ドル円見通し 年明けは米長期債利回りの反発で上昇開始だが、143円台後半から失速(24/01/04)

1月4日早朝にFOMC議事要旨が公開され、参加者が総じて利下げ容認姿勢だったことからドル高が一巡して失速し、4日朝には143.00円を付けている。

ドル円見通し 年明けは米長期債利回りの反発で上昇開始だが、143円台後半から失速(24/01/04)

年明けは米長期債利回りの反発で上昇開始だが、143円台後半から失速

〇ドル円、1/3夜に143円を超え1/4未明に143.72まで高値を伸ばすも4日朝には143.00へ失速
〇1/4早朝のFOMC議事録公開後、ドル反騰がやや落ち着く
〇FOMC、ほぼ全参加者が今年末までの利下げが適切と予想
〇能登大地震で日銀は出口へ急げず、円の独歩高的な急落は発生しづらいか
〇米ISM製造業景況指数は14か月連続で50割れ、JOLTSも市場予想下回る
〇米10年債利回りは年末からの反発一服、ダウは年初の最高値更新から反落
〇142.70以上での推移中は一段高余地ありとし、143.72超えからは144円台前半への上昇を想定
〇142.70割れからは142円台序盤への下落を想定

【概況】

ドル円は米国の来春利下げ期待が高まる中でドル全面安が進行したために12月29日未明には140.24円を付けて11月13日高値151.90円以降の最安値としたが、米長期債利回りが年越しのポジション調整で反発するのを見て下げ渋りに入った。
1月1日発生の能登大地震による景気への影響懸念で円売り優勢となり、米長期債利回りが続伸したことで2日夜には高値で142.20円を付け、その後に141.50円まで反落したところも買われて142円を挟んだ揉み合いとなったが、ドル高継続により2日夜高値を超えたところから上昇が勢い付いて3日夜には143円を超えて4日未明には143.72円まで高値を伸ばした。

1月4日早朝にFOMC議事要旨が公開され、参加者が総じて利下げ容認姿勢だったことからドル高が一巡して失速し、4日朝には143.00円を付けている。
11月13日高値151.90円以降、戻り高値はほぼ一直線で上値抵抗線を作っていたが、1月3日夕刻からの上昇時にこの抵抗線を突破している。しかし、12月29日未明安値140.24円から1月4日未明高値143.72円までの上昇幅は3.48円となったものの、12月14日安値140.99円から日銀現状維持による円安で付けた19日夜高値144.95円までの上昇幅3.96円には届いておらず、まだ右肩下がりの展開範囲内にある。

【能登大地震で日銀は出口へ急げず】

1月1日夕刻に発生した能登大地震による被害が甚大となっている。大企業の工場も多々あり日本のGDPを下押しする負の影響もあるが、復興対策で政府も補正予算を組むなど財政出動すれば、日銀としてはマイナス金利解除等の金融緩和からの出口へ向けて動きづらい状況と思われる。
12月19日の日銀金融政策決定会合では金融緩和政策現状維持とされて出口へ向けた前傾姿勢がみられなかったことで円売りとなりドル円は144.95円まで戻したものの、2024年春闘での賃金上昇が確認されればマイナス金利解除もあり得るとの見方が残っていたことと全般のドル安により12月29日未明安値140.24円へ一段安した。しかし、大企業の賃上げは進むとしても中小では厳しく、大地震復興へ向けた状況下でマイナス金利解除=利上げを行うのは批判も大きくなるため、日銀もしばらくは出口へ進めないのではないかとの見方も強まるだろう。
米国が利下げへ向かう流れは変わらないとすれば、全般ドル安基調の中でドル円においてもドル安円高での推移へ進みやすいと思われるが、円の独歩高的な急落は発生しづらいのではないかと思われる。

【FOMC議事録公開後はドルの反騰がやや落ち着く】

FRB(米連邦準備制度理事会)は4日早朝に昨年12月12-13日に開催したFOMC(連邦公開市場委員会)議事要旨を公表した。参加者は政策金利がピーク近辺にあるとの見方で一致しており、一部に金利据え置き期間の長期化の可能性を指摘する声もあったものの、ほぼ全ての参加者が2024年末までの利下げが適切と予想していたことが分かった。
当該会合では3会合連続で政策金利が据え置かれ、参加者の見通しとしては2024年に3回の利下げが想定されて昨年9月時点の2回から増えたため、市場は早ければ3月会合での利下げ開始期待を強めた。ただ、年末にかけてのやや過剰な米長期債利回り低下とドル安に対する修正感もあり、3月利下げ開始期待確率は一時9割まで上昇していたところから7割程度まで低下している。

【ISM製造業景況指数は14か月連続で50割れ】

1月3日深夜に米サプライ管理協会(ISM)が発表した12月の米製造業景況指数は47.4となり11月の46.7から上昇して市場予想の47.1を上回ったが、景況拡大・縮小の分岐点とされる50を14か月連続で下回った。新規受注は11月の48.3から47.1へ低下、生産は48.5から50.3へ上昇し、雇用も45.8から48.1へ上昇したが、価格は49.9から45.2へ低下した。
11月の米雇用動態調査(JOLTS)求人件数は879.0万件となり10月の885.2万件から減少、市場予想の885.0万件を下回って2021年3月以来の低水準で採用数は2020年4月以来の低水準だった。
ISMとJOLTSに対する市場の反応は鈍かったものの、米国の利下げ開始期待に沿ったものだった。

