米PPI鈍化で下落、1月9日安値からの底上げ基調を維持できるか試される
〇先週のドル円、米12月CPIの予想以上の上昇に146.40をつけ年初来高値を更新
〇その後はコアCPIの伸びの鈍化、米PPIの鈍化等に144円台前半まで反落、145円前後での推移
〇テクニカルには11/13高値151.90からの下落の半値戻し146.07に一時到達するも伸び悩む
〇ドル円は日米金融政策姿勢の相違と温度差を見ながら円安、ドル安双方の可能性が交錯しているところか
〇145円台序盤に留まるうちは一段安余地あり、144.3円割れから144.00、143.70、143.41を順次試す
〇145.55超えからは上昇基調継続、146.40声を目指す上昇を想定
【概況】
ドル円は1月11日夜の米12月CPI上昇率で全体の前年比が11月の3.1%を上回る3.4%となったため発表直後に146.40円を付けて1月5日夜の米12月雇用統計発表直後に付けた高値145.96円を超えて年初来高値を更新したが、コアCPIの伸びは11月の4.0%から3.9%鈍化したこともあり、米長期債利回りが一時的な上昇後に低下したため上げ幅を削った。
1月12日の日中に145円を割り込んだところを繰り返し買われて下げ渋り、12日夜の米PPI(生産者物価指数)発表前に145.55円まで買い戻されていたが、12月の米PPIが全体の前年比で1.0%となり予想の1.3%より鈍化し、コアPPIも11月の2.0%から1.8%へ鈍化したため、米国の3月利下げ開始期待度が再び拡大したとして米長期債利回り低下とドル安反応を招き、ドル円は13日未明安値144.35円まで直前高値からは1円を超える下落となり、売り一巡後も145円前後で上値が抑えられ週を終えた。
【米12月PPIは予想以上の鈍化】
米労働省が発表した12月のPPI(生産者物価指数)上昇率は全体の前月比がマイナス0.1%となり11月の0.0%から鈍化して市場予想の0.1%を下回り、前年同月比は1.0%で11月の0.9%を上回ったものの市場予想の1.3%を下回った。食料品とエネルギーを除くコア指数の前月比は0.0%で11月と変わらなかったが市場予想の0.2%を下回り、前年同月比は1.8%で11月の2.0%から鈍化して市場予想の1.9%を下回った。
コア指数の前月比は3か月連続で0.0%、前年同月比の1.8%は2020年12月以来の小幅な伸び率だった。
米国の3月FOMCにおける利下げ開始期待度は昨年末には9割まで上昇していたが、1月11日夜発表の米CPIが予想を上回る上昇率だったことで6割台まで低下していた。しかし12日のPPI発表を受けて8割程度まで再上昇している。
米FOMCは12月会合での参加者予想として年内3回の利下げ想定を示したが、現状の市場期待度は3回以上、5回ないし6回との期待も出ている。
米FRBで最重視されているインフレ指標はコアPCE(個人消費支出)デフレーターであり、12月分は1月26日に発表される。12月22日に発表された11月のコアPCEデフレーターは10月の3.4%から3.2%へ鈍化、全体のPCEデフレーターは11月の2.9%から2.6%へ鈍化している。12月21日に発表された7−9月期の四半期ベースでのコアPCEデフレーターはFRBの目標とする2.0%まで低下している。12月PPIの鈍化傾向はPCEデフレーターの低下に寄与するものと市場は見ている。
【米10年債利回りは続落、ダウは最高値更新後に上げ渋り、ナスダックは連騰】
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.03%低下の3.94%で終了した。10月23日に5.02%をつけたところをピークとして12月27日の3.78%まで低下傾向を続け、年末からは大幅低下の修正で上昇に転じて1月5日には一時4.10%まで戻したが、その後は戻り一巡で失速しており、週間では1月5日終値4.05%から0.11%低下した。
30年債利回りは前日比0.01%上昇の3.94%で終了した。10月23日の5.18%をピークとして12月27日の3.94%まで低下した後は戻しているが、1月11日に一時4.25%まで戻した後は上げ渋っている。
政策金利に敏感な2年債利回りは前日比0.01%低下の4.15%で終了した。10月19日に付けた5.26%をピークとして下落に転じ、12月27日に4.23%まで低下したところから1月5日には4.49%まで戻したものの12日は12月27日安値を割り込んでの一段安となり一時は4.12%をつけている。
米国のインフレ鈍化がより顕著となり3月に利下げが開始される場合には、年末までの3%台中盤まで政策金利が低下するとの見方もあるため、2年債利回りその他もまだ低下余地がかなりあるとみられる。
一方でNYダウは前日比118.04ドル安と下落したが、高値で37825.27ドルを付けて1月11日に続いて史上最高値を更新しており、騰勢を維持しつつ利益確定売りにやや下げたという印象だ。ナスダック総合指数は前日比2.57ポイント高と小幅ながら1月5日以降の連騰を6営業日に伸ばしている。金融緩和時代到来を先取りして米国株式市場先高期待は健在のようだ。
【11月13日からの下げ幅に対する半値戻しに到達】
ドル円は1月11日高値で146.40円を付けて12月28日安値140.24円からの上昇幅は6.16円となり、11月13日高値151.90円から12月28日までの下げ幅11.66円に対する半値戻しラインの146.07円を超えた。
11月13日からの下落角度は2022年10月21日高値151.94円を起点として2023年1月16日安値127.22円まで下げ幅が24.73円となった時に近いものがあったが、2022年10月21日からの下落時には5円前後の中間反騰を入れながらも戻り売りにつかまっては一段安を繰り返してきた。日足の一目均衡表では26日基準線が上値抵抗線となりザラバで同線を超えても終値ベースでは超えられずに下落基調を続けた。
