短期的には横方向のもみあい
〇先週のユーロ、ECB理事会は予想通り現状維持。インフレに対する警戒感示すタカ派な内容
〇利下げの議論があったFRBとの温度差からユーロドルは一段高、1.10の大台乗せを見る
〇米・欧の景況感差からユーロ売りの予想が多かったが、インフレ警戒感の差からユーロが予想より上昇
〇ドル高局面は反転し始めている可能性高く、ユーロ円でも円買い戻しの動きが強まると見られる
〇その動きはユーロドルの上値を抑える要因となって行くとみられる
〇今週は1.0800レベルをサポートに、1.1015レベルをレジスタンスとする流れを見る
今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロドルはFOMCで示されたドットプロットで、2024年末の金利見通しが前回9月から0.5%下方修正されたことで、現行水準から3回利下げという見通しを好感しての株高、そして為替市場ではドル円を中心にドル売りの動きとなりました。ユーロドルも大きく上昇し週初の1.07台半ばの水準から1.08台後半へ上昇してのECB理事会待ちとなりました。
ECB理事会では予想通り現状維持ではあったものの緩和の議論は一切せず、引き続きインフレに対する警戒感を示すタカ派な内容となり、少なくとも利下げについて議論したFRBとの温度差からユーロドルは一段高、1.10の大台乗せを見たものの大台超えでは利食いも出て、週末の引けにかけては100pipsほどの調整が入りました。
ECB理事会までは米国と欧州との景況感の差からイベント経過後はユーロが売られるのではないかと見ていた参加者も多かっただけに、逆にインフレへの警戒感の温度差からユーロが予想以上に上がったこととなります。
ただ、今後の展開はまだわかりませんし、FRBもECBもそれほど違わない時期に緩和に転じるであろうことを考えると、一方的にユーロ高に進むとも思えません。
また2024年はFRBとECBが緩和に転じるいっぽうで日銀は出口戦略を探ることとなるのはほぼ確実で、2021年初からほぼ3年続いてきたドル高局面は、反転し始めている可能性が高く、そうなるとドル円だけでなくユーロ円でも円買い戻しの動きが強まると見られ、その動きはユーロドルの上値を抑える要因となって行きそうです。
明日の日銀会合では現状維持でサプライズも無いという見方となっていますので、ここでユーロ円の買いが入るようであればカウンターで戻り売りと考えている参加者は多いと思います。今週は金融政策イベントが通過後はそれほど大きな欧州材料は無く、また週末はクリスマスとなることで、金曜は欧州からの参加者はかなり減ってくるとみられます。流動性が低下することも考え、思いがけない上下の振れには注意が必要ですが、短期的には横方向のもみあいを考えていてよさそうです。
テクニカルには日足チャートをご覧ください。
10月安値と11月高値の半値押し1.0732まで到達した後の動きが先週の流れですが11月高値をギリギリでトライできずにやや押しが入っている段階です。上値は引き続き11月高値1.1016レベルがレジスタンスですが、下値は11月安値と12月安値を結んだサポートライン(ピンク)がサポートとなってくるでしょう。
今週は1.0800レベルをサポートに、1.1015レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。
今週のコラム
先週はユーロ円の週足チャートを見ましたが、上昇トレンド自体に変化は無いものの、年内に節目の大台150円を見る可能性が急速に高まってきたことを指摘しました。今週はユーロ円の日足チャートを見ておきます。
先週の下げでも150円の大台にはまだ遠い状態でしたが、テクニカルに次のサポートは7月安値の151.40レベルとなります。また年初来安値と高値との半値押しが150.83レベルとなっていることから、それぞれに近い151円という水準はターゲットとなりやすい水準です。
今後ユーロドルの上値が重くなり、かつドル円が改めて円高に動く場合に150円の大台以上に151円が意識される水準となってきそうです。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
12月18日(月)
18:00 ドイツ12月企業景況感
21:00 ベルギー中銀総裁講演
22:30 シュナーベルECB理事講演 ☆
