべき(利下げの時期についてはコメントせず)」
ヘロドトゥ・キプロス中銀総裁(1月15日)
☆「利下げの議論は時期早々」
ホルツマン・オーストリア中銀総裁(1月15日)
「2024年の利下げを想定するべきではない」
「地政学的な事象が物価に対するリスク」
ナーゲル・ドイツ連銀総裁(1月15日)
☆「利下げについての議論は時期尚早」
「ECBはデータに基づいて会合ごとに決定する」
「利下げを検討することは、おそらく夏休みまで待つこと可能」
シュナーベル・ECB理事(1月11日)
「ユーロ圏の景気後退が最悪期を脱したとしても、景気は厳しい見通し」
デギントス・ECB副総裁(1月10日)
「昨年は急速なディスインフレがみられたが、今年はペースが鈍化」
「年初には一時的にディスインフレが停止する可能性が高い」
センテノ・ポルトガル中銀総裁(1月9日)
「緩和は5月まで待つ必要はないと思う」
ブイノッチ・クロアチア中銀総裁(1月8日)
☆「利下げに関する議論は、おそらく夏より前には行われないだろう」
【2024年スケジュール】
※米国は現地時間なので、金利発表及び記者会見は日本時間で翌日未明
日銀金融政策決定会合(日銀会合)
1月22日−23日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持する見通し
3月18日−19日
4月25日−26日(経済・物価情勢の展望)
6月13日−14日
7月30日−31日(経済・物価情勢の展望)
9月19日−20日
10月30日−31日(経済・物価情勢の展望)
12月18日−19日
米連邦公開市場委員会(FOMC)
1月30日−31日
3月19日−20日
4月30日−5月1日
6月11日−12日
7月30日−31日
9月17日−18日
11月 6日− 7日
12月17日−18日
欧州中央銀行理事会(ECB理事会)
1月25日・・・政策金利維持も年内利下げ開始には言及か?
3月 7日
4月11日
6月 6日
7月18日
9月12日
10月17日
12月12日
オーダー/ポジション状況
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