【米10年債利回りは年末からの反発一服、ダウは年初の最高値更新から反落】

米国のインフレ指標鈍化とFOMCによる2024年3回利下げ想定により米長期債利回りは総じて大幅低下してきたが、年末からは低下し過ぎの反動で反発した。
長期金利指標の10年債利回りは10月23日の5.02%を起点として12月27日には3.78%まで大幅低下したが、28日から戻しに入り、1月2日は前日比0.04%上昇の3.93%とし、一時は4.02%をつけた。しかし3日は4.01%まで再上昇してから低下に転じて前日比0.01%低下の3.92%となった。4%超えには抵抗感がみられる。
政策金利に敏感な2年債利回りは10月19日の5.26%を起点として12月27日の4.23%まで大幅低下したが、その後はやや戻し気味の推移で1月2日は前日比0.07%上昇の4.33%とし、3日は0.01%上昇の4.34%で終了したが一時は4.38%まで戻した。

一方でNYダウは1月2日に前日比25.50ドル高と上昇して史上最高値を37790.08ドルへ伸ばしたが、3日は利食い優勢で284.85ドル安と反落した。ナスダック総合指数は年末からの米長期債利回り上昇を嫌って12月28日から続落となり、1月2日に245.41ポイント安、3日も173.73ポイント安となった。年初来高値更新が続いたことに対する利益確定売りでいったん修正安に入っているところという印象だ。
米長期債利回り上昇が頭打ちとなり米国株安がアジア株安へ波及するようだとドル円は下げやすくなる。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は12月29日未明安値で140.24円を付けて11月13日高値151.90円以降の最安値としたところを当面の底として反騰入りしたが、1月3日未明に143.72円を付けたところから反落して4日午前序盤には143円を割り込んできたため、4日未明高値で目先のピークを付けて下落期に入っている印象だ。
12月29日未明安値から底上げをする形で押し目形成とすることができるか試されるところと思われるが、4日の日中から6日未明にかけての間は安値試しが続きやすいとみる。ただし、1月4日未明高値超えからは新たな上昇期入りとして8日深夜から11日未明にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では1月2日夜に遅行スパンが好転して先行スパンも突破した。その後も両スパンそろっての好転を維持しているが、4日午前序盤への反落しているため、26本基準線割れからは下向きとし、遅行スパン悪化からは安値試し優先として先行スパンの上下限を試す下落を想定する。ただし、1月4日未明高値超えからは新たな上昇期入りとして遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は1月4日未明に80ポイントを超えてから50ポイント台へ低下している。65ポイント超えからは上昇再開とするが、50ポイント割れからは30ポイント台への低下を伴う下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、142.70円を下値支持線、143.72円を上値抵抗線とする。
(2)142.70円以上での推移中は一段高余地ありとし、143.72円超えからは144円台前半への上昇を想定する。144円台前半では売られやすいとみるが、143.50円以上での推移なら5日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)142.70円割れからは142円台序盤(142.25円から142.00円)への下落を想定する。142円台序盤は買い戻しも入りやすいとみるいが、142.70円以下での推移なら5日も安値試しを続けやすいとみる。

【当面の予定】

1/4(木)
10:45 (中) 12月 財新サービス業PMI (11月 51.5、予想 51.6)
17:55 (独) 12月 サービス業PMI・改定値 (速報 48.4、予想 48.4)
18:00 (欧) 12月 サービス業PMI・改定値 (速報 48.1、予想 48.1)
18:30 (英) 12月 サービス業PMI・改定値 (速報 52.7、予想 52.7)
22:00 (独) 12月 CPI(消費者物価指数)・速報値 前月比 (11月 -0.4%、予想 0.2%)
22:00 (独) 12月 CPI(消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (11月 3.2%、予想 3.7%)
22:15 (米) 12月 ADP非農業部門民間雇用者数 前月比 (11月 10.3万人、予想 11.5万人)
22:30 (米) 週間 新規失業保険申請件数 (前週 21.8万件、予想 21.5万件)
22:30 (米) 週間 失業保険継続受給者数 (前週 187.5万人)
23:45 (米) 12月 サービス業PMI・改定値 (11月 51.3、予想 51.3)

1/5(金)
08:50 (日) 12月 マネタリーベース 前年同月比 (11月 8.9%)
14:00 (日) 12月 消費者態度指数・一般世帯 (11月 36.1、予想 36.5)
16:00 (独) 11月 小売売上高 前月比 (10月 1.1%、予想 -0.5%)
16:00 (独) 11月 小売売上高 前年同月比 (10月 -0.1%、予想 -0.5%)
19:00 (欧) 12月 HICP(消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (11月 2.4%、予想 3.0%)
19:00 (欧) 12月 コアHICP・速報値 前年同月比 (11月 3.6%、予想 3.4%)
19:00 (欧) 11月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (10月 0.2%、予想 -0.1%)
19:00 (欧) 11月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (10月 -9.4%、予想 -8.6%)

22:30 (米) 12月 非農業部門就業者数 前月比 (11月 19.9万人、予想 17.0万人)
22:30 (米) 12月 失業率 (11月 3.7%、予想 3.8%)
22:30 (米) 12月 平均時給 前月比 (11月 0.4%、予想 0.3%)
22:30 (米) 12月 平均時給 前年同月比 (11月 4.0%、予想 3.9%)
24:00 (米) 11月 製造業新規受注 前月比 (10月 -3.6%、予想 2.2%)
24:00 (米) 12月 ISM非製造業景況指数 (11月 52.7、予想 52.5)


注:ポイント要約は編集部

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