24:00 レーンECB理事講演 ☆
12月19日(火)
12:00頃 日銀会合結果発表 ☆
19:00 ユーロ圏11月CPI
12月20日(水)
16:00 ドイツ11月PPI ☆
16:00 ドイツ1月消費者信頼感
16:00 英国11月CPI ☆
19:00 ユーロ圏10月建設支出
24:00 ユーロ圏12月消費者信頼感速報値 ☆
12月21日(木)
16:45 フランス12月企業景況感
12月22日(金)
16:00 英国7〜9月期GDP改定値 ☆
16:00 英国11月小売売上高
16:45 フランス11月PPI ☆
16:45 フランス12月消費者信頼感
22:30 米国11月個人所得・個人消費支出 ☆
**:** 英国市場短縮取引
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時ーNY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
12月11日(月)
週明けのドル円は早朝から底堅い展開となっていましたが、欧州市場序盤に日銀がイールドカーブコントロール、マイナス金利の解除を今月の会合ではほとんど考えていないとの観測記事が出たことで146円台半ばまで円安が進みました。その後も146円台前半で底堅いまま引けています。
ユーロドルは動意薄でCPIを前に一日のレンジはわずか37pips、水準もほとんど朝から変わらない月曜となりました。
12月12日(火)
ドル円は米国CPIの発表を前に金曜から続いていたドル買いの調整が入りました。東京朝方からじり安を辿っていたところ、CPIが予想通りの結果となったことで一時144.72レベルの安値をつけました。しかし、米金利が発表後に上昇に転じたため、ドル円も買い戻され145.85レベルまで反発、引けにかけては145円台半ばに押して引けました。
ユーロドルは東京市場では動かず、欧州市場序盤からドル売りの動きに引っ張られてユーロが上昇、CPI直後には1.0828レベルの高値をつけました。
その後は米金利の動きとともに1.0767レベルまで押し、引けにかけては1.08近くに戻しています。
12月13日(水)
ドル円は東京市場では円安に動いたものの高値145.99レベルまで、その後の海外市場ではFOMCを控えて行って来いの145円水準で結果待ちとなりました。現状維持はコンセンサス通り、2024年末の金利見通し0.5%下方修正も予想通りだとは思ったものの、2024年3回利下げを好感しNYダウが史上最高値更新、米金利低下からドル円も142円台半ばまで大きく円高が進みました。
ユーロドルもFOMCまではほぼ横ばいの動きとなっていましたが、金利見通し下方修正を受け1.0897レベルまで上伸し高値圏での引けとなっています。
12月14日(木)
ドル円はFOMC後のドル売りの流れを続け東京昼過ぎには一時140.95レベルの安値をつけました。その後は140円台では利食いの買いも出て142円超えまで反発。上下に振れやすい展開ではあったものの142円台では戻り売りも出て、141円台半ばから後半をもみあいの中心とした動きとなりました。
ユーロドルはECB理事会を前にしてはいたものの、東京市場では全般的なドル売りの動きからユーロ買いの動きとなっていました。ECB理事会では予想通り現状維持となったものの声明はタカ派的でインフレ懸念にも言及、ラガルド総裁も会見で利下げについては全く議論せずと、FRBの方がハト派だったとの解釈からユーロ買いが続き1.10の大台乗せ後に高値圏での引けとなりました。
12月15日(金)
週末のドル円は1日を振り返ると安値圏で底固めの動きとなりました。これまで大きく動いてきたこともあり、複数のFRB関係者がややタカ派的な発言をしたことでドル買いに動いた程度でした。それでも終日のレンジは1円強はありましたので、まだまだ上下に振れやすい流れは終わっていないと見ていた方が良いでしょう。
ユーロドルは欧州時間は弱い経済指標、NY時間はFRB関係者によるタカは発言からユーロ売り・ドル買いの流れが目立ちました。東京時間は1.10の大台に乗せていましたが、NY後場には1.0888レベルまで下げ安値圏での引けとなりました。
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