『下落基調に歯止め効かず。対ドル相場は史上最安値を大幅更新』
〇今週のトルコ円、円安進行、トルコ指標の好調、トルコ株の上昇に週後半にかけ4.90まで上昇
〇買い一巡後は、対ドルでの史上最安値大幅更新、JPモルガンの見通し下方修正等に4.78まで反落
〇トルコ円、依然史上最安値圏での上値の重い展開続く
〇対ドルでの心理的節目30.0を突破、テクニカルの地合い極めて弱い
〇ファンダメンタルズもトルコ経済先行き不透明感、インフレ昂進懸念等が重石
〇引き続き、トルコリラ円相場の続落をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(TRYJPY):4.65ー4.95
今週のレビュー(1/8−1/12)
今週のトルコリラ円相場(TRYJPY)は、週初4.85円で寄り付いた後、(1)ドル円相場の堅調推移(本邦11月毎月勤労統計の現金給与総額および実質賃金総額の市場予想を大幅に下回る結果→日銀によるマイナス金利の解除時期の後ずれ観測再浮上→対主要通貨での円売り再開→ドル円・クロス円上昇→トルコリラ円連れ高)や、(2)トルコ株の力強い動きが支援材料となり、週後半にかけて、週間高値4.90円まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(3)トルコ11月鉱工業生産(結果▲1.4%、前回▲0.4%)の冴えない結果(5ヵ月連続のマイナス成長)や、(4)トルコ11月失業率(結果9.0%、前回8.5%)の大幅悪化、(5)米12月消費者物価指数および同コア指数の市場予想を上回る結果(米FRBによる利下げ開始時期の後ずれ観測→トルコから米国への資金流出懸念再燃→トルコリラの対ドル相場が史上最安値を大幅更新)、
(6)JPモルガンによるトルコリラ見通しの下方修正が重石となり、週末にかけて、週間安値4.78円まで反落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間1/13午前2時15分現在)では、4.81円前後で推移しております。尚、今週はエルカン総裁(※ニューヨークでの海外投資家向けプレゼンテーション)より「トルコはディスインフレの達成に全力で取り組んでおり、金融政策の引き締めサイクルができるだけ早く完了することを期待している」「トルコは外貨準備の増加を慎重に継続し、そのプロセスは資本流入の加速によって支援されるだろう」との発言が見られました、市場の反応は限られました。
来週の見通し(1/15−1/19)
トルコリラの対円相場(TRYJPY)は、史上最安値近辺での冴えない動きが続いています。日足ローソク足が主要テクニカルポイントの下側に位置していることや、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」「弱気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の下落トレンド」が継続点灯していること、対ドル相場の史上最安値更新が続いていること(対ドル相場は市場で意識されていた心理的節目30.0の大台をついにブレイク)等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは「極めて弱い」と判断できます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)トルコ経済の先行き不透明感(今週発表された鉱工業生産および失業率は軒並み冴えない結果)や、(2)トルコ国内におけるインフレ昂進懸念(先週発表されたCPIおよびPPIはいずれも前月比で大幅に上昇→トルコ中銀は昨年6月以降で計3400bpもの利上げに踏み切っているがインフレ抑制に繋がらず)、(3)上記2を背景としたトルコリラの実質金利のマイナス幅拡大懸念(政策金利42.5%に対して直近で発表されたCPIは64.9%→実質金利は▲22.4%と構造的なリラ売り要因が残存)、(4)トルコ中銀の利上げサイクル終了の思惑(トルコ中銀は昨年12月に開催した金融政策決定会合で「引き締めサイクルをできるだけ早く完了させる」とのハト派的な見解を発表。今週後半にはエルカン総裁からも「トルコはディスインフレの達成に全力で取り組んでおり、金融政策の引き締めサイクルができるだけ早く完了することを期待している」との発言あり)、
(5)米FRBによる利下げ開始時期の後ずれ観測(米当局者によるタカ派的な発言や、直近で発表された米雇用統計および米CPIの市場予想を上回る結果を受けて、米FRBによる3月利下げ観測が後退→トルコから米国への資金流出懸念再燃)など、トルコリラ円相場の下落を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、トルコリラ円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(TRYJPY):4.65ー4.90
注:ポイント要約は編集部
トルコ円日足
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