ドル/トルコリラは連日の最安値更新、円高も重なり4.80円を割り込む
〇トルコ円、12/28午前序盤に4.80を割り込み、夕刻に4.76まで下げてから12/29早朝に4.81まで戻す
〇しかし12/29午前序盤にはドル高リラ安がさらに進んだことで、4.70まで一段安
〇対ドル、12/28は概ね29.48から29.21の取引レンジ、取引時間中及び終値の史上最安値を連日更新
〇外貨準備高は増加基調を継続し、大幅に増加
〇4.83以下での推移中は一段安余地ありとし、4.75割れからは11/29午前序盤安値4.70試しとする
〇4.83超えからは、4.85前後への上昇を想定する
【概況】
トルコリラ円の12月28日は概ね4.83円から4.76円の取引レンジ、29日早朝の終値は4.80円で前日終値の4.82円からは0.02円の円高リラ安だった。
ドル/トルコリラで連日の史上最安値更新となる中、ドル円も27日深夜に142円台中心の持ち合いから転落したことで円高が加速して29日未明には140.24円まで一段安したため、トルコリラ円は4.76円まで史上最安値を更新し、29日午前序盤にドル高リラ安が一段と進行したことで9時台には4.70円まで一時的に下げている。
ドル円は12月14日早朝の米FOMCが来年3回の利下げ見通しを示したことによるドル売りで14日未明の145円台序盤から14日午後安値140.99円へ大幅下落したが、12月19日に日銀が金融緩和政策の維持を決定したことによる円売りで19日夜には144.95円まで戻した。しかし来春の米国利下げ期待によるドル売りが勢いついたことで戻り売りされて22日には安値で141.87円を付けて日銀会合後の上昇を解消し、クリスマス休場を挟んで142円台中心の持ち合いで小動きとなっていたが、27日深夜からの下落が続いて29日未明には140.24円を付けて12月14日安値を割り込み11月13日高値151.90円以降の最安値を更新した。急落後の買い戻しで29日午前は141円台中盤へ戻しているが、日米金利差縮小傾向を踏まえて円高が継続しやすい状況が続いている。
トルコリラ円は12月19日夜高値4.98円から22日午前に4.85円へ下落して史上最安値を更新し、26日午前にはドル高リラ安に圧されて4.83円へ安値を更新、27日早朝に4.90円まで戻してから再び失速して28日午前序盤には4.80円を割り込んだ。
12月28日夕刻に4.76円まで下げてから29日早朝に4.81円まで戻したものの29日午前序盤にはドル高リラ安がさらに進んだことで4.70円まで一段安している。
円高と対ドルでのリラ安が交互にトルコリラ円を押し下げて史上最安値更新が止まらない状況だ。年明けから市場心理が変わるのかどうか注目されるが、1月3日のトルコCPI、1月5日の米雇用統計等がそのきっかけになるのか注目したいが、過去もリラ暴落時のような急落商状に陥る可能性も抱えていると注意したい。
【対ドルでは取引時間中及び終値の史上最安値を連日更新】
ドル/トルコリラの12月28日は概ね29.48リラから29.21リラの取引レンジ、29日早朝の終値は29.41リラで前日終値の29.37リラから0.04リラのドル高リラ安だった。
対ドルでのトルコリラは8月24日以降の下落基調を続けており、12月21日にトルコ中銀が2.5%の追加利上げしたものの市場は利上げ不足として今後の追加利上げを催促するリラ売りを勢い付かせており、12月27日に29.41リラを付けて取引時間中の史上最安値を更新したが、28日は29.48リラをつけ、29日午前には29.65リラまで最安値を大きく更新している。
日足の終値ベースでは12月26日終値29.24リラ、27日終値29.37リラから28日に29.41リラへと3営業日連続で最安値を更新した。
エルドアン大統領再選を前後して、2023年末には1ドル30リラへ下落するとの見方が優勢で推移してきたが、12月に入ってリラ安の加速度がやや鈍ったもののトルコ中銀利上げを挟んでリラ売りが再び加速している印象であり、年明け早々にも1ドル30リラを付ける可能性があるのではないかと思われる。
【外貨準備高は順調に拡大】
12月28日夜にトルコ中銀が発表した週次の外貨準備高は12月22日時点のグロスで975.6億ドルとなり12月15日時点の954.0億ドルから増加し、ネットでは400.9億ドルとなり12月15日時点の371.8億ドルから大幅に増加した。
ネットの外貨準備高は大統領再選前の中銀による外貨準備を取り崩してリラ安を防衛しようとする市場介入が繰り返されたことで減少し、6月序盤にはマイナス57億ドルとなり過去最悪の状態となったが、エルカン総裁就任により為替市場への介入を止めて外貨準備高増加を目指す方針が掲げられたことで増加基調に入り、2020年以降の統計では最大となって400億ドルに到達した。
グロスの975.6億ドルは2020年11月の403.7億ドル以降の最大であり、2016年末以来の高水準を回復した。