しかし今回は6円を超える反発であり、26日基準線を超えてきている。昨年1月16日安値からの反騰入りは、26日基準線を超え、遅行スパンが好転し、先行スパンへ潜り込むところから上昇感を強めており、現状はまだ遅行スパンの好転には至らず、先行スパンの下限に到達したところにある。遅行スパンは横ばい程度でも好転しやすい位置にあり、145円割れを買われてしっかりするなら先行スパンへ潜り込み始め、1月11日高値146.40円を超えてくれば先行スパンも突破してくる。
米国の早期利下げ期待はあるもののまだ開始時期ははっきりせず市場の期待が先行している状況にあるため、今後のインフレ指標次第では利下げ開始時期が後退する可能性がある。一方で日銀は春闘を見ながらマイナス金利を解除したいところではあるが能登半島大地震の影響や低成長の中で実質賃金及び消費支出の低迷もあるために金融緩和を継続せざるを得ない側面もある。
ドル円としては日米金融政策姿勢の相違と温度差を見ながら円安優先で進む可能性と、ドル安優先で進む可能性が交錯しているところと思われる。1月11日高値を超える場合は円安優先の流れと仮定して昨年11月からの下げ幅に対する3分の2戻しラインの148.01円を目指す上昇を想定し、12月28日からの戻り幅の半値(現時点では143.32円)を削るところからは戻り一巡による下げ再開の可能性とドル安優勢での流れへ進むと仮定したい。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、1月13日未明安値144.35円を下値支持線、1月12日夜高値145.55円を上値抵抗線とする。
(2)145円台序盤に留まるうちは一段安余地ありとし、144.35円割れからは144.00円、143.70円、1月9日安値143.41円順次試してゆく下落を想定する。143.41円割れを回避するなら12月29日未明安値を起点とした底上げ基調の上昇トレンド継続とみて年初来高値更新へ上昇を再開する可能性があるとみるが、143.41円を割り込む場合は戻り一巡による下落期入りの可能性が高まるとみる。
(3)145.55円超えからは上昇基調継続とみて1月11日夜高値146.40円超えを目指して行く上昇を想定し、先行きは147円、148円を順次試して行く可能性も出てくると考える。
【当面の予定】
1/15(月)
休場 米国(キング牧師生誕記念日)
世界経済フォーラムWEF=ダボス会議年次総会(1/19まで)
08:50 (日) 12月 マネーストックM2 前年同月比 (11月 2.3%)
19:00 (欧) 11月 鉱工業生産 前月比 (10月 -0.7%)
19:00 (欧) 11月 鉱工業生産 前年同月比 (10月 -6.6%)
19:00 (欧) 11月 貿易収支・季調済 (10月 109億ユーロ)
19:00 (欧) 11月 貿易収支・季調前 (10月 111億ユーロ)
1/16(火)
08:30 (豪) 1月 ウエストパック消費者信頼感指数 (12月 82.1)
08:50 (日) 12月 国内企業物価指数 前月比 (11月 0.2%、予想 -0.1%)
08:50 (日) 12月 国内企業物価指数 前年同月比 (11月 0.3%、予想 -0.3%)
16:00 (独) 12月 CPI(消費者物価指数)・改定値 前月比 (速報 0.1%)
16:00 (独) 12月 CPI(消費者物価指数)・改定値 前年同月比 (速報 3.7%)
16:00 (英) 11月 失業率(ILO方式) (10月 4.2%)
19:00 (独) 1月 ZEW景況感 (12月 12.8)
19:00 (欧) 1月 ZEW景況感 (12月 23.0)
22:30 (米) 1月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (12月 -14.5、予想 -2.7)
25:00 (米) ウォラーFRB理事、講演
1/17(水)
11:00 (中) 10-12月期 GDP 前期比 (7-9月 1.3%、予想 1.0%)
11:00 (中) 10-12月期 GDP 前年同期比 (7−9月 4.9%、予想 5.2%)
11:00 (中) 12月 小売売上高 前年同月比 (11月 10.1%、予想 8.0%)
11:00 (中) 12月 鉱工業生産 前年同月比 (11月 6.6%、予想 6.6%)
16:00 (英) 12月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (11月 -0.2%)
16:00 (英) 12月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (11月 3.9%、予想 3.8%)
16:00 (英) 12月 コアCPI 前年同月比 (11月 5.1%)
16:00 (英) 12月 RPI(小売物価指数) 前年同月比 (11月 5.3%)
19:00 (欧) 12月 HICP(消費者物価指数)・改定値 前年同月比 (速報 2.9%)
19:00 (欧) 12月 コアHICP・改定値 前年同月比 (速報 3.4%)
22:30 (米) 12月 小売売上高 前月比 (11月 0.3%、予想 0.4%)
22:30 (米) 12月 小売売上高・除自動車 前月比 (11月 0.2%、予想 0.2%)
22:30 (米) 12月 輸入物価指数 前月比 (11月 -0.4%、予想 -0.7%)
22:30 (米) 12月 輸出物価指数 前月比 (11月 -0.9%、予想 -0.7%)
23:00 (米) バーFRB副議長、講演
23:00 (米) ボウマンFRB理事、講演
