ドル円の反発で戻すもドル高リラ安の継続で4.80円台前半では上値重い
〇トルコ円、ドル円の反落を見て1/4午前序盤は4.78を一時割り込むなど反落気配
〇1/1能登大地震による日本景気への影響懸念を受けた円売りがトルコ円下支え
〇しかし対ドルでトルコリラが史上最安値更新を続けていることに圧迫されている様相
〇今週末の米雇用統計からトルコ円下落基調の流れが変わるのか試される
〇対ドル、1/4早朝終値は29.69、取引時間中及び終値ベースの史上最安値を更新
〇1/3発表のトルコ12月CPI、インフレ再加速への懸念が強まりリラ安基調継続
〇4.79以上での推移中は上昇余地ありとし、4.83超えからは4.85前後への上昇を想定
〇4.76割れからは下落期入りとみて4.74、4.72を順次試す下落を想定
【概況】
トルコリラ円の12月29日は4.83円から4.70円の取引レンジ、30日早朝の終値は4.78円で前日終値の4.80円からは0.02円の円高リラ安となり、取引時間中及び終値ベースで史上最安値を更新した。週間では12月22日終値4.85円から0.07円の円高リラ安、月間では11月30日終値5.13円から0.35円の円高リラ安、年間では昨年12月30日終値7.01円から2.23円の円高リラ安だった。
年明けは1月1日に一部取引があり4.83円から4.74円のレンジで推移して終値を4.75円として終値ベースの史上最安値を更新、1月2日は4.80円から4.75円のレンジで終値を4.77円とした。
1月3日は概ね4.83円から4.76円の取引レンジ、4日早朝の終値は4.80円で前日終値からは0.03円の円安リラ高だった。
米国の3月利下げ開始期待を背景に12月28日にかけてはドル全面安となりドル円も下落してきたが、米長期債利回りが大幅低下に対する修正で反発し、ユーロやポンドも上昇一服で下落したことでドル円は12月29日未明安値140.24円から1月4日未明高値143.72円まで反騰したが、その後は戻り一巡で失速している。
トルコリラ円もドル円の反騰に合わせて戻したものの、4.80円台前半では上値が重く、4日午前序盤にかけてはドル円の反落を見て4.78円を一時割り込むなど反落気配となっている。
昨年は5月末のエルドアン大統領再選を嫌気したリラ売りで5月26日高値7.09円から7月18日安値5.08円へ下落し、中銀による連続大幅利上げにより8月24日に5.77円までいったん戻したものの、対ドルでの史上最安値更新が止まらなかったことで11月13日にかけての円安期においても右肩下がりの展開となり、ドル円が11月13日高値151.90円から下落に転じた後は円高とリラ安の両面から売られて下げ足が速まった。
年明けは米長期債利回りが大幅低下に対する修正で反発したことと、1月1日の能登大地震による日本景気への影響懸念で円が売られたことがトルコリラ円の下支えとなったが、対ドルでトルコリラが史上最安値更新を続けていることに圧迫されている。特に12月21日のトルコ中銀による2.5%利上げを不足としてリラ安が再び加速しているため、ドル円の下げ渋り程度ではトルコリラ円の下落基調を解消できないのではないかと思われる。今週末の米雇用統計から流れが変わるのか試されるところだ。
【対ドルでは年明けも史上最安値更新続く】
ドル/トルコリラの12月29日は29.73リラから29.17リラの取引レンジ、30日終値は29.48リラで前日終値の29.41リラからは0.07リラのドル高リラとなり、取引時間中及び終値ベースで史上最安値を更新した。
週間では12月22日終値29.20リラから0.28リラのドル高リラ安、月間では11月30日終値28.86リラから0.62リラのドル高リラ安、年間では2022年12月30日終値18.69リラから10.79リラのドル高リラ安だった。
年明けは1月1日の一部取引で29.59リラから29.44リラのレンジで推移し、終値は29.54リラで終値ベースでの最安値を更新、1月2日は29.76リラから29.46リラの取引レンジで終値を29.68リラとして取引時間中及び終値ベースの最安値を更新した。
1月3日は概ね29.89リラから29.57リラの取引レンジ、4日早朝の終値は29.69リラで前日終値から0.01リラのドル高リラ安となり取引時間中及び終値ベースの史上最安値を更新した。トルコ12月CPIの発表があったがインフレ再加速への懸念が強まりリラ安基調は継続している。
昨年5月末の大統領選挙でエルドアン大統領が三選を果たし、中銀総裁に元ウォール街銀行家のエルカン氏を採用、財務相に元副首相で経済政策に対する市場の評価が高かったシムシェキ氏を採用し、「高金利は悪」としてインフレ高進中にも関わらず中銀に利下げを強要してきた従来の非伝統的な姿勢を止めて新体制における正常な政策姿勢を是認した。