外貨準備高増加は外資の信頼を高めるものであり、先行きのリラ高及び外資による投資の呼び込みに貢献するが、短期的には為替市場介入を止めたことによりリラ売りへの物理的ブレーキが掛けられないことと、リラの為替差損を補填する保護預金口座=KKMを縮小していることによるリラ保護預金から外貨預金への流出によりリラ安を助長している側面もある。
【来年1月3日のトルコ12月CPI予想は前年比65.1%への上昇】
12月28日に通信社のまとめた12月のトルコCPI上昇率に対する事前予想では、予想中央値は65.10%となり11月の61.98%から伸びが加速すると見込まれた。予想レンジは64.1%から65.8%で予想の下限でも11月から伸びる見通しとされた。前月比は3.13%と予想されて11月の3.28%から若干鈍化するものの前月比としては高い伸び率が続くと見込まれている。
トルコCPI前年比は昨年11月に85.51%まで上昇してから今年7月に38.2%まで鈍化してから再上昇している。欧米等のインフレ鈍化傾向を踏まえれば、7月以降のインフレ再加速はリラ安による通貨インフレの様相が濃いと思われる。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
トルコリラ円の概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、12月26日午前安値からの反騰で25日午前高値を超えたため、27日午前時点では12月19日午前安値から5日目となる26日午前安値を直近のサイクルボトムとし、すでに27日早朝高値でサイクルトップを付けた可能性があるとしていたが、27日深夜からの下落で26日午前安値を割り込んだため、28日午前時点では27日早朝高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして29日午前から1月3日午前にかけての間への下落を想定した。
12月29日午前へ一段安しているので引き続きボトム形成中とするが、年末年始に乱調となる可能性もあると注意し、4.83円超えからは強気サイクル入りとして30日早朝から1月3日朝にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では12月29日午前の一時急落から戻しているので遅行スパンは好転しやすい位置にあるが、先行スパンを超えないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところから下げ再開とし、強気転換は先行スパンを上抜き返すところからとする。
60分足の相対力指数は12月28日夜に20ポイント近辺へ下げてから50ポイント台いったん戻している。50ポイントを割り込んでも回復するうちは戻りを試す可能性ありとし、55ポイント超えからは60ポイント台前半への上昇を想定するが、次に40ポイントを割り込むとろからは下向きとし、20ポイント以下への低下を伴う下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、4.70円を下値支持線、4.83円を上値抵抗線とする。
(2)4.83円以下での推移中は一段安余地ありとし、4.75円割れからは29日午前序盤安値4.70円試しとし、4.70円割れからは4.65円前後への下落を想定する。
(3)4.81円から4.83円手前は戻り売り有利とみる。4.83円超えからは4.85円前後への上昇を想定するがその後の反落警戒とし、4.80円割れからは下げ再開とみる。
【当面の主な予定】
12月29日
16:00 11月 貿易収支 (10月 -65.2億ドル)
1月2日
16:00 12月 イスタンブール製造業PMI (11月 47.2)
1月3日
16:00 12月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (11月 3.28%、予想 3.13%、予想レンジ 2.50〜3.60%)
16:00 12月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (11月 61.98%、予想 65.10%、予想レンジ64.10〜65.80%)
16:00 12月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (11月 2.81%)
16:00 12月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (11月 42.25%)
1月4日
20:30 週次 外貨準備高 12月29日時点 グロス (12月22日時点 975.6億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 12月29日時点 ネット (12月22日時点 400.9億ドル)
注:ポイント要約は編集部
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