『日銀によるマイナス金利解除時期の後ずれ観測がドル円を下支え』
〇今週のドル円、週初の143.43まで下落後、週後半にかけて週間高値146.41まで急伸
〇日銀の緩和長期化観測、日経平均の大幅上昇、米CPIの予想上回る結果等が背景
〇買い一巡後は、反動売りと米PPIの予想下回る結果に145円割れに反落
〇ユーロドル1.09台での方向感に欠ける動きに終始
〇ドル円、主要テクニカルポイント上抜け、11月高値151.91からの下落の半値戻しも達成、地合い好転
〇ファンダメンタルズも日米金利差拡大、新NISA開始による外貨需要増加期待がドル円をサポート
〇引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):143.50ー147.50、(EURUSD):1.0775−1.1075
今週のレビュー(1/8−1/12)
<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初144.60で寄り付いた後、(1)米12月ニューヨーク連銀1年後期待インフレ率(結果3.0%、前回3.4%)、3年後期待インフレ率(結果2.6%、前回3.0%)、5年後期待インフレ率(結果2.5%、前回2.7%)の前回比低下や、(2)米金利低下に伴うドル売り圧力、(3)本邦輸出企業(連休明け輸出企業)の実需のドル売りが重石となり、アジア時間朝方にかけて、安値143.43まで下落しました。
しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(4)200日移動平均線を背にした押し目買い圧力や、(5)ボウマンFRB理事による「インフレ率の低下が停滞する場合には依然として利上げの用意がある」「インフレの上振れリスクが依然残る」とのタカ派的な発言、(6)本邦11月毎月勤労統計の現金給与総額(結果0.2%、予想1.5%、前回1.5%)および、本邦11月実質賃金総額(結果▲3.0%、予想▲2.0%、前回▲2.3%)の市場予想を大幅に下回る結果、(7)上記6を背景とした日銀による金融緩和の長期化観測(物価高に賃金上昇が追い付けていない状況が明らかとなったことでマイナス金利解除は時期尚早との見方が再燃→対主要通貨での円売り再開)、(8)日経平均株価の大幅上昇(リスク選好の円売り圧力)、
(9)米新規失業保険申請件数(結果20.2万件、予想21.0万件)の良好な結果、(10)米12月消費者物価指数(結果+3.4%、予想+3.2%)および、同コア指数(結果+3.9%、予想+3.8%)の市場予想を上回る結果、(11)上記10を背景とした米FRBによる利下げ開始時期の後ずれ観測(米金利上昇→米ドル急伸)、(12)テクニカル的な地合いの強さ(昨年11/13高値151.91と昨年12/28安値140.25を起点としたフィボナッチ半値戻し146.08の上方ブレイク)が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値146.41まで急伸しました。
もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(13)急ピッチな上昇に対する反動売りや、(14)米12月生産者物価指数(結果+1.0%、予想+1.3%)および、同コア指数(結果+1.8%、予想+2.0%)の市場予想を下回る結果、(15)米金利低下に伴うドル売り圧力が重石となり、本稿執筆時点(日本時間1/13午前2時45分現在)では、144.93前後まで値を崩す展開となっております。尚、今週は週後半にかけて、クリーブランド連銀メスター総裁より「12月CPIの結果は我々の仕事がまだ終わっていないことを示唆」「3月利下げは早すぎる」との見解が示されましたが、市場の反応は限られました。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0946で寄り付いた後、(1)ユーロ圏12月消費者信頼感(結果▲15.0、予想▲15.1)の市場予想を上回る結果や、(2)ユーロ圏11月小売売上高(結果▲1.1%、予想▲1.5%)の市場予想を上回る結果、(3)米12月ニューヨーク連銀期待インフレ率の急低下、(4)米金利低下に伴うドル売り圧力が支援材料となり、週明け早々に、一時1.0979まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(4)ドイツ11月鉱工業生産(結果▲0.7%、予想+0.3%)の市場予想を大幅に下回る結果や、(5)ポルトガル中銀センテノ総裁による「緩和の時期が近づいている」とのハト派的な発言、(6)欧州株の冴えない動き、(7)ロンドンフィキシングに絡むドル買い圧力が重石となり、翌1/9にかけて、週間安値1.0910まで反落しました。
もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(8)シュナーベルECB専務理事による「It is too early to discuss rate cuts(利下げを協議するには時期尚早)」とのタカ派的なコメントや、(9)上記8を背景としたECBによる利下げ開始時期の後ずれ観測(欧州債利回り上昇に伴うユーロ買い圧力)、(10)ドイツ11月経常収支(結果308億ユーロ黒字、前回200億ユーロ黒字)の黒字幅拡大が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値1.0991まで反発しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間1/13午前2時45分現在)では、1.0951前後で推移しております。