中銀は6月から7会合連続で利上げを行って政策金利を8.5%から42.5%へ引き上げ、市場介入を止めて外貨準備高増加に努め、財務省は増税で財政再建を図り、大手格付け機関や外資の評価を上げてきたが、インフレ率は公式で60%を超えおり、中銀の利上げはまだ足りないとして12月21日の中銀による2.5%利上げ後はリラ売りが加速している。
1ドル30リラが目前となっているが、インフレが顕著に鈍化して大幅利上げサイクルが終了してリラ安が落ち着き、トルコ経済の強さが認められれば高金利成長通貨としてのトルコリラへの投資意欲も強まると思われるが、現状は「もうは、まだなり」の状況のようだ。
【トルコのインフレはまだ収まらず】
1月3日に発表された12月のトルコCPI(消費者物価指数)上昇率は前月比2.93%となり、11月の3.28%及び市場予想の3.13%を下回ったものの前月比としては高い伸び率だった。前年同月比は64.77%となり市場予想の65.1%を下回ったものの11月の61.98%から伸びが加速した。食料品やエネルギー等を除くコアCPI上昇率は前月比2.3%となり11月の2.0%から加速し、前年同月比は70.6%となり11月の69.9%を上回った。
12月のPPI(生産者物価指数)上昇率は前月比1.14%で11月の2.81%から鈍化したが、前年同月比は44.22%で11月の42.25%を上回った。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
トルコリラ円の概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、12月27日深夜からの下落で26日午前安値を割り込んだため、28日午前時点では27日早朝高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして29日午前から1月3日午前にかけての間への下落を想定した。
12月29日の一時的安値を除いて1月2日安値を起点として4日未明にかけて反騰したため、現状は1月2日朝安値を直近のサイクルボトムとして強気サイクル入りしたが、4日午前へ反落したことですでにサイクルトップを付けて新たな弱気サイクル入りし始めたと思われる。ボトム形成期は5日朝から9日朝にかけての間と想定するが、4日未明高値超えからは新たな強気サイクル入りとして9日未明から11日未明にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では1月4日未明への上昇で遅行スパンが好転して先行スパンも上抜いたが、その後の反落で先行スパン内へいったん潜り込んでいる。遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、遅行スパンが悪化するところからは下落期入りとし、先行スパンから転落する場合は下げ足が速まる可能性があると注意する。
60分足の相対力指数は1月3日深夜に70ポイントを超えてから50ポイント台へ反落したため、60ポイント超えからは上昇再開とみるが、相場が高値を切り上げる際に指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられる場合は反落注意とする。50ポイント割れからは下向きとし、40ポイント割れからは20ポイント台への低下を伴う下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、4.76円を下値支持線、4.83円を上値抵抗線とする。
(2)4.79円以上での推移中は上昇余地ありとし、4.83円超えからは4.85円前後への上昇を想定する。4.85円以上は反落警戒とするが、4.79円を上回っての推移なら5日も高値試しヘ向かう可能性ありとみる。
(3)4.76円割れからは下落期入りとみて4.74円、4.72円を順次試す下落を想定する。4.73円以下は反騰注意とするが、4.76円を割り込んでの推移なら5日も安値試しを続けやすいとみる。
【当面の主な予定】
1月4日
20:30 週次 外貨準備高 12月29日時点 グロス (12月22日時点 975.6億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 12月29日時点 ネット (12月22日時点 400.9億ドル)
1月10日
16:00 11月 鉱工業生産 前月比 (10月 -0.4%)
16:00 11月 鉱工業生産 前年同月比 (10月 1.1%)
16:00 11月 失業率 (10月 8.5%)
トルコ中銀金融政策委員会予定
1月25日、2月22日、3月21日
注:ポイント要約は編集部
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