23:15 (米) 12月 鉱工業生産 前月比 (11月 0.2%、予想 -0.1%)
23:15 (米) 12月 設備稼働率 (11月 78.8%、予想 78.6%)
24:00 (米) 11月 企業在庫 前月比 (10月 -0.1%、予想 -0.1%)
24:00 (米) 1月 NAHB住宅市場指数 (12月 37、予想 39)
24:15 (欧) ラガルドECB総裁、WEFセッション参加
27:00 (米) 財務省20年債入札
28:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
29:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
1/18(木)
08:50 (日) 11月 機械受注 前月比 (10月 0.7%、予想 -0.9%)
08:50 (日) 11月 機械受注 前年同月比 (10月 -2.2%、予想 -0.6%)
09:30 (豪) 12月 新規雇用者数 (11月 6.15万人、予想 1.50万人)
09:30 (豪) 12月 失業率 (11月 3.9%、予想 3.9%)
13:30 (日) 11月 鉱工業生産・確報値 前月比 (10月 -0.9%)
13:30 (日) 11月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (10月 -1.4%)
13:30 (日) 11月 設備稼働率 前月比 (10月 1.5%)
18:00 (欧) 11月 経常収支・季調済 (10月 338億ユーロ)
19:00 (欧) 11月 建設支出 前月比 (10月 -1.0%)
19:00 (欧) 11月 建設支出 前年同月比 (10月 -0.7%)
21:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
21:30 (欧) ECB(欧州中銀)理事会議事要旨
22:30 (米) 12月 住宅着工件数・年率換算 (11月 156.0万件、予想 141.7万件)
22:30 (米) 12月 住宅着工件数 前月比 (11月 14.8%、予想 -9.2%)
22:30 (米) 12月 建設許可件数・年率換算 (11月 146.0万件、予想 148.1万件)
22:30 (米) 12月 建設許可件数 前月比 (11月 -2.5%、予想 1.0%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.2万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 183.4万人)
24:15 (欧) ラガルドECB総裁、WEFセッション参加
25:00 (米) EIA週間石油在庫統計
25:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
27:00 (米) 財務省10年インフレ連動債入札
1/19(金)
08:30 (日) 12月 全国CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (11月 2.8%、予想 2.5%)
08:30 (日) 12月 全国CPI・生鮮食料品除く 前年同月比 (11月 2.5%、予想 2.3%)
08:30 (日) 12月 全国CPI・生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (11月 3.8%、予想 3.7%)
13:30 (日) 11月 第三次産業活動指数 前月比 (10月 -0.8%)
16:00 (独) 12月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (11月 -0.5%)
16:00 (英) 12月 小売売上高 前月比 (11月 1.3%)
16:00 (英) 12月 小売売上高 前年同月比 (11月 0.1%)
16:00 (英) 12月 小売売上高・除自動車 前月比 (11月 1.3%)
16:00 (英) 12月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (11月 0.3%)
19:00 (欧) ラガルドECB総裁、ゲオルギエバIMF専務理事等WEFセッション参加
24:00 (米) 1月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (12月 69.7、予想 68.0)
24:00 (米) 12月 中古住宅販売件数・年率換算 (11月 382万件、予想 384万件)
24:00 (米) 12月 中古住宅販売件数 前月比 (11月 0.8%、予想 0.5%)
1/20(土)
03:00 (米) バーFRB副議長、講演
06:15 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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来週の為替相場見通し『トランプトレードと円キャリーの組み合わせがドル円を下支え』(11/23朝)
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2024.01.13
来週の為替相場見通し:『日銀によるマイナス金利解除時期の後ずれ観測がドル円を下支え』(1/13朝)
ドル円は昨年12/28に記録した安値140.25をボトムに切り返すと、今週後半にかけて、一時146.41まで急伸しました。
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