来週の見通し(1/15−1/19)
<ドル円相場>
ドル円は昨年12/28に記録した安値140.25(昨年7/28以来、約5カ月ぶり安値圏)をボトムに切り返すと、今週後半にかけて、一時146.41(昨年12/11以来、約1ヵ月ぶり高値圏)まで急伸しました。この間、日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日移動平均線、200日移動平均線、一目均衡表転換線、一目均衡表基準線、ボリンジャーミッドバンド)を上抜けした他、市場参加者に意識されていたフィボナッチ50.0%戻し(昨年11/13高値151.91→昨年12/28安値140.25)も達成するなど、テクニカル的に見て、地合いの好転(昨年末にかけて急速に進んだドル安・円高トレンドの終焉)を強く印象付けるチャート形状となりつつあります。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)日銀によるマイナス金利の解除時期の後ずれ観測(能登半島地震や実質賃金悪化の影響でマイナス金利解除時期が予想よりも大幅に後ずれするとの思惑浮上→対主要通貨での円売り安心感)や、(2)米FRBによる利下げ開始時期の後ずれ観測(米当局者による牽制発言や米CPIの市場予想を上回る結果を受けて米FRBによる早期利下げ観測が後退→対主要通貨でのドル買い安心感)、(3)上記1、2を背景とした日米金融政策の方向性の違いとそれに伴う円キャリートレード再開の思惑(日米金利差拡大に着目したドル買い・円売り)、(4)新NISA開始に伴う本邦個人投資家による外貨転需要(外国株投資を目的とした円売り・外貨買い)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が増えつつあります。
来週1/17に予定されている米12月小売売上高が市場予想を上回る場合や、米当局者(ウォラーFRB理事、バーFRB副議長、ボウマンFRB理事、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁、アトランタ連銀ボスティック総裁、サンフランシスコ連銀デイリー総裁など)よりタカ派的な発言が見られる場合、1/19に予定されている本邦12月消費者物価指数が市場予想を下回る場合には、「米FRBによる利下げ開始時期の後ずれ観測→日銀によるマイナス金利解除の後ずれ観測→日米金利差拡大に伴うドル買い・円売り」の経路で、ドル円に強い上昇圧力が加わる恐れもあるため、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします(昨年11/13に記録した高値151.91に向けて段階的に上値を伸ばすシナリオを想定)。
来週の予想レンジ(USDJPY):143.50ー147.50
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場(EURUSD)は、12/28に記録した高値1.1141(7/27以来、約5カ月ぶり高値圏)をトップに反落に転じると、1/5に一時1.0877まで反落しましたが、今週は幾分持ち直し、1.09台での上下動に終始しました。日足ローソク足が主要テクニカルポイントの上側に位置していることや、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「ダウ理論の上昇トレンド」が継続点灯していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは強いと判断できます。但し、ファンダメンタルズ的に見ると、(1)欧州経済の先行き不透明感(今週発表されたドイツ11月鉱工業生産は市場予想を大幅に下回る結果)や、(2)欧州当局者によるハト派的な発言(今週はクロアチア中銀ブイチッチ総裁より「金融緩和が始まれば0.25ポイントの利下げペースを支持する」とのハト派的な発言が見られた他、ラガルドECB総裁からも「インフレ率が明らかに2%に低下すれば金利は引き下げられる」「金利はピークに達した可能性が高い」とのハト派的な発言あり)、
(3)上記2を背景としたECBによる早期利下げ観測の再燃、(4)米FRBによる早期利下げ観測の後退、(5)上記3、4を背景とした欧米金利差拡大の思惑(昨年末にかけてユーロドル相場を牽引してきたハト派なFRB vs タカ派なECBの構図が崩壊→ユーロドルに下押し圧力が加わり易い環境)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が増えつつあります。来週1/16に予定されているドイツ1月ZEW景況感指数が市場予想を下回る場合や、欧州当局者(オーストリア中銀ホルツマン総裁、フランス中銀ビルロワドガロー総裁、スロベニア中銀バスレ総裁、リトアニア中銀シムカス総裁、クロアチア中銀ブイチッチ総裁、オランダ中銀クノット総裁、ラガルドECB総裁、ドイツ連銀ナーゲル総裁など)よりハト派的な発言が見られる場合には、欧州債利回り低下→ユーロ売りの経路で、ユーロドルにもう一段強い下押し圧力が加わる恐れもあるため、当方では引き続き、ユーロ売り・ドル買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0775−1.1